竹内正右『モンの悲劇 暴かれた「ケネディの戦争」の罪』(毎日新聞社、1999年)を読む。
モン族は、中国雲南省からベトナム北部、ラオス北部で生活する山の民である。佐々木高明『照葉樹林文化とは何か』によると、もともと長江流域で稲作をしていたが、太平天国の余波などにより、東南アジアへと移動してきた。さらにまた、梅棹忠夫『東南アジア紀行』によれば、1000mの等高線で切って、それ以下の部分を地図で消し去ってしまうと、あとに彼らの「空中社会」があらわれる。
本書は、そのモン族が、戦後も、大国の思惑で翻弄され続けてきたことを示す。インドシナ戦争とベトナム戦争、さらにその後も、フランスやアメリカの「反共」のために多数が動員された。中越戦争にも、タイ・ラオス国境紛争にも、モンは巻き込まれた。70年代末には、北ベトナム軍が、ソ連から提供を受けた化学兵器をモン攻撃のために使った証拠さえあるという。それが本当なら、ベトナムは枯葉剤の被害者であるだけでなく、加害側にも立っていたことになる。
大変興味深いルポなのだが、残念なことに、文章が読みにくい。本書を読み解いてあらためて歴史の中に位置づけていく仕事があればよいと思う。