森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

タカネマツムシソウ 花

2012年12月21日 | 自然観察日記
花は外側に並ぶ花弁の一部が大きくなった舌状花と中央に並ぶ花は花弁が同じ大きさ(管状花)からできているので、キク科に近い種であることがわかります。細かく言えば葯が合着していないこともキク科との区別点ですが、一見してキク科とは異なるというのがわかりますね。
タカネマツムシソウは色が素晴らしいです。低地草原性のマツムシソウにはない色彩ではないでしょうか。草丈も低く豪華ですから園芸化したくなる気持ちもわかります。今回私は本物を本来ある姿で観察できたことにとても満足しています。

タカネマツムシソウ 管状花

2012年12月21日 | 自然観察日記
中央部分の管状花です。花弁の切れ込みは同じで突起は5個。舌状花との違いが際立ちます。一つの花と考えているのが実は多数の花の集合でそれも形態機能が異なるものが秩序だって配列していることに驚きをかんじますね。

崖から落ちてきたタカネマツムシソウ

2012年12月21日 | 自然観察日記
尾根を踏破した翌日崖下に伸びる雪渓まで足を延ばして植物の観察をしたのですが、その雪渓に崖から崩れ落ちてきた様々な植物転がっています。このマツムシソウもその一つで山頂直下からここまで落ちてきたことになります。これらの植物の運命は適応しないで死滅していくんのがほとんどなのでしょうが、中にはしぶとく適応して沢筋に生き残るものがあります。この沢でタカネマツムシソウの自生状態のものは確認できませんでしたが他の種で生き残こっているものがありました。

エゾシオガマ

2012年12月20日 | 自然観察日記
高い山に来ないとみられない種にシオガマの仲間があります。渦を巻くような独特な花の形と並び方でなかなか人気のある花です。鳥甲山にはヨツバシオガマなどの赤紫色の種は見かけませんでしたが白い花のエゾシオガマがありました。この種は高山帯というよりやや下がった亜高山帯種のようです。鳥甲山には針葉樹林帯がそれほど発達はしていないもののこの針葉樹林帯との関係が深いようです。

エゾシオガマ 花

2012年12月20日 | 自然観察日記
ゴマノハグサ科シオガマギク属。この属は半寄生植物としてしられています。花の配置が螺旋形に配列する様に見える種もいくつかあって、このエゾシオガマも螺旋状態になって見えますね。もともと互生した葉腋に花がつくのですが一つ一つの花が内向きに斜めになっているなどの理由でより螺旋が強調されているようです。

クロトウヒレン

2012年12月19日 | 自然観察日記
ちょうど雨がひどくなっていたとき、花が咲いていないのでつい見逃しそうになりましたが虫の知らせというのかなんとか気づいて証拠写真をとりました。高山植物としてよく知られている種ですが、アザミに近いグループで棘はありません。この花に出会うと高山に来たなぁと感ずるもののひとつで、どちらかというと地味な部類かもしれませんが好きな種ですね。もう花が咲いていてもいい季節でしたが、鳥甲山の登山道では一つも確認できまなかったのが残念です。そうたびたび高山に来ることができるような身分でないので、綺麗な花を見せている姿になかなか会うことができません。

クロトウヒレン 葉

2012年12月19日 | 自然観察日記
結構山菜として使えそうな雰囲気を持つ葉です。形も特徴的なので比較的頭に残る気がします。高山から亜高山にかけて適湿な土壌が発達した高径草原などに比較的よく見つかる種です。

オオバギボウシ

2012年12月19日 | 自然観察日記
クロトウヒレンは限られた高山に生活圏を持っているのにたいして、このオオバギボウシは非常に広い範囲(垂直分布)に生活しています。里山にも普通に見られますが、湿気の多い山地の傾斜地に大きな群落を見かけます。内心ちょっと以外ではあったのですが普通の住人のような存在で堂々と生育していました。山に出かけたとき現地の花図鑑など求めることがあるのですが、高山植物として扱われている場合がありますね。それなら2000m以上の山にあっても不思議はないのですが・・・。私の中ではオオバギボウシは里の種で高山の花にはなっていません。(高山にある種は特に別扱いする人もいるようで名前が付けられているときがあります)

キバナノカワラマツバ

2012年12月18日 | 自然観察日記
山頂近くのガレ場にはキバナノカワラマツバが花をつけています。山地で見ることは多いのですが低地からかなりの高所にもその生活圏をのばしているようですね。今年は菅平の一角でこの花の群落を目にしました。そこは多くの種が混在する草原で、このような裸地に単生しているものではありません。カワラマツバはおそらく先駆植物で荒れ地に最初にやってくる種ではないでしょうか。土壌が安定するまでは競争相手がいないけれど、やがていろいろな種が生育するようになってしだいにここから追い出されてしまう・・・。そういう役どころの存在。
どんな種でも自分の立ち位置とか役割りがあってすべての存在で大きな生態系というバランスを取っている・・・。自然というのは不思議で魅力的なものなのです。

ヤマホタルブクロ

2012年12月18日 | 自然観察日記
山頂部分にヤマホタルブクロを多く見かけました。登る途中にはほとんど見ていないのですが、山頂付近の草付きやガレ場のヘリに点々と生育しています。「ヤマ」とつく種ですが低山帯にも生育しています。ただ、水平分布は本州の中央部(東北・関東・中部・近畿)に限られていてこのあたりで進化してきた種のようです。垂直分布が大きいのが特徴の一つということになりますね。高山でヤマホタルブクロをみることはままありましたから違和感はないのですが、鳥甲山のヤマホタルブクロは色がいいことと個体の多さに目をむきました。

ヤマホタルブクロ 花

2012年12月18日 | 自然観察日記
ホタルブクロとヤマホタルブクロの区別するにいい場所ががく片の間の突起が反り返るかどうかです。これはただ膨らんでいるだけですからヤマホタルブクロです。花の内部の構造が結構複雑なのだそうですが、あまり詳しく調べた事がないので機会を見つけてやってみないといけないと考えています。

ハリブキ 実

2012年12月17日 | 自然観察日記
亜高山から高山にかけて生育するハリブキの実です。それもアップで。全体は20cm近い楕円形に多数の実が集まってできています。「フキ」といっても低木で、登山をする人は一度や二度必ず目にしているはずです。ウコギ科の種ですが赤く熟すものはこれ以外になかったような・・・。形も特徴的な形状ですね。名前の通り全体が鋭い針で覆われていますから近づきたいものではありません。ウコギの仲間ですからきっと山菜として利用できそうですが、これを口にしたという人を聞きません。新芽の頃には人はあまり登ってこないということか、著しい棘のせいで試みる人がいないのでしょうか・・。

ハリブキ 葉

2012年12月17日 | 自然観察日記
棘は葉の表面にも裏面にもあります。私はこの種の腊葉(さくよう)標本を作ったことがありませんが、押し葉にするときはこの棘がかなり曲者のようです。

イワヒゲ

2012年12月16日 | 自然観察日記
登りの岩場に作られていた登山道が崩れていて巻道になっていました。その岩場をへつりながら進むとジムカデの小さな群落を見つけました。高山帯の砂礫地などではよく見かけるツツジ科の低木です。海抜が2000mに満たない場所だと思いますが、足場が悪いので気を付けながらカメラを向け証拠の写真を撮りました。花は終わっていてわずかに若い実がみられる程度でしたが、かなりの傾斜であるために細長い紐のような枝(小さな葉がびっしりとついている)が何本も垂れている状態です。あまり安定しているような場所ではないために早晩この斜面も全部崩れ落ちてしまうのではないかと思います。貴重なジムカデの群落は風前のともしびという感じです。ここまで成長するには何年かかったことか、それを思うと少々残念ですね。しかし、それも自然のなかの日常。そういう環境に適応して生き延びてきた種だと考えて、きっとこの近くのどこかに次の世代を作っているのでしょう。

注)私の思い違いで「ジムカデ」として記載していました。木曽芳樹様からのご指摘により誤りを訂正します。ありがとうございました。(h25-09-10)