野村喜和夫+北川健次『渦巻カフェあるいは地獄の一時間』(思潮社、2013年)。素敵な奇書である。
北川健次による奇妙なコラージュは、街と夜をわがものにした業のようでもあり、ディストピアのようでもあり。渦巻というイメージは、地獄へと降りてゆくダンテのイメージでもあり、またイエメンとエチオピアに吸い込まれていったアルチュール・ランボーのイメージでもあり。
どうしても、野村喜和夫が翠川敬基・大友良英と組んだCD作品『ututu/独歩住居跡の方へ』において、思いつめたように絞り出す詩人の声が、読みながらこだまする。確かに本書にも、「余慶坊/の方へ」とある。金子光晴が滞在した上海の街だという。「の方へ」が東京であっても上海であっても、詩人の渦巻の中では大した違いがない。