MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『マイレージ、マイライフ』 90点

2010-03-29 23:29:57 | goo映画レビュー

マイレージ、マイライフ

2009年/アメリカ

ネタバレ

装われた人間嫌い

総合★★★★☆ 90

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 「いつも人に囲まれていながら、人とつながっていないライアン・ビンガム。しがらみという煩わしい‘荷物’を持つこともなく、夢の目標1000万マイル達成だけが彼の存在証明。しかし、‘心のマイル’は限りなくゼロに近かった」。この作品のチラシに書かれている文章を写してみたのだが、本当にこんな話なのだろうか? 主人公のライアン・ビンガムの仕事は企業のリストラ対象者に企業の代わりに解雇を言い渡す人員削減者であるが、人とのかかわり合いが煩わしいと思っている人間が他人の人生のターニングポイントにかかわるような仕事を選ぶだろうか? 念のために確認しておきたいが解雇するのは企業であって、ライアンではない。彼は‘しがらみ’から切られてしまった人たちに対して‘同じ立場’の人間として相手の人生に深入りしてアドバイスを与えているのである。新入社員のナタリー・キーナーがネット上で解雇通告を行うという合理化を提案した時にライアンが反対した理由は自身がリストラの対象になるからではなく、直に面接をして相手の身になって解雇された後のことを一緒に考える必要があると考えているからである。実際解雇が原因で自殺してしまった女性はナタリーが解雇通告した相手だった。アレックス・ゴーランにわざわざ会いに行ったライアンがショックを受けた原因はアレックスに夫や子供がいたこと以上に、同志のように感じていたアレックスがいつもの颯爽とした雰囲気を失って所帯じみていたことだったように思う。ライアンは決して人とのかかわり合いを煩わしいと思っているわけではない理由は、結婚式当日にマリッジブルーを患ってしまった妹の結婚相手に対して上手く結婚を促すことに成功するところにも表れている。ライアンの妹と彼の夫は新婚旅行に行く費用が捻出できないために、2人が写ったパネルと一緒に観光地で写真を撮ってもらって旅行をしたつもりになっているが、ライアンは実際に1000万マイルかけて様々な問題を抱えて人生の岐路に立たされている人々の面倒を見ている。どちらの立場がより人とのつながりを大切に思っているのか改めて言うまでもない。
 はっきり言ってしまうならば、ライアン・ビンガムはあえて人とのしがらみを断って自身を自由に動けるようにすることで、困っている人たちの役に立とうとしているのである。『スラムドッグ$ミリオネア』(ダニー・ボイル監督)や『時をかける少女』(細田守監督)でも見られるように、相手に優しくするためには、新たなしがらみが生まれてがんじがらめにならないようにその優しさが相手にばれないようにしなければならない(ナタリーにはライアンが会社に紹介状を書いたことがばれてしまっていたが)。この矛盾を生きることが‘粋(いき)’ということであり、そのような信念を持ったライアンの生き様がブレる訳がないのである。
 この作品のラストで流れる Kevin Renick の「Up in the Air」も監督に送られてきたデモテープをそのまま使っていた、‘しがらみ’のない曲であるが故に胸を打つ。


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残念な父

2010-03-29 17:29:56 | Weblog

亀父除名も JBCどう喝に協会厳罰検討(日刊スポーツ) - goo ニュース

千原せいじが“残念な兄”であるならば、亀田史郎は間違いなく“残念な父”である。

興毅の王座陥落後、この父親は「興毅のセコンドにつくためにずっと我慢してきた。

でもこのままでは引き下がられへん」と厳罰覚悟で語ったらしいのだが、どれだけ

我慢しようとも他人の知ったことではないことをこの父親はずっと我慢してきたにも

かかわらず未だに理解できていないのである。それに亀田興穀は試合に負けたら

引退すると本人のみならず父親も公言していたはずである。だから私の想像では

どうせ息子は引退することに決まってしまったから、父親も除名されても構わない

ということで事務局長を恫喝したのであろう。つくづく“残念な父”である。


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『人間失格』 0点

2010-03-29 01:01:05 | goo映画レビュー

人間失格

2010年/日本

ネタバレ

監督失格

総合☆☆☆☆☆ 0

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 映画評論家のおすぎ氏が余りの出来の悪さに試写であるにもかかわらず最後まで観ることができずに途中退席してしまったという曰く付きの作品だと聞いて、太宰治の代表作である『人間失格』を原作としている以上、どのように下手に演出してみたところでそんなに酷いものになるものなのかと確かめようという意図で観に行ったのであるが、これは確かに角川春樹監督の『笑う警官』に引けを取らないくらいに出来が悪く、まるでこの作品の企画/製作総指揮の角川歴彦氏が兄に負けないように‘真逆’に頑張ってしまったのかと思うほどである。ラストで主要人物たちが集まるところまで似させていた。
 結局主人公の大庭葉蔵は何に対して苦悩しているのか最後まで分からない。ゴッホやモディリアーニなどの印象派の画家になれないことを思い煩っているのかもしれないが、それにしては絵に対する拘りが見えない。‘色恋沙汰’に苦悩しているように見せたいようなのだが、そのようなシーンは全く出てこない。そもそも葉蔵だけではなく登場する男性は誰も女性に興味を示さない。
 例えば堀木正雄の父親が息子の部屋まで来て電報を渡すシーンがある。わざわざ父親が息子に電報を渡す理由は息子の部屋に美人編集者の静子が訪ねて来ていて、彼女を見たいからなのであるが、父親は全く静子を見ようとはしない。ここは明らかに演出ミスである。
 2階にある葉蔵の部屋に堀木正雄が来ていた時に、1階で葉蔵の妻の良子が見知らぬ男性と姦淫している。何故わざわざ葉蔵がいる時に理由もなく姦淫してしまっているのか訳が分からない。それだけではない。行為が終わってその男がズボンを上げている時に、横たわっている良子の衣服の乱れは既になくなっている。これでは姦淫ではなくてただ男が自慰をしていたようにしか見えない。ここも演出ミスである。
 つまりこの作品は太宰治の『人間失格』ではなくて、生田斗真の『人間失格』なのである。女性ファンのためにアイドルが女性とからむことは固く禁じられている。それは体だけではなく、精神的なからみも禁じられているために、全ての登場人物に対して観客が感情移入できないように演出されている。しかし全くからまないわけにもいかないためなのか、寿や鉄など彼の母親のような女性、恋人の対象になりえないような女性とのからみは許されているようだった。
 幼少の頃に葉蔵が乗ることが好きだったというだけでは、繰り返し現れる馬車のシーンも何の意味もなさない。
 最後の文言通りに本気で太宰治の『人間失格』が読み継がれていくことを願っているのであるのならば、この作品を観て原作まで面白くないと誤解されないようにするために、この作品のDVD化は控えてもらいたいと切に願う。


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