東京六本木にある国立新美術館で催されている「ルノワール - 伝統と革新」展
を観に行ってもう一つ気が付いたことがある。上の作品は1910年頃に描かれた
「泉(The Source)」である。
そして1914年にルノワールはほぼ同じ作品である「泉による女(Woman by Spring)」を
描いているのだが、「泉」と比較すると明らかに色彩のトーンが暗くて迫力を欠いている。
その後はルノワールの作品にあった、背景から浮かび上がってくるような人物の造形力が
無くなってしまい、人物が背景と混ざり合ったままで印象派としての作品の良さが失われて
しまったように思える。勿論、美術館としてはルノワールの作風が円熟したと解説して
いたが、エメラルドグリーンを使わなくなったのも面倒くさくなったからとしか思えなかった。