今回は全く役に立たない、仕事のこぼれ話を書きます。
今年始めた、横浜港のクルーズ船客対応アルバイト。色々なポジションがあるのですが、その中の一つに下船客のバス乗せ込みがあります。港に着いて、そのまま自分でホテルや観光地に移動するお客様のほかに、船会社(旅行会社)側で手配したバスで観光や空港、ホテルへ向かうお客様も少なくありません。それらのお客様を、行先の異なるバスに間違いなくご案内して送り出す仕事です。
バスへの案内はさておき、ご乗車頂く際には荷物を床下トランクにお預かりします。ここで問題になるのが、トランクの容量です。国内で高速バスや夜行バスに乗ったことがある方は、開いているトランクをご覧になって結構な広さがあると驚かれたと思いますが、クルーズ船で一週間以上の旅をする海外のお客様相手だと、全然容量が足りないのです。
我々がちょっとの旅行に持って行く、小ぶりなキャリーオンがスーツケースで言うSサイズ、海外旅行に持って行く、持ち込み不可なのがMサイズですが、それより大きく、小柄な人では取り回しが大変なLサイズをお持ちのお客様が少なくありません。そして大抵の方が、Lサイズ+Mサイズと言ったように、異なる2つ、時には3つのスーツケースをお持ちです。するとどうなるか。座席数ぶんのお客様はとてもお乗せ出来ないのです。先日は、わずか15名のお客様の荷物で床下トランク2つが満杯になりました。そういうことを予期して、バスは概ね25~30名で1台となるよう、手配がされています。それでも偶に、床下に積み切れず最後の数名分は客席に運び込むことがあります。お客様はたいてい前の方から座られますので、荷物を狭い通路の奥まで持って行くので面倒です…そこは私達の仕事ではないのですが。
現場に出て解ったのは、普通の人には四角い車体で同じように見えるバスでも、随分トランクの収容力に差があることです。現在、日本の観光バスはいすゞ・日野でほぼ同一仕様の通称「セレガーラ(日野セレガ+いすゞガーラの造語)」と、三菱の通称「おにぎり(後ろ窓の形状から)」がありますが、床下トランクは「セレガーラ」の方が真四角で使いやすく、フレームが突き出ている「おにぎり」は実効容積が少ないのです。多くの荷物を積むため、スーツケースは立てて積みます。この際、「おにぎり」だとLサイズの荷物を立てられないのです。横にして積むと、トランク内で奥まで押し込むのにキャスターが使えず、ドライバーさんは体力を要します。こうなると、Sサイズまでの荷物は預けずに客席に持ち込んで下さい。スペースはありますからとお願いしたくなります(しませんが)。
また、観光バスには各社とも車高の異なる「HD(ハイデッカー)」と「SHD(スーパーハイデッカー)」があります。客室寸法に大差はなく、床下をどれだけ嵩上げしているかの違いなのですが、Lサイズな荷物の多いインバウンドのお客様をお乗せする場合、この床下容積の差が効いてきます。Lサイズを立てて奥まで転がして積み込んだうえに、Sサイズを平置きできるのです。ただSHDは車高と同時に車両価格も高いため、導入している会社は多くありません。
「セレガーラ」と「おにぎり」、「HD」と「SHD」、この掛け合わせで4パターン。インバウンド、それもホテル発着の日帰りツアーでなく空港や港からの輸送を考えると、「セレガーラのSHD」が最も、荷物積み込みの不安のない車種であることが判りました。でも、判っちゃいるけど買えないよと言うのがバス会社さんの本音なのだろうとは思います。
(写真はフリー素材です)