新宿ピットインにて、森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019の2日目(2019/1/3)。
Takeo Moriyama 森山威男 (ds)
Nobumasa Tanaka 田中信正 (p)
Dairo Suga スガダイロー (p)
「DuoDuo」の企画の通り、森山威男が両ピアニストと順番にデュオを行うという趣向。
一番手、田中信正。
冒頭は「浜辺の歌」。私は90年代に本多俊之を擁する森山カルテットのライヴ(それも新宿ピットイン、大雪の日)でこれを聴き、こんなアレンジがあるのかと感激した記憶がある。渋谷毅とのデュオ『しーそー』にも収録されており、森山さんのお気に入りなのだろう。ここではバスドラムのインパクトが大きく、森山さんがベーシストを必ずしも必要としないことの理由はこれかと思わされた。激しさでは田中信正も負けてはいない。多くのヴァリエーションとともに曲内での再ブーストを繰り返した。
「My Favorite Things」を経て、「Danny Boy」。『しーそー』における渋谷毅のピアノが安寧の狂気だとすれば、田中信正のそれは動の狂気である。森山さんはブラシでタイコが破れんばかりに叩いた。
続く「Sunrise」でもまた、田中信正の天才ぶりが如何なく発揮された。ベタにあのリズムパターンとコードに乗って熱いソロを繰り出していれば、演奏者も観客もそれなりに熱狂しそうなものだが、田中さんの展開は、テーマとの往還という楔があるにせよ、まるで読めない。そして、「'Round Midnight」にでも行きそうなイントロから「Good Bye」。ここでも田中信正は抒情という誘惑には屈することがなく、清冽な音を並べて動悸動悸させた。森山さんはブラシで暴れるが、前夜同様、ここで出す印籠たる森山スペシャルは100%ではない。
二番手、スガダイロー。
ほぼスガダイローが曲を選び主導した。「The Man I Love」、「I Got Rhythm」、「In A Sentimental Mood」と観客に思わせて「Someone to Watch over Me」、「's Wonderful」、「I Loves You, Porgy」と繰り出し、森山さんも並走した。
そう、並走であった。もちろん剛の者同士の火花もコントラストもあった。しかし、いってみればハードコアなスタイルのスガダイロー、その熱い攻めにいまひとつ森山さんが呼応しない。いや呼応はしていたのだけれど、肉弾戦で斬り込んでいかない。スガさんは物足りなかったのではないか。かつての、森山威男とマル・ウォルドロンのデュオに覚えた感覚と同じである。
アンコールは、なんとスガダイロー・田中信正連弾+森山威男で「Hush a Bye」。ふたりの傑出したピアニストの違いがあらわれて面白かった。
●森山威男
森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019 その1@新宿ピットイン(2019年)
森山威男3Days@新宿ピットイン(2017年)
森山威男@新宿ピットイン(2016年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男@新宿ピットイン(2014年)
森山・板橋クインテット『STRAIGHTEDGE』(2014年)
ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』(2011年)
『森山威男ミーツ市川修』(2000年)
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』(1980、90年)
森山威男『East Plants』(1983年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
内田修ジャズコレクション『宮沢昭』(1976-87年)
宮沢昭『木曽』(1970年)
見上げてごらん夜の星を
渚ようこ『あなたにあげる歌謡曲』、若松孝二『天使の恍惚』