『けーし風』第79号(2013.6、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2013/7/27、四番町集会室)。参加者は7人。
本号の特集は「沖縄に生きる権利―基本的人権・主権・自己決定権」と題されている。
沖縄は、明らかに日本と米国の二重の植民地主義に害され続けている。サブタイトルにある基本的人権が侵害されているわけであり、その再獲得のために何をすべきか。
阿部浩己氏(神奈川大学)による講演録は、特定の集団にとって、内的自決権(自分たちが政策の意思決定に参加することを保障される)、外的自決権(植民地的支配をされている・あるいは内的自決権を否定されている集団が国から分離独立することを主張できる)という、自決権・自己決定権が国際的な流れとなってきていることを示している。国連の植民地独立付与宣言(1960年)、国際人権規約(1966年)などを背景として、国際人権法が力を持つようになってきている。日本は、明らかにその潮流に乗ることができないでいる。
この会でも、国際法の流れの中に沖縄の権利回復を位置づけていくことが重要だという指摘があった。
1962年に琉球立法院が決議した「施政権返還に関する要請決議」(2.1決議)においては、米国による沖縄の支配に反対し、日本への施政権返還を要請している。これは実現を見たが、本来求めていた植民地主義の撤廃はなされず、支配の形が変わっただけだということが、如実に示されているわけである。
「1960年12月第15回国連総会において「あらゆる形の植民地主義を速かに、かつ、無条件に終止させることの必要を厳かに宣言」する旨の「植民地諸国、諸人民に対する独立許容に関する宣言」が採択された今日、日本領土内で住民の意志に反して不当な支配がなされていることに対し、・・・」
「施政権返還に関する要請決議」(2.1決議)より
ところで、沖縄を「軍事的植民地」だと日本ではじめて評したのは矢内原忠雄だったという。
その他、会での話題。
○山城博治氏(社民党)の参院選落選の背景。
○沖縄における右翼的な勢力の伸長。それと祖国復帰運動との関連。
○沖縄には戦中まで軍隊がなかったが、そのことの歴史認識は浅い。徴兵はなされており、それに反対して蜂起した民衆が平定された「本部騒動」があった。
【本部騒動】 明治末期に本部村(町)で起こった徴兵忌避をめぐる騒動。1898年(明治31)の「徴兵令」実施以来、本部村は県内でもっとも徴兵忌避者が多かった。1910年5月18日の徴兵検査のさい、徴兵忌避の疑いがある青年にたいし、徴兵官が麻酔をかけるなど警引な検査を実施した。そのようすを見ていた村民がいきり立って、検査場に乱入、器物を壊したり、係官に殴りかかった。徴兵官は抜刀して切りつけ、村民を場外に退けた。夜になって、数百人が検査場の本部尋常小学校校庭に結集、渡久地署の警官だけではなすすべがなく、翌19日、那覇からの応援を得て微兵検査を終えた。その後、23人が<騒擾罪>で起訴され、そのうち2人は無罪、残りは懲役5年から罰金5円の刑が言い渡された。この事件は、一般民衆の徴兵嫌悪を象徴する代表的な事例である。(『沖縄大百科事典』沖縄タイムス)
○高江のスラップ裁判(政府が民衆を威圧するために使う報復的な民事訴訟)。本誌でも、岡本由希子氏が、米国にスラップ訴訟を退ける法律があることに言及しており、さらに、会でも、欧米にも反スラップ法があるはずだとの指摘。高江の件は違憲裁判になりうるのではないか。なお、高裁の不当判決を受けて、高江の伊佐氏は既に上告したとのこと(参加者が本人に携帯で確認した)。
○現政権が自民党配備を狙っている与那国において、8/11に町長選がある。
○4月28日の沖縄での政府式典(沖縄主権回復の日)において、首相たちが突然「万歳三唱」をした件。勿論、戦後、沖縄を米国に引き渡した「天皇メッセージ」が想起されるが、今回も、「沖縄は日本にとって関係ない」とのメッセージであったのだとの指摘。
○2014年に、スコットランドにおいて、英国からの独立に関する住民投票が実施される。沖縄独立論についても、また関連して議論がなされるだろう。
○金武湾の石油備蓄基地(CTC)建設反対を訴えた情報誌としてスタートした『琉球弧の住民運動』(1977-84, 86-90)。なんとか復刻にこぎつけたとのこと。わたしも編集委員に名を連ねていただいている。まだ予約受付中。ぜひ。
●けーし風
○『けーし風』読者の集い(20) 島々の未来に軍事的緊張はいらない
○『けーし風』読者の集い(19) 新しい地平をひらく―「復帰40年」の沖縄から
○『けーし風』読者の集い(18) 抑圧とたたかう ― ジェンダーの視点から
○『けーし風』読者の集い(17) 歴史の書き換えに抗する
○『けーし風』読者の集い(16) 新自由主義と軍事主義に抗する視点
○『けーし風』2011.12 新自由主義と軍事主義に抗する視点
○『けーし風』読者の集い(15) 上江田千代さん講演会
○『けーし風』読者の集い(14) 放射能汚染時代に向き合う
○『けーし風』読者の集い(13) 東アジアをむすぶ・つなぐ
○『けーし風』読者の集い(12) 県知事選挙をふりかえる
○『けーし風』2010.9 元海兵隊員の言葉から考える
○『けーし風』読者の集い(11) 国連勧告をめぐって
○『けーし風』読者の集い(10) 名護市民の選択、県民大会
○『けーし風』読者の集い(9) 新政権下で<抵抗>を考える
○『けーし風』読者の集い(8) 辺野古・環境アセスはいま
○『けーし風』2009.3 オバマ政権と沖縄
○『けーし風』読者の集い(7) 戦争と軍隊を問う/環境破壊とたたかう人びと、読者の集い
○『けーし風』2008.9 歴史を語る磁場
○『けーし風』読者の集い(6) 沖縄の18歳、<当事者>のまなざし、依存型経済
○『けーし風』2008.6 沖縄の18歳に伝えたいオキナワ
○『けーし風』読者の集い(5) 米兵の存在、環境破壊
○『けーし風』2008.3 米兵の存在、環境破壊
○『けーし風』読者の集い(4) ここからすすめる民主主義
○『けーし風』2007.12 ここからすすめる民主主義、佐喜真美術館
○『けーし風』読者の集い(3) 沖縄戦特集
○『けーし風』2007.9 沖縄戦教育特集
○『けーし風』読者の集い(2) 沖縄がつながる
○『けーし風』2007.6 特集・沖縄がつながる
○『けーし風』読者の集い(1) 検証・SACO 10年の沖縄
○『けーし風』2007.3 特集・検証・SACO 10年の沖縄