ゼイディー・スミス『美について』(河出書房新社、原著2005年)を読む。
2段組500頁の分厚い小説なので読むのにずいぶん時間がかかった。しかしどこもかしこも面白くてツボを突いてくるのでまったく飽きない。
リベラルなアメリカのハワード家と、保守的なロンドンのキップス家。父親同士は不倶戴天の敵であり近寄らなければいいものを、運命がそれを許さない。ハワードの純情な青年、なぜか極端に奔放になってしまった青年、皮肉しか言わず人を褒めることのないクソのような父親、洞察力が鋭い妻。キップスの、やはりクソのような学者の父親、男と遊びまくっている娘。なぜかそれぞれに自分を見出していちいち感情移入してしまう。
ことばで個性を形にしていくことが希薄な日本社会と違う点も、刺さるのかもね。
●ゼイディー・スミス
ゼイディー・スミス『The Embassy of Cambodia』(2013年)