2010年8月、沖縄県恩納村の屋嘉田潟原(やかたたたばる)。日の出前の月や夕焼けを観た後、さて干潟はどこだろうと干潮時間に眺めると、目の前に広がっていた。護岸工事から免れた貴重な場所であり、赤土汚染に悩まされたこともあったようだ。万座のビーチで遊ぶなら、ついでにこちらにも足を運ぶべきだ。
屋嘉田潟原、朝の月 Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
屋嘉田潟原、夕焼け Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
海沿いの国道58号を渡ると、すぐに干潟に降りることができる。向こうのヨー島まで歩いていくことができそうにさえ見える。壮観だ。
屋嘉田潟原 Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
ヨー島まで歩いていけそうだ Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
サンゴ礁のかけらが多い砂干潟、下をじろじろ見ながらずんずん歩く。タマシキゴカイの糞だろう、東京湾の干潟と同じ「モンブラン」がそこかしこにある。地中で砂を食べたゴカイが、有機物を摂ったあと、綺麗な砂を地上にひり出したオブジェだ。海草もある。
モンブラン Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
海草 Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
カニは、やはりたくさんいる。岸の近くでは、シオマネキが片手で潮を招いている。どこかのカップルが、歩道からシオマネキの群舞を見つめてスゲースゲーと叫んでいた。甲羅がゴーヤーのようにぼこぼこしたオウギガニの仲間は、なかなか穴から出てこない。オサガニの仲間だろうか、眼が潜望鏡のように上につきだした奴もいる。
甲羅の上に砂を薄くかぶせて、隠れたつもりになっている大きなカニがいた。石の先でちょいとつっついてみると、砂を払いのけ、物凄い迫力で威嚇してきた。指を挟まれたら本当に痛そうだ。くわばらくわばら。あとで調べてみると、タイワンガザミだった。
八重山に「ヤクジャマ節」という唄があるという。その中では、シオマネキは強いガザミを羨んでいる。「やくぢやま」と「しらかち」がシオマネキであるようだ。
「うさいの泊のやくぢやま
作田節ば詠めうる
おれが隣りのしらかちや
おれに合しゆて
三味線ばぴき詠めうる
生れる甲斐産でる甲斐
がさみのなかなが子ば生し見やむな
(略)」
(ウサイの泊のヤクヂヤマが作田節を謡っている。そのお隣のシラカチはそれに合せて三味線を弾いている。そして彼らはこう歎じている。「折角生れる位なら、ガサミのような強者になって生れればよかったのに。けれでも生れ落ちた以上は仕方がない。せめてガサミのような強い子でも産んでみたい。)
伊波普猷『小さき蟹の歌』(『古琉球』所収、1916年)
シオマネキ Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
オウギガイの仲間はなかなか出てこない(部分) Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
私を威嚇するタイワンガザミ Pentax LX、FA77mmF1.8、Velvia100、DP
●沖縄の干潟・湿地・岩礁
○泡瀬干潟
○泡瀬干潟の埋立に関する報道
○泡瀬干潟の埋め立てを止めさせるための署名
○泡瀬干潟における犯罪的な蛮行は続く 小屋敷琢己『<干潟の思想>という可能性』を読む
○またここでも公然の暴力が・・・泡瀬干潟が土で埋められる
○救え沖縄・泡瀬干潟とサンゴ礁の海 小橋川共男写真展
○漫湖干潟
○辺野古
○糸満のイノー、大度海岸
○沖縄県東村・慶佐次のヒルギ
●東京湾の干潟(三番瀬、盤洲干潟・小櫃川河口、新浜湖干潟、江戸川放水路)
○市川塩浜の三番瀬と『潮だまりの生物』
○日韓NGO湿地フォーラム
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○『青べか物語』は面白い
○Elmar 90mmF4.0で撮る妙典公園
○江戸川放水路の泥干潟
○井出孫六・小中陽太郎・高史明・田原総一郎『変貌する風土』 かつての木更津を描いた貴重なルポ
○盤洲干潟 (千葉県木更津市)
○盤洲干潟の写真集 平野耕作『キサラヅ―共生限界:1998-2002』
○新浜湖干潟(行徳・野鳥保護区)
○谷津干潟
●その他
○加藤真『日本の渚』(良書!)
○『海辺の環境学』 海辺の人為(人の手を加えることについて)
○下村兼史『或日の干潟』(有明海や三番瀬の映像)
○『有明海の干潟漁』(有明海の驚異的な漁法)
○理系的にすっきり 本川達雄『サンゴとサンゴ礁のはなし』(良書!)