Sightsong

自縄自縛日記

柴田三千雄『フランス史10講』

2014-10-14 07:51:39 | ヨーロッパ

柴田三千雄『フランス史10講』(岩波新書、2006年)を読む。

通史というものには癖があって、時代ごとの史実をしっかり頭に刻んでいくように読まなければ、読後に何も得られないことになってしまう。一方で、語り手による大きな歴史の流れをつかむことができる。

本書については、後者のおもしろさがいろいろあって、そのひとつがナショナリズムの生成と国民統合のプロセス。数えきれないほどの革命や統治システムの変更を経て、フランスは今の姿となった。歴史の流れは一方向ではなかったし、過去の見直しによるナショナリズムの強化もあった(ジャンヌ・ダルクは百年戦争に登場した15世紀の人だが、愛国・共和主義的な娘として右翼ナショナリズムの文脈で注目されたのは、19世紀半ばからであるという)。インドシナからの撤退(1954年)や、アルジェリア戦争(1954-62年)によるナショナリズムの変貌もあった。欧州諸国のナショナリズムとEU統合とは切り離せない関係を持つが、ドゴールは、フランスが優位に立つヨーロッパを考えていた。簡単ではない。

しかし、国家という統治システムへの国民参加の歴史は長い。ヨーロッパへの視線はいまも重要である。