森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ツルボ(ユリ科)

2006年09月06日 | 自然観察日記
 初秋に山野というより公園や道路わきの草むら、土手などにひょっこり顔を出して咲いている。日常の雑踏の中でもまれたときなど、すぐその傍らにいて和ませてくれる野草だ。マツヨイグサやアワダチソウと違って威圧感が無いのがいい。
 花は総状花序で一つ一つの小さな花を見ればやっぱりユリの花。「・・・・歩く姿はユリの花」とまではいかないが、じっくり見てあげれば味のある草姿である。一度付近を捜してみてほしい。きっとすぐそばで見つかることだろう。
 この球根を集めて食用に供しようと考える人もいるようで、「ツルボ」はこういう人の食材探しの中から名づけられたという。

ジャコウソウ(シソ科)

2006年09月06日 | 自然観察日記
「麝香草」と書くのだろうがそれらしい匂いを感じたことが無い。名前の由来を理解できていない一つである。夏から秋谷筋に見られるやさしい花だ。シソ科の中にあっては大きな花である。花は順次咲き出し散ってゆくから花でいっぱいになった株を見ないし、大きな群落にも出会ったことが無いから、印象は孤独で控えめな性格と映る。
 ジャコウソウの連想で思い出すのは、若い頃小さな沢筋の道を仲間と調査したときのことである。8月末のこと草丈が伸びた道を掻き分けながらの前進であった。暗くなってきたから少し広い場所でテントを張った。人っ子一人通るような場所で無いから、ここからは「勉強会」と名を打っての宴会になるのがお決まりのコースであった。談笑と酒を酌み交わすうち酩酊した私の師匠がテント脇の沢にごろりごろりと転がり落ちたのである。そこにはジャコウソが咲いていてその一部始終を見ていたのである。今でもその場の光景が忘れられない。