デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-
2011年/ベルギー
史実の曖昧な忠実さについて
総合 70点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
そもそも主人公で原作者でもあるラティフ・ヤヒアの話の信憑性に多くの疑問が呈されているとしても、とりあえずフィクションと見倣せばいいのであろうし、ウダイ・フセインの非情さは噂では知っていても映像で見せられると嫌悪感をもよおす程に刺激的ではあるのだが、本作を通して、ウダイ・フセインの非情さがどこから生まれたのかという、私が知りたいと思っていたことははっきりとは示されず、ただ父親のサッダーム・フセインの女癖の悪さが原因で母親が精神を病んでしまったということが仄めかされるぐらいだった。
作品の前半まではウダイ・フセインとラティフ・ヤヒアの駆け引きがスリリングに展開していたのであるが、後半になってラティフがウダイの愛人であるサラブを連れてイラクから脱出する辺りから、ストーリー展開が雑になってくる。まずサラブがラティフとウダイのどちらの味方なのかがはっきりしない。サラブは自分には娘がいるとラティフに告白することから、人質として娘を捕られたサラブがウダイのスパイになった可能性はあるが、嫉妬心が人一倍強いウダイがラティフと愛人を一緒にしておくことは考えにくい。ラティフの父親が電話越しにラティフに対してウダイに屈しないように叫ぶシーンは感動的ではあるが、父親以外の家族がどのような状況に置かれているのかは描かれていない。ラストの暗殺未遂シーンも、張った伏線通りの予定調和で盛り上がりに欠ける。
ウダイがラティフを殺せない理由は、ウダイのナルシシズムが邪魔をして、‘自分自身’を殺せないためであろうが、結局、ラティフもウダイに止めを刺せなかった理由はよく分らない。そのような史実の忠実さが中途半端に感じるとしても、ドミニク・クーパーの熱演はそれなりに見る価値があると思う。
石原知事「バカみたいな作品ばかりだよ」とも(読売新聞) - goo ニュース
芥川龍之介賞を受賞した田中慎弥の、「受賞を断って気の小さい選考委員が倒れたり
したら、都政が混乱する。都知事閣下と都民のためにもらっといてやる」という発言を受けた
石原慎太郎の、「いいじゃない。皮肉っぽくて。俺はむしろ彼の作品は評価したんだけどね」
という発言は、これもまた的を外したものだと思う。石原は田中の発言を皮肉として評価して
おきながら、“むしろ”という副詞を挟んで、「田中の作品を評価したのに」という“怨み節”
にしてしまっている。石原は田中の作品を「俺はむしろ彼の作品は評価したんだけどね」と
語っているが、石原が田中の作品に付けた評価は実は“△”であり、評価したとは言えない。
芥川龍之介賞を巡る、お互いになかなか正確に的を射ない発言は色々と考えさせられる。