森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

アカバナ(アカバナ科)

2006年09月23日 | 自然観察日記
 沢の川原にアカバナが咲いていた。この花は水気が多く少し荒地で日当たりのよさそうなところで見かける。夏から秋の花で、もうそろそろ終わりの頃だろう。小さな桃色の花の下に長い子房をつけている。秋遅く好みが割れ中から綿毛に似たもやもやの毛を持った種子が顔を出す。
 そういえば、高原を彩る植物として知られるヤナギランもアカバナの仲間で花後実の中から綿毛のような種子が風に揺られそして飛んでいく。その光景のミニチュア版がアカバナの生育するところで起こる。

ドクベニタケ(ベニタケ科)

2006年09月22日 | きのこ・菌類
 このころキノコを意識して歩くと必ずといっていいくらい遭遇する。雑木林に極普通に生えているキノコといっていいだろう。綺麗な赤い彩で目を引くが、名前がいけない。「毒」とつくともう警戒心の塊になるのか、蹴飛ばされたドクベニタケを時々目にする。日本人はどうしてキノコを蹴飛ばす癖があるのだろう。
 名前はさておいて、このドクベニタケ、噛んでみるとやけに辛い。唐辛子などの辛さでなくビリッとした刺激で何かの薬品の刺激に似ている。毒とされる意味もわからないわけでもない。ただし、日本でこのキノコで中毒したとか死んだとかは聞いたことがない。
 類似の種もあってこのグループはなかなか判別が難しい。恩師のN先生によればドクベニタケとされても辛味のないものもあるとか。しかし、私が噛んだものはすべて辛く、無味のものには遭遇していない。

クロバナヒキオコシ(シソ科)

2006年09月22日 | 自然観察日記
 秋の野にあるシソの花をもう一種。クロバナヒキオコシという花は小さいが、なかなか捨てがたい野草である。花の色と形がいい。花をアップで見るとどことなくユーモラスで愛嬌がある。普通のシソ科の花とはちょっと違う感じで特異だが、葉はシソそのもの。茎も四角でシソだ。
 秋のハイキングなどで野山を歩く機会があったら、ちょっと気を配って探してみてほしい。見つけたらきっと感動するのではないだろうか。

タイリンヤマハッカ(シソ科)

2006年09月22日 | 自然観察日記
 葉が特徴的でしっぽを出した亀の形に似ているから、カメバソウというのがある。カメバソウは正式な和名をカメバヒキオコシといい、主に太平洋側の山野にある。タイリンヤマハッカはこれとほとんど同じだが、花が大きい日本海側に分布する種である。越後では秋、適湿地に普通に見られる。花はシソ科特有な小魚が群れたような花穂を作る。秋の青色は涼やかである。
 ところで、「ひきおこし」というのは木の葉の汁を疲れた旅人に飲ませたら引き起こせるように元気になったというのが発端だそうである。薬草なっているらしい。

ベニイグチ(イグチ科)

2006年09月21日 | きのこ・菌類
 今日も鮮やかなイグチを紹介する。見てのとおりのベニイグチ。幼菌から開いたばかりの菌はとてもきれいで、特にキノコに興味のない方でもカメラに収めたくなる代物である。食用の対象とはならない菌である。
 夏から秋にかけてアカマツが混ざる広葉樹林の林内にみられる。ベニイグチの仲間は東南アジアなど暖かい地域が分布中心だそうで、越後のベニイグチは結構北に分布する種なのかもしれない。

ハナタデ(タデ科)

2006年09月21日 | 自然観察日記
 今回であったタデをもう1種、ハナタデという。雰囲気がとてもやさしく繊細な感じのするタデで、山野の湿った沢筋などの林下に生える一年草である。花穂に付く小さな花の数がオオイヌタデに比べ非常に少ない。むしろその少なさが山野草を愛する人々には好まれるようである。葉には中央部分に黒い斑点が出る性質があるから見極めやすい。

オオイヌタデ(タデ科)

2006年09月21日 | 自然観察日記
 いろいろなタデの花も盛りになってきた。種類が多く紛らわしいものが多いから、なかなか名前が覚えられない。これは、オオイヌタデ。花穂が長く垂れ下がる性質がある。花色はピンクか白、中間もある。イヌタデは全体小さく花が濃いピンクで穂が垂れることはない。いずれも至る所の路傍に見られるなじみ深いものだ。タデの名の起こりは、葉を食べると辛くて口がただれるということから付いたとされるが、オオイヌタデは辛くない。辛いのはヤナギタデという種で機会があったら紹介したい。

キイロイグチ(イグチ科)

2006年09月20日 | 自然観察日記
 キノコは鮮やかなものが多い。食べられるかどうかの関心もいいのだが、彩を楽しむのいいのではないか。新鮮なものは見事な黄色である。マツを混ぜた雑木林に夏から秋にみられる。薄暗い林の中で黄色の傘はひときわ目立つ存在で遠目からでもよくわかる。
 ところで、この鮮やかな色彩どういうところに役立っているのだろうか。色を頼りに訪れる虫などがいるとも思えない。地味なキノコも多い中、キノコにとって目立つ色彩の意味は何なんだろう。

シラネセンキュウ(セリ科)

2006年09月20日 | 自然観察日記
 山間の沢筋の草むらなどに咲いている。純白な小さな花がかたまって大きな花序を形成するセリ科の特徴をよく出している。似たようなものがいくつかあるからその判別が難しいが、茎葉が各節で内側に折れて半曲することを目安にするといい。
 セリ科の花はカミキリなど甲虫などがよく遊びにくる。蝶などの華麗に花々を渡り歩くのと違って、ドタッと飛び降りる感じで花に訪れる。セリ科の細かな花の集団はそういう習性の昆虫に適応したもののように見える。シラネセンキュウはとくにその傾向が強いのだが、これは秋の花。夏場よく見かける甲虫は見られない。小さな双翅類が目に付く。

キツリフネ(ツリフネソウ科)

2006年09月19日 | 自然観察日記
 ツリフネソウと同じ環境にキツリフネが咲いていた。キツリフネは黄色のツリフネソウということだが、一つ一つの花はきれいな黄色で存在感があるが、ツリフネソウとは違い花が葉の下に付くからずっと控えめで、群落となるとあまり目立たない感じがする。
 距はくるくるとは巻かない。実はホウセンカと同じく触るとポンとはじける性質はツリフネソウと同じである。

ツリフネソウ(ツリフネソウ科)

2006年09月19日 | 自然観察日記
 愛嬌のある形で見飽きない。昆虫をおびき寄せ奥まで導いて、途中にある雄しべの花粉を体に擦り付けるような構造になっている。花粉まみれになった昆虫が次の花に入ったとき今度は雌しべに付着させる。なかなか、工夫された花である。後部の渦巻状になったところ(距:きょ)に蜜があるのであろう口吻の長い蝶などをターゲットにした進化のようだが、蝶が乱舞するような光景はみない。多くはマルハナバチの仲間が受粉に預かっているといわれる。マルハナバチの口吻と距の形うまく合うのだろうか?
 それより、花の入口から入らずにいきなり後部の距のところに取り付いて、外から口吻を差し込んで蜜を吸う昆虫がいるという話を聞いた。こうなると何のための形の変化か意味を失ってしまいそうである。とにかく花と昆虫の確執は想像を絶するものなのだ。

ツリフネソウ群落

2006年09月19日 | 自然観察日記
 少し湿り気のある草むらはツリフネソウで埋まっている。「船」というより金魚などの「魚」を連想するのだが、色あでやかな「魚」が群れている風情だ。春とは違った秋の花園がここかしこに作られていて、ちょっと哀愁に満ちた面持ちである。最近多く市販されているインパチェンス(アフリカホウセンカ)も同じ仲間なのだが、あの華やかさはない。

キンエノコロ(イネ科)

2006年09月18日 | 自然観察日記
 道端に普通に生えている小さいエノコログサ。穂の「のげ」が黄色に見えることからこの名がある。アキノエノコログサのように穂が垂れるようなことはない。
 変哲のないエノコログサかも知れないが、視線をぐっと近づけて群がる穂の中に持ってくると不思議な世界に入り込める。ごく普通の秋の風景の中に潜む不思議。自然を楽しむ一つの方法である。
 一年草で日当たりのいい場所に生えるから、木々が茂るともう生きてはいれなくなる。

ムラサキアブラシメジモドキ(フウセンタケ科)

2006年09月18日 | 自然観察日記
 長い名前だ。名前の感じはもの珍しそうだが、私が出かける山には普通に見かける。どちらかというと海岸よりというより山地性の傾向がありそうだ。
 ブナが混じるような雑木林に、ルリ色の宝石のように光っていて美しい。幼菌の丸い傘ならなおさらそう思うことだろう。表面に強い粘性を帯びるから光が強く反射するのだ。比較的小さな菌だが、1本見つけると多くの場合菌糸の広がり(しろ)が数m範囲で広がっているから、落ち葉や草の茂みに隠れたものを見つけることが出来るだろう。ぬめりと歯ざわりで私は美味しいキノコだと思っている。

実りの秋 その1

2006年09月18日 | 自然観察日記
 この時期の山歩きは忙しい。植物の観察・撮影、渓流釣りにキノコ狩り・・。新潟県中越地震以来林道の破損で訪れることが出来なかった縄張りの一つにマーキングしに入った。この林道使えるようになったのは夏ごろからだったのだろうか。もうかなり釣り人が入った形跡がある。小さな魚影を見かけたが感触を手にすることが出来なかった。
 しかし、楽しみ方はいくらでもあるから「ぼうず」はちっとも気にならない。沢沿いの小道を歩けばキノコが顔を覗かせている。この日の収穫はムラサキアブラシメジモドキとナラタケ(黄色)。夕餉の一品になったことはいうまでもない。

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