東チモールへ旅行する前に著者の本を読んだ。自省自戒を込め「紛争屋」(正確には紛争仲裁屋だと思う)を自称する著者が、昨今かまずびしい情勢にある日本の「集団的自衛権」もろもろの問題について述べた本。
過去いくつもの紛争地帯を渡り歩き、国連や現地勢力、NGO等らと渡り合ってきた著者がグローバルスタンダードとも言えそうな視点から安部政権の説明する集団的自衛権や憲法9条の解釈をする。同時に過去(湾岸戦争以降)の日本の外交政策の考え方と誤りについて説明し、「ではどうすれば良いのか」まで述べる。語り口は平易で、時には心中の呟きをそのまま文字にした口語文まで登場するため解り易い。著者は現在大学で教鞭を取っているが、本稿は講義か公開講座の内容を纏めたものだろうか?言っていることが正しいか誤っているかの判断はさておき、これだけ平易に書かれれば大抵の人は理解できるのではないか。
逆に言えば、新書1冊の分量があるとは言え、これっぱかりの内容の説明がきちんとなされていない事実に愕然とする。きっとウヨクもサヨクも、この程度のことも知らずに雰囲気だけで行動している人って多いんだろうなぁ。きっと原発問題とかもそうなんだぜ?
著者の結論は、安部政権の「危惧」は嘘っぱちか、起こっても個別的自衛権で対処可能というものだ。それが正しいか正しくないのか、1つ1つの想定事例で例えば本書に対する反証を検討する形で見極められるはず。別に本書を使わなくても良いが、しっかり検証するマスコミがいないのはどういうわけ?
ただし1点、著者は日本人に一人たりとも犠牲者を出してはならないとは言っていない。言い方を変えれば、国際法や慣習を遵守してゆく上で、自国民の人的損害は起こりえるものと覚悟しなければならないと言外に示唆しているように思える。ズルいと言う人もいるかもしれない。もちろん著者とて望む事態ではなかろうが、ヒステリックに自国民保護を叫ぶよりよっぽど現実的ではないのか。「戦死者は出ていない」自衛隊でもPKO派遣によるPTSDが原因と思われる自殺者は数十人単位で出ているし、PKOでみれば文民警察官の死者も出ているそうだ。夢物語に逃避して現実を直視しないのは、責任逃れの卑怯な態度と知るべきだろう。
…とは言え、中韓露にやられっぱなしに映る領土問題、ひたすら自制して国際世論を巻き込んで「共同管理」に持ち込むのが最善と言う主張は、理屈では正しいかもしれないが感情的には受け容れ難いものがあるなぁ。
2015年9月16日 通勤電車にて読了
過去いくつもの紛争地帯を渡り歩き、国連や現地勢力、NGO等らと渡り合ってきた著者がグローバルスタンダードとも言えそうな視点から安部政権の説明する集団的自衛権や憲法9条の解釈をする。同時に過去(湾岸戦争以降)の日本の外交政策の考え方と誤りについて説明し、「ではどうすれば良いのか」まで述べる。語り口は平易で、時には心中の呟きをそのまま文字にした口語文まで登場するため解り易い。著者は現在大学で教鞭を取っているが、本稿は講義か公開講座の内容を纏めたものだろうか?言っていることが正しいか誤っているかの判断はさておき、これだけ平易に書かれれば大抵の人は理解できるのではないか。
逆に言えば、新書1冊の分量があるとは言え、これっぱかりの内容の説明がきちんとなされていない事実に愕然とする。きっとウヨクもサヨクも、この程度のことも知らずに雰囲気だけで行動している人って多いんだろうなぁ。きっと原発問題とかもそうなんだぜ?
著者の結論は、安部政権の「危惧」は嘘っぱちか、起こっても個別的自衛権で対処可能というものだ。それが正しいか正しくないのか、1つ1つの想定事例で例えば本書に対する反証を検討する形で見極められるはず。別に本書を使わなくても良いが、しっかり検証するマスコミがいないのはどういうわけ?
ただし1点、著者は日本人に一人たりとも犠牲者を出してはならないとは言っていない。言い方を変えれば、国際法や慣習を遵守してゆく上で、自国民の人的損害は起こりえるものと覚悟しなければならないと言外に示唆しているように思える。ズルいと言う人もいるかもしれない。もちろん著者とて望む事態ではなかろうが、ヒステリックに自国民保護を叫ぶよりよっぽど現実的ではないのか。「戦死者は出ていない」自衛隊でもPKO派遣によるPTSDが原因と思われる自殺者は数十人単位で出ているし、PKOでみれば文民警察官の死者も出ているそうだ。夢物語に逃避して現実を直視しないのは、責任逃れの卑怯な態度と知るべきだろう。
…とは言え、中韓露にやられっぱなしに映る領土問題、ひたすら自制して国際世論を巻き込んで「共同管理」に持ち込むのが最善と言う主張は、理屈では正しいかもしれないが感情的には受け容れ難いものがあるなぁ。
2015年9月16日 通勤電車にて読了