MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

ルノワール 覚書その2

2010-02-13 00:37:25 | 美術

 東京六本木にある国立新美術館で催されている「ルノワール - 伝統と革新」展

を観に行ってもう一つ気が付いたことがある。上の作品は1910年頃に描かれた

「泉(The Source)」である。

 そして1914年にルノワールはほぼ同じ作品である「泉による女(Woman by Spring)」を

描いているのだが、「泉」と比較すると明らかに色彩のトーンが暗くて迫力を欠いている。

その後はルノワールの作品にあった、背景から浮かび上がってくるような人物の造形力が

無くなってしまい、人物が背景と混ざり合ったままで印象派としての作品の良さが失われて

しまったように思える。勿論、美術館としてはルノワールの作風が円熟したと解説して

いたが、エメラルドグリーンを使わなくなったのも面倒くさくなったからとしか思えなかった。


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『特集:70年代の青春:鬱屈と混沌と』 100点

2010-02-13 00:12:20 | goo映画レビュー

特集:70年代の青春:鬱屈と混沌と

-年/-

ネタバレ

‘ロマン’の渇望

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 『十六歳の戦争』(1974年、1976年公開)の本来の制作意図は昭和二十年八月七日の大空襲によって、二千四百余名の犠牲者を出した愛知県の豊川海軍工廠壊滅の悲劇を、戦後二十八年目の慰霊祭を背景に、若い二人の男女を通して描くはずだったが、実際に出来上がった作品は監督に実験映画で有名だった松本俊夫を起用したためか意図がずれてしまっているように見える。
 ヒッチハイクで放浪していた有永甚は偶然無理心中した男女の遺体の現場に遭遇して、そこであずなという名前の16歳の高校生に出会い、しばらくの間彼女の家に厄介になる。彼女の父親の康三郎は大きな工場を経営しており、彼女の母親の保子はかつての挺身隊の一員だった。そしてもう一人戦争が原因で精神を病んでいる彼女の叔父の岡治が一緒に住んでいるが、彼は実は保子の前夫だった。有永甚は実は生き別れた母親を探しており、自分の母親は保子ではないのかと推測していたのだが、保子によると有永甚の母親は大空襲の時に亡くなった保子の友人ということだった。
 ここまできちんと設定されて普通に撮られているならばアメリカ軍の爆撃で命を奪われた軍需工場の勤労女子生徒たちの慰霊のための作品になっているはずなのであるが、監督が松本俊夫のためなのか、主演が秋吉久美子のためなのか、物語は慰霊には向かわない。あずなは何かと不満を口にして、ついには自分の部屋でガス自殺まで試みようとするのである。おそらくあずなの不満はお金持ちの家に生まれて何不自由なく暮らせているために、戦争時の女子生徒たちの‘お国のための勤労奉仕’という、あるいは有永甚のように親を探したりという‘ロマン’が持てないということである。そもそもあずなと有永甚が出会った場所も男女の無理心中という‘ロマン’の現場だった。
 ラストシーンであずなは有永甚と別れる時、決して後ろを振り向かないようにと有永甚に約束させる。有永甚はあずなと指切りをして歩き出すのであるが、結局途中で後ろを振り向いてしまう。しかしそこには誰もいなかった。まるでそれまでの話が全て夢物語だったかのように。
 あずなの不満は言うまでもなく‘贅沢病’の類のものではあるが、ただ‘贅沢病’として放っておけない理由は、しばしばそれは暴発することがあるからだ。たとえば藤田敏八監督の『赤い鳥逃げた?』(1973年)において桃井かおりが演じている自由奔放に振る舞ってワルを気取っているマコも実は病院の経営者で金持ちの娘の石黒京子であり、彼女も恋人の南部卓郎(22歳)と彼の兄貴分である坂東宏(29歳)と共に暇を持て余している。暇を持て余しているというよりも、当時の反体制運動が終焉した後に、どのようにすれば人生に活気を取り戻せるのか分からないのである。その上坂東宏は性的不能者である。チンピラに殴られたり警察に捕まったりのグダグダの日常が描かれた後に3人が生き生きとしだしたのは皮肉にもラストの警察とのカーチェイスである。多くの野次馬たちの中で3人は警察と銃撃戦を始めて、最後は3人の乗った車が爆発して終わる。
 このような若者たちの‘ロマン’の渇望は70年代の若者特有のものではない。秋葉原通り魔事件が起こったのは2008年6月なのだから。


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