Sightsong

自縄自縛日記

若林忠宏『民族楽器大博物館』にイランの楽器があった

2008-11-28 23:09:02 | 中東・アフリカ

先日イラン大使館で目にしたイランの珍しい楽器(>> 記事)。帰宅してから、若林忠宏『民族楽器を楽しもう』(ヤマハミュージックメディア、2002年)を開いたが載っていなかった。翌日、同じ著者の『民族楽器大博物館』(京都書院、1999年)もあったなと思い出し探してみると、ありましたありました。

太鼓の「Daf」は、中央アジアに伝わって名前が微妙に変化した「Dap」があった。大型のものは「Doira」とも言われるようで、なぜかシルクロードの東端ではアラビア語で呼ばれるそうである。

弦楽器「Tar」は、立派なものが紹介されている。胴は桑の木をくりぬき、「入手困難な牛の胎児の皮や、子牛の心臓の皮を守るため、駒の下とバチの当る部分を薄皮で保護してある」ということだ(凄いね)。

弦楽器「Santur」は、ピアノのルーツだとされている。

弦楽器「Rabab」については、数奇な運命がまとめられている。このタイプはアフガニスタンで弓奏から撥弦に変わり、東進し、三味線元祖系と交わり沖縄にも伝わった、とある。

ピアノや三線のルーツを聴いていたのだと考えると楽しい。

こうしてみると楽器とは何と多彩で摩訶不思議なものかとおもう。

若林忠宏『民族楽器を楽しもう』は、楽器の数を抑えて、ひとつひとつの解説やエピソードを色々と紹介している。いつかモンゴルの馬頭琴を演奏したいという妄想に囚われて買ったものだが、結構値がはるし(当たり前だが)、サックスも満足に吹きこなせないで何が馬頭琴だ、と、ツマに真っ当な指摘をされて妄想のまま放置している。でもいつか弾きたいと夢想している。


イラン大使館でアフランド・ミュージカル・グループを聴いた

2008-11-28 00:46:32 | 中東・アフリカ

イラン出身のAさんに誘われて、イラン大使館で行われた「アフランド・ミュージカル・グループ(Afrand Musical Group)」(>> リンク)を聴いてきた(2008/11/18)。グループは普段は12人で活動しているそうだが、今回はそのうち太鼓・歌が1人と弦楽器が3人の4人。

曲調は独特なコードなのか、哀愁があって、演奏技術も全員すばらしかった。Aさんによると、革命直後のイランでは音楽はご法度であり、活動が可能になってきたのはハタミ以降だそうである。ブリュッセルで聴いたクルド歌手のシヴァン・ペルウェルの曲は、1/4音階などを使っていた(>> 過去の記事)。このグループのコードが実際にどのようなものかわからないが、そういった分割をしている可能性はあるだろう。リズムは乗りやすいものだった。

楽器ひとつひとつは初めて見るものばかりだ。帰宅してから手持ちの本をめくってみたが、見つけることができなかった。

太鼓と歌のReza Mahini(>> リンク)が使う太鼓「Daf」はとても大きく、裏側には縁から鉄の輪がじゃらじゃらと吊るしてある。叩くとそれらが金属音を出す仕組だ。左手で持ちつつ、その指先で叩くと、端の方なので小気味良い音が出る。右手で真ん中を叩くと、当然大きな音が響く。彼のソロは迫力があった。

Syavash Pourfazli(>> リンク)が使う弦楽器「Tar」は6弦で、胴が2つの膨らみに分かれていてユニークな形だ。

Ahmad Shoariyan(>> リンク)が使う弦楽器「Rabab」は面白い。4弦なのだが、横に7弦が張ってあって、和音を奏でるときに使うということだった。主な4弦はそれぞれ材質が違って、尋ねたところ、日本の琴の弦を試しに使っている、という遊び心。

もっともユニークで聴客たちがあとでじろじろ見ていたのが、Pejman Hoseinipour(>> リンク)が使う弦楽器「Santour」だった。机の上におき、糸楊枝を大きくしたようなピックで叩く。台形の箱の上に9個の駒が左右にそれぞれ配置されていて、箱の反対側の端から張った弦を持ち上げる。それぞれの駒には4本の同じ音を出す弦が張られていて、左の駒で持ち上げているもの、右の駒で持ち上げているもの、というように互い違いになっている。つまり、4×9×2=72本の弦がある。そして叩く場所は右の山、左の山、それから駒が持ち上げた反対側の部分(短いので高音)。これで3オクターブが出る。ソロになると繊細というのか、幽玄というのか、耳も震えた。

これで無料なのだから、良い文化事業だ。寒いのでお好み焼きを食べて帰った。でも風邪気味だ。