Sightsong

自縄自縛日記

西銘圭蔵『沖縄をめぐる百年の思想』

2011-03-12 12:34:22 | 沖縄

西銘圭蔵『沖縄をめぐる百年の思想』(ボーダーインク、2010年)を読む。小林よしのり批判を中心とした書であり、著者の修士論文が基になっている。

私などは小林よしのりの破廉恥な漫画利用(決して漫画的ではなく、願望を登場人物のあられもない表情に投影させるというどうしようもない手法)が大嫌いで、『ゴーマニズム宣言』も何も読む気にならないのだが、本書を読むと、低次元なイデオロギー漫画であっても批判的に読む強さがあってもいいのかななどと思ってしまう。

著者の小林よしのり批判は、次のようなポイントにある。

○沖縄県民が米軍基地撤廃を望むのは、「愛国心」ゆえの国家主権侵害に反対してではなく、戦争体験をもとに人権侵害に反対してのことである。
○沖縄側から出た「沖縄イニシアティブ」を批判する小林の主張は「鋭い」。
○ネーションや国体のために国民が存在するのではない。
○日本の原型を沖縄に見出すのは歴史的には虚妄であり、「沖縄人が喜んて靖国に祀られる」側面とあわせて、新たな国家動員に役立つと嗅ぎとっているに違いない。
○日本文化の原型を沖縄に見出した柳田國男は、皇道文化のひとつとしての日本文学を外部に広めようとした「日本文学報国会」の理事であった。この、既に否定さるべき妄想が、小林の発信する漫画とも共通している。小林はそのために沖縄人をくすぐっている。
○伊勢であろうと靖国であろうと、ヤマトゥというネーションのために確立されたものだ。
○小林が希う共同体やその延長としての国家は、ヤマトゥにおいては崩壊している。そのために、『ちゅらさん』はヤマトゥで共感をもって迎えられた。しかし、『ちゅらさん』には、共同体による個人への抑圧は描かれていない。

●参照
村井紀『南島イデオロギーの発生』
伊波普猷の『琉球人種論』、イザイホー
伊波普猷『古琉球』
屋嘉比収『<近代沖縄>の知識人 島袋全発の軌跡』
与那原恵『まれびとたちの沖縄』
岡本恵徳『「ヤポネシア論」の輪郭 島尾敏雄のまなざし』
島尾敏雄対談集『ヤポネシア考』 憧憬と妄想
島尾ミホ・石牟礼道子『ヤポネシアの海辺から』
島尾ミホさんの「アンマー」
齋藤徹「オンバク・ヒタム」(黒潮)
由井晶子「今につながる沖縄民衆の歴史意識―名護市長選挙が示した沖縄の民意」(琉球支配に関する研究の経緯)
上里隆史『琉日戦争一六〇九 島津氏の琉球侵攻』


東北・関東大地震

2011-03-12 08:08:10 | 環境・自然

東京丸の内のオフィス。はじめて体験する規模の揺れ、はじめて訓練以外でヘルメットをかぶり机の下にもぐる。指示によりオフィスに缶詰、夜になって近くのコンビニに出てみたが、ドリンク以外はほぼ売り切れ。地下鉄が動き出し、深夜12時をまわってからオフィスを出た。東京駅はテレビの前に集まる人々、座り込む人々。帰宅してみると自分の部屋は本が散乱し、ドアがつっかえて開かなかった。