原題:『おしん』
監督:冨樫森
脚本:山田耕大
撮影:鈴木周一郎
出演:濱田ここね/上戸彩/稲垣吾郎/岸本加世子/小林綾子/満島真之介/泉ピン子
2013年/日本
50銭銀貨を巡って
今更『おしん』を観る意義などあるのだろうかと考えながら呆気なく涙腺が緩んでしまったのであるが、それはストーリーの鉄板さもさることながら主役の谷村しんを演じた濱田ここねの侮れない存在感はかなり大きいと思う。
もはや説明は不要なほどに知られた物語に敢えて一つ疑問を呈するならば、祖母が危篤であることを知らされ、帰郷するように促されながらおしんが八代加代に着物を貸すと言われるまでためらっていた理由である。それは奉公人として私事で仕事を休むわけにはいかないという義務感以上に、おしんが最初に奉公に出る際に、祖母から贈られた50銭銀貨を巡って、奉公先のつねに泥棒呼ばわりされたことにわだかまりがあったように思う。それはもちろん祖母に非は全く無いのではあるが、その直後に奉公先から飛び出してしまい、雪の中で凍死しかけていたおしんを救い、読み書きまで教えてくれた俊作が目の前で銃殺されたことによるトラウマの酷さも伺えるのである。