Sightsong

自縄自縛日記

梯久美子『原民喜 死と愛と孤独の肖像』

2019-01-19 10:17:23 | 思想・文学

梯久美子『原民喜 死と愛と孤独の肖像』(岩波新書、2018年)を読む。

広島で被爆したあとの詩集『夏の花』(1949年)における原民喜の詩を評価して、徐京植は、「壊れている」とみた。それこそが壊れた現実を映し出すものとして。

「テンプクシタ電車ノワキノ
馬ノ胴ナンカノ フクラミカタハ
ブスブストケムル 電線ノニオイ」

この評伝を読んで痛切なほどに伝わってくるのは、原民喜という詩人がまた「壊れている」人でもあったということだ。愛とか絶望とか寂しさとか、そのようなものを、詩作というモードチェンジ時だけでなく、生まれてから自死を選ぶまで体現した。

戦時において原が書いた詩もまた、モードチェンジにより何かを殊更に強調するものではなく、静かな日常における自分の感性のみを信じた表現であった。著者はそれを、「非日常の極みである戦争に対する、原の静かな抵抗であった」とする。

●参照
徐京植のフクシマ
梯久美子『狂うひと―「死の棘」の妻・島尾ミホ』


ロイ・ハーグローヴ+シダー・ウォルトン w/ ロバータ・ガンバリーニ『Geneve 2002』

2019-01-19 09:36:30 | アヴァンギャルド・ジャズ

ロイ・ハーグローヴ+シダー・ウォルトン w/ ロバータ・ガンバリーニ『Geneve 2002』(JazzTime、2002年)。

Roy Hargrove (tp)
Ceder Walton (p)
Peter Washington (b)
Karim Riggins (ds)
Roberta Gambarini (vo)(2枚目のみ)

メンバー的にどうみてもどジャズにしかなり得ず、また、その期待に応えてくれる。

ハーグローヴは90年代に新星として出てきたとき、生鮮食品のような新鮮な音だった。その後あまり近づかなかったし、RHファクターも適当に聴き流していた程度。だがこれを聴くと、デビューの頃に感じた印象はやはりかれの個性だったことがわかる。最晩年の2017年にシットインして吹いたかれを観たら、その音はより熟成されていた。

亡くなってから、たまたま観たライヴで、セオ・クロッカーも、ケリー・グリーンも、「Never Let Me Go」をかれに捧げた。このCDには同曲が入っていて、聴くと特別な気持ちになる。

●ロイ・ハーグローヴ
ジョー・マグナネリ・クインテット@Smalls
(2017年)