アンジェイ・ワイダ『カティンの森』(2007年)を観る。
1941年、独ソ戦争勃発。ポーランドにはこの2国が侵攻した。ソ連が捕虜としたポーランド軍将校たちは、1943年、「カティンの森」において、ソ連軍に虐殺された。当初はドイツによって国際的に喧伝されるが、ソ連は、戦争に勝利すると、このことをドイツの犯罪だとする物語を構築しようとする。ポーランド政府は、その嘘に加担し、異を唱える者を弾圧した。
友人や家族を誰が殺したのか嘘を付けない者たちや、強権政治と密告社会を恐れる者たちへに対する、ワイダの淡々とした視線が印象的だ。ことさらに告発し、あるいはヒロイックな物語にしたとすれば、この迫真性は得られなかったに違いない。
そしてまた、仮に日本において、史実を自虐史観だと攻撃する者と、それに怯える者とを映画化したと想像してみれば、この映画の凄さが実感できようというものだ。