ジョン・ゾーン『Interzone』(Tzadik、2010年)を聴く。ジョン・ゾーンの作品を買うのは久しぶりだが、ウィリアム・バロウズへのトリビュート作だと知って堪らなくなったのだ。メンバーは豪華で、ジョン・ゾーン(サックス)、マーク・リボー(ギター)、シロ・バチスタ(パーカッション)、イクエ・モリ(エレクトロニクス)、ジョン・メデスキ(キーボード)などが顔を揃えている。
なるほど、バロウズのテキストにおけるカットアップ的な音のコラージュである。電子音のノイズ、アナログノイズ、ゾーンの相変わらず巧いサックスソロ、メデスキの美しいピアノとキーボードのソロ、モロッコの雑踏音、リボーのかっちょいいギターソロ、そんなものが次から次へと脈絡なく移り変わっていく。
しかしである。聴く私には、ああ、「らしい」なという印象しか浮かんでこない。ハチャメチャさもダイバーシティも既存のジョン・ゾーン再生産、突き破る何かが見いだせないのだ。例えば『Spillane』でも、『Naked City』でも、『News for Lulu』でも、『Duras : Duchamp』でも、あるいは『Masada』のシリーズでもよい、これまで人を驚かせ喜ばせてくれたジョン・ゾーンと比較してみるならば、答えは明らかだ。もはやジョン・ゾーンの時代ではないのである。
●参照
○ミッキー・スピレイン、ジョン・ゾーン
○『Treasures IV / Avant Garde 1947-1986』(ゾーンの音楽と実験映像)
○コンラッド・ルークス『チャパクァ』(バロウズ出演)
○シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 オーネット・コールマンの貴重な映像(バロウズ出演)