Sightsong

自縄自縛日記

森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019 その2@新宿ピットイン

2019-01-03 22:30:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインにて、森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019の2日目(2019/1/3)。

Takeo Moriyama 森山威男 (ds)
Nobumasa Tanaka 田中信正 (p)
Dairo Suga スガダイロー (p)

「DuoDuo」の企画の通り、森山威男が両ピアニストと順番にデュオを行うという趣向。

一番手、田中信正。

冒頭は「浜辺の歌」。私は90年代に本多俊之を擁する森山カルテットのライヴ(それも新宿ピットイン、大雪の日)でこれを聴き、こんなアレンジがあるのかと感激した記憶がある。渋谷毅とのデュオ『しーそー』にも収録されており、森山さんのお気に入りなのだろう。ここではバスドラムのインパクトが大きく、森山さんがベーシストを必ずしも必要としないことの理由はこれかと思わされた。激しさでは田中信正も負けてはいない。多くのヴァリエーションとともに曲内での再ブーストを繰り返した。

「My Favorite Things」を経て、「Danny Boy」。『しーそー』における渋谷毅のピアノが安寧の狂気だとすれば、田中信正のそれは動の狂気である。森山さんはブラシでタイコが破れんばかりに叩いた。

続く「Sunrise」でもまた、田中信正の天才ぶりが如何なく発揮された。ベタにあのリズムパターンとコードに乗って熱いソロを繰り出していれば、演奏者も観客もそれなりに熱狂しそうなものだが、田中さんの展開は、テーマとの往還という楔があるにせよ、まるで読めない。そして、「'Round Midnight」にでも行きそうなイントロから「Good Bye」。ここでも田中信正は抒情という誘惑には屈することがなく、清冽な音を並べて動悸動悸させた。森山さんはブラシで暴れるが、前夜同様、ここで出す印籠たる森山スペシャルは100%ではない。

二番手、スガダイロー。

ほぼスガダイローが曲を選び主導した。「The Man I Love」、「I Got Rhythm」、「In A Sentimental Mood」と観客に思わせて「Someone to Watch over Me」、「's Wonderful」、「I Loves You, Porgy」と繰り出し、森山さんも並走した。

そう、並走であった。もちろん剛の者同士の火花もコントラストもあった。しかし、いってみればハードコアなスタイルのスガダイロー、その熱い攻めにいまひとつ森山さんが呼応しない。いや呼応はしていたのだけれど、肉弾戦で斬り込んでいかない。スガさんは物足りなかったのではないか。かつての、森山威男とマル・ウォルドロンのデュオに覚えた感覚と同じである。

アンコールは、なんとスガダイロー・田中信正連弾+森山威男で「Hush a Bye」。ふたりの傑出したピアニストの違いがあらわれて面白かった。

●森山威男
森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019 その1@新宿ピットイン(2019年)
森山威男3Days@新宿ピットイン(2017年)
森山威男@新宿ピットイン(2016年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
森山・板橋クインテット『STRAIGHTEDGE』(2014年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
『森山威男ミーツ市川修』(2000年)
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』(1980、90年)
森山威男『East Plants』(1983年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
宮沢昭『木曽』(1970年)
見上げてごらん夜の星を
渚ようこ『あなたにあげる歌謡曲』、若松孝二『天使の恍惚』


ドレ・ホチェヴァー『Surface of Inscription』

2019-01-03 11:23:05 | アヴァンギャルド・ジャズ

ドレ・ホチェヴァー『Surface of Inscription』(clean feed、2016年)を聴く。

Elias Stemeseder (p)
Charmaine Lee (voice)
Dré Hočevar (ds)
Bernardo Barros (electronics)
Weston Olencki (brass)
Michael Foster (reeds)

いきなり大きなエレクトロニクスに驚かされる。それと同時に、なにか典型的なエレクトロニクス入りのノイズ・アヴァン系音楽が展開されるのかと半ば想像するのだが、それは裏切られる。

徹頭徹尾、まとまりのないサウンドであり、まるで幹を作ることを意識的に拒絶しているかのようだ。手を動かすこと、機器を駆動すること、声を出すことといったサウンドの起点にのみ注目させようとするような・・・。これらすべてがドレ・ホチェヴァーのコンポジションであり、たいした野心家である。

そんな気持ちでサウンドに付き合っていると、最後は、シャーメイン・リーの叫びで空中に放置されたまま終わる。『Ggggg』に驚かされたリーだが、NY即興界で今後も注視しなければならない。

●ドレ・ホチェヴァー
ドレ・ホチェヴァー『Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder』(JazzTokyo)(2016年)
ザック・クラーク『Random Acts of Order』(2016年)
スティーヴ・リーマン@Shapeshifter Lab(2015年)
ドレ・ホチェヴァー『Collective Effervescence』(2014年)


ロサンゼルスのMOCAとThe Broad

2019-01-03 10:27:14 | アート・映画

2018年11月末にロサンゼルス・ダウンタウンで立ち寄ったふたつの大きな美術館。道を挟んではす向かいにある。

忘れないうちに。

■ MOCA (Museum of Contemporary Art, Los Angeles)

マーク・ロスコの展示室には7点もの作品。

ジョーダン・キャスティールというNYハーレムで活動する若いアーティストの作品。ハーレム・スタジオ美術館の収蔵品である。背後の壁に思いが書きつけてある。(言うまでもないことだが、政治をアートから切り離して云々という言説のバカバカしさ)

ヴォルフガング・ティルマンス。リアルとの狭間の自覚があるからこそこのように惹かれるのだろうか。

映画のクリス・マルケルは写真も撮っていた。50年代から80年代の作品群。

知らない画家を教えてもらうのはいつも嬉しい。パトリシア・パターソンの「Mary at the Stove」、1993年。

ジェニファー・グイディ(Jennifer Guidi、1972年生まれ)という人は、もこもことしたマチエールで独特のスクリーンを通した作品を創っているようだ。とても良い。

■ The Broad

入場無料なのだが、入口前で電子メール等を登録することが必要。巨大な建物である。

抽象表現主義の作家たちの作品も多い。サイ・トゥオンブリーの部屋もあった。

村上隆の部屋。

バスキア。

ベッヒャー夫妻の部屋も。給水塔の作品群をまとめて観ると、人間活動への畏敬の念のようなものが生まれてくる。

ヨーゼフ・ボイスとアンゼルム・キーファーとは同じスペースに展示されている。かれらはデュッセルドルフで学友でもあった。ベルリンのハンブルガー中央駅(という美術館)でも同様。この春には『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』というドキュが公開されるそうで楽しみだ。

これはボイスとナムジュン・パイクとがマチューナスに捧げて1978年に行ったピアノデュオの記録。

●参照
ベルリンのキーファーとボイス
ハーレム・スタジオ美術館再々訪(2017年9月)
ハーレム・スタジオ美術館再訪(2015年9月)
ハーレム・スタジオ美術館(2014年6月)
村上隆の五百羅漢図展@森美術館(2016年)
ドーハの村上隆展とイスラム芸術博物館(2012年)