『突破烏江』(1961年)は、共産党の紅軍が流れの激しい烏江を渡り、国民党軍を破る物語である。中国を訪れた際、300円程で買ったDVDのひとつだ。
ジャケットはカラーだが、本編は白黒である。例によって、ケースの中には丁寧に折りたたまれたポスターが収められていて苦笑してしまう。飾る人がいるのか?
1934年10月、共産勢力は国民党軍に押され、中央根拠地である瑞金(江西省)を脱出し、後に英雄的な旅として称えられる「長征」の途につく。第一方面軍と呼ばれていた中央紅軍は当初10万人近くで前線を突破したが、わずか2ヶ月で兵力が3割にまで激減してしまう。この衝突はその直後、貴州省・烏江(長江に注ぐ)を渡った戦闘のことである。(天児慧『巨龍の胎動』より)
それにしても退屈極まりない映画だ(一度居眠りして中断し、また観た)。紅軍兵士たちは活力が漲り、機敏で、明るく朗らかで、過ちを自ら認め合う。一方国民党の兵士たちは腰が引けて臆病、司令部の面々は怠惰で、威張っており、だらしなく酔っ払う。それぞれの描かれ方が、完璧にコード化されているのである。
紅軍の司令官が事あるごとに「毛主席が・・・」と演説するのは、この戦勝により、毛沢東が実権を握ったという(内部的な)意義があったからだろう。1935年1月、烏江を渡った地の貴州省遵義において、共産党内部では「留ソ連」の指導部が批判され、毛沢東が党中央政治局主席という新設のポストに就くことになる。(しかしそうすると、「毛主席」と表現するのは勇み足ということになるが・・・・・・。)
長征と毛沢東を称える映画としてのみ価値がある映画だ、と言っていいだろう。