Sightsong

自縄自縛日記

森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019 その1@新宿ピットイン

2019-01-02 23:11:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインにて、森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019の初日(2019/1/2)。

Takeo Moriyama 森山威男 (ds)
Fumio Itabashi 板橋文夫 (p)
Shinpei Ruike 類家心平 (tp)
Tetsuro Kawashima 川嶋哲郎 (ts)
Watanabe Fire 渡辺ファイアー (as)
Hiroaki Mizutani 水谷浩章 (b)
Hitomi Aikawa 相川瞳 (per)

2年前の新宿ピットインでの3デイズは、森山さんが体調を悪くしていて、いまひとつ納得のいかないものだった。さて今回どうかという懸念もあったし、公演のチラシには「しかし、時や生活の変化とともに音楽的嗜好が変わってくるのは確かだ。そういう自然な変化に合わせて自分のプレーを変えたらどうなるか?」と書いていて、身体に負担のかかるパワープレイを避けるのではないかという予感もあった。

冒頭の「Exchange」で、ひとまずはその不安は払拭された。スタートダッシュがすべてだと言わんばかりに全員ぶっとばしている。いきなり板橋文夫のピアノもリミッターを外している。また、相川瞳のパーカッションとの共存という形も新鮮だ。「渡良瀬」での、トリオになったときの演奏が異様に分厚く、水谷さんの強力なグルーヴがあの怪獣ふたりに伍している。

ファーストセットは、類家心平のレンジが広く濡れたトランペット、ときに他者と別文脈で爆走する森山さん、サウンドに色をのせてゆく相川さんのマリンバなどがとても印象的だった。

セカンドセットは「Alligator Dance」から。サックスふたりのバトルを見ていると、背後に、海から飛びあがる鯨のようなものが・・・。森山威男のドラミングは腰からの躍動もイノチ、なるほど復活している。待ってました「Sunrise」では、ここに来て、他のメンバーに煽られての川嶋さんのソロが乗った。そして作曲者としてのプライドもあろうか、板橋文夫が半立ちで暴れた。「Hush a Bye」での血が滴るような類家さんのトランペット、複雑ではやい水谷さんのベースもさすがである(なお、サックス二人羽織みたいなことをやって笑った)。

最後はトリオで「Good Bye」。やはりピアノのイントロからグッと来てしまう。ベースが支えるようなプレイ。森山さんはここでブラシからスティックに持ち替えて森山スペシャルを披露するはずだったが、それはいまひとつ抑制気味だった。

さて明日はどうなるか。

●森山威男
森山威男3Days@新宿ピットイン(2017年)
森山威男@新宿ピットイン(2016年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
森山・板橋クインテット『STRAIGHTEDGE』(2014年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
『森山威男ミーツ市川修』(2000年)
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』(1980、90年)
森山威男『East Plants』(1983年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
宮沢昭『木曽』(1970年)
見上げてごらん夜の星を
渚ようこ『あなたにあげる歌謡曲』、若松孝二『天使の恍惚』


クリス・ピッツィオコス+スサナ・サントス・シルヴァ+トルビョルン・ゼッターバーグ『Child of Illusion』

2019-01-02 13:33:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

クリス・ピッツィオコス+スサナ・サントス・シルヴァ+トルビョルン・ゼッターバーグ『Child of Illusion』(clean feed、2017年)を聴く。

Chris Pitsiokos (as)
Susana Santos Silva (tp)
Torbjörn Zetterberg (ds)

スサナ・サントス・シルヴァはLAMAのトランぺッター、トルビョルン・ゼッターバーグはヨナス・カルハマーと共演を積み重ねてきたベーシスト。クリスが30前、ほかのふたりは40前後と若い。

各人の背景は置いておいても、確かに、三者の発する音は別々の時間の流れをもっている。構造的にコントラバスを重力的な下部に、アルトとトランペットをその上で踊るように幻視してしまうのだが、その三者の間には常に意思や因果の流れがある。

ゼッターバーグはふたりの様子を見ながら弦で管を跳躍させ、サウンド全体を雲で包んでいる。ピッツィオコスは最近のほかの活動とは違って、アトムと化してすべてに入りこむのではなく、生身のアルト吹きとして呼応しているようである。シルヴァのトランペットも柔軟。そういった意味では、即興でありながら対極の室内楽的のようにも思える。

●クリス・ピッツィオコス
フィリップ・ホワイト+クリス・ピッツィオコス『Collapse』(-2018年)
CPユニット『Silver Bullet in the Autumn of Your Years』(2017年)
JazzTokyoのクリス・ピッツィオコス特集その2(2017年)
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
クリス・ピッツィオコス+ヒカシュー+沖至@JAZZ ARTせんがわ(JazzTokyo)(2017年)
CPユニット『Before the Heat Death』(2016年)
クリス・ピッツィオコス『One Eye with a Microscope Attached』(2016年)
ニューヨーク、冬の終わりのライヴ日記(2015年)
クリス・ピッツィオコス@Shapeshifter Lab、Don Pedro(2015年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
ドレ・ホチェヴァー『Collective Effervescence』(2014年)
ウィーゼル・ウォルター+クリス・ピッツィオコス『Drawn and Quartered』(2014年)
クリス・ピッツィオコス+フィリップ・ホワイト『Paroxysm』(2014年)
クリス・ピッツィオコス『Maximalism』(2013年) 

●スサナ・サントス・シルヴァ
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
アダム・レーン『Full Throttle Orchestra』(2012年)

●トルビョルン・ゼッターバーグ
ヨナス・カルハマー+エスペン・アールベルグ+トルビョルン・ゼッターバーグ『Basement Sessions Vol.1』(-2012年)


山内桂『live at Futuro cafe』

2019-01-02 12:09:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

山内桂『live at Futuro cafe』(jigen、2017年)を聴く。

Katsura Yamauchi 山内桂 (sax)
Syuichi Chino 千野秀一 (key)
Takashi Miyamoto 宮本隆 (b)
Fumihiko Kimura 木村文彦 (perc)

サックスが、少し新鮮なほどに衒いのない音に聴こえる。これまで山内氏のサックスに感じ取っていた、なにかのマージナルな音とは異なるような印象がある。

あらためて比べてみるつもりで、氏のデビュー盤『Salmo Sax』(2003年)のサックスソロもまた聴いたのだが、既にこの段階でスタイルも技術も、ひょっとすると即興演奏家としての姿勢も完成されているように思える。もっとも、ちょっと聴き齧っただけで進化や発展を云々するのはおこがましいことではある。しかしそれにしても、『live at Futuro cafe』は、『Salmo Sax』におけるショーケース的な要素がなく、それが今回の印象深さなのかもしれない。

最初はソロ、やがて他のメンバーの音と融合してゆくのだが、この融合における自然体もまた奇妙に感動的だ。ベースとパーカッションとが間欠的に励起するサウンドを作り出し、そこに千野秀一のキーボードが彗星のようにやってきては介入する。 

録音はこれと同じく、澤居大三郎氏による。息遣いが捉えられておりみごと。 

●山内桂
千野秀一+山内桂@Ftarri(2018年)
山内桂+中村としまる『浴湯人』(2012年)
山内桂+マーティン・ヴォウンスン『Spanien』(2010年)
山内桂『波照間』、『祝子』(2006、08年)
山内桂+ミシェル・ドネダ『白雨』(2004年)


アーチー・シェップ『Attica Blues Orchestra Live / I Hear the Sound』

2019-01-02 01:01:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

アーチー・シェップ『Attica Blues Orchestra Live / I Hear the Sound』(ArchieBall、2013年)。

Archie Shepp (ts, ss, vo)
Amina Claudine Myers (p, vo)
Tom McClung (p)
Famoudou Don Moye (ds, congas)
Reggie Washington (b)
Darryl Hall (b)
Pierre Durand (g)
Stéphane Belmondo (tp)
Izidor Leitinger (tp)
Christophe Leloil (tp)
Olivier Miconi (tp)
Ambrose Akinmusire (tp) (track 5)
Sébastien Llado (tb)
Simon Sieger (tb)
Romain Morello (tb)
Michaël Ballue (tb)
Raphaël Imbert (as)
Olivier Chaussade (as)
François Théberge (ts)
Virgile Lefebvre (ts)
Jean-Philippe Scali (bs)
Manon Tenoudji (vln)
Steve Duong (vln)
Antoine Carlier (viola)
Louise Rosbach (cello)
Marion Rampal (vo)
Cécile McLorin Salvant (vo)

実は発売当時に入手して聴いてはいたのだが、どうも印象が希薄で、そのまま塩漬けにしていた。気が付くと2枚持っていた(笑)。

あらためて聴いてみると悪くない。アミナ・クローディン・マイヤーズのピアノ、ドン・モイエのドラムス、何よりアーチー・シェップの濁りが届くわけである(何でもそうか)。それに「The Cry of My People」におけるアンブローズ・アキンムシーレのソロはやはり輝いているし、「Quiet Dawn」でのセシル・マクロリン・サルヴァントの声も良い(この人は録音だと迫力が十分に伝わらないような気がする)。

それはまあ、差別や社会問題への怒りを含め再生産の音楽であるから、オリジナルの『Attica Blues』(1972年)におけるリアルタイムの迫真力とは異なる。また、どうしたって、シェップ御大へのリスペクトが音楽にも反映されているから、サウンドは違うものにならざるを得ない。それでも、『Attica Blues Big Band』(1979年)と比べても聴き劣りはしない。

と言いつつオリジナルの『Attica Blues』を聴くと、特別に魅せられてしまうのだった。

●アーチー・シェップ
アーチー・シェップ『Tribute to John Coltrane』(2017年)
ヨアヒム・キューン『Voodoo Sense』(2012年)
アーチー・シェップ+ヨアヒム・キューン『WO! MAN』(2011年)
アーチー・シェップ『Tomorrow Will Be Another Day』(2000年)
アーチー・シェップ+ジーン・リー『African Moods』(1984年)
アーチー・シェップの映像『I am Jazz ... It's My Life』(1984年)
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
アーチー・シェップ『Mariamar』(1975年)
アリス・コルトレーン『Carnegie Hall '71』(1971年)
アーチー・シェップ『The Way Ahead』(1968年)
アーチー・シェップ『The Way Ahead』 その2(1968年)
サニー・マレイのレコード(1966、69、77年)
アーチー・シェップ『Mama Too Tight』(1966年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、95年)
『Jazz in Denmark』 1960年代のバド・パウエル、NYC5、ダラー・ブランド(1962、63、65年)
セシル・テイラー初期作品群(1950年代後半~60年代初頭)