崎山多美『クジャ幻視行』(花書院、2006-08年)を読む。
7つの短編。最初に崎山多美の小説に接したときの驚愕はすでにわたしにはない。
しかしそれでも、なのか、それだからこそ、なのか、じわじわと闇が押し寄せてくる。別に「沖縄の古層を掘る」ようなものではない。池澤夏樹の安易な小説とはわけがちがう。もちろん古い古い記憶も、「アメリカー」や基地も、街も体臭も、コトバもウタも、すべてがぐちゃぐちゃに混じり合って香りと腐臭の両方を放っている。やはり見事である。
このような唄の表現が誰にできるだろう。
「足首をからめとられたまま聴いていると、ウタ声は、高音の部分で、強風が高木の枝をなぶるときのような鋭い響きを放った。」
●崎山多美
崎山多美『うんじゅが、ナサキ』
崎山多美講演会「シマコトバでカチャーシー」
崎山多美『ムイアニ由来記』、『コトバの生まれる場所』
崎山多美『月や、あらん』
『現代沖縄文学作品選』
『越境広場』創刊0号
『越境広場』1号