原題:『Carol』
監督:トッド・ヘインズ
脚本:フィリス・ナジー
撮影:エドワード・ラックマン
出演:ケイト・ブランシェット/ルーニー・マーラ/サラ・ポールソン/カイル・チャンドラー
2015年/アメリカ・イギリス
同性愛をも超える「肌合い」について
舞台は1952年のアメリカのニューヨークで、主人公のキャロル・エアードはデパートのおもちゃ売り場の店員のテレーズ・ベリベットと恋仲になってしまうのであるが、テレーズにとっては「初恋」であっても、キャロルは既婚者でリンディーという幼い娘がいるのみならず、5、6年前から幼なじみのアビー・ゲルハルトと同性愛の関係もあり、それが原因で離婚調停中だった。
それでもキャロルとテレーズは年末に2人で旅行を企て、それを知った夫のハージ・エアードは私立探偵を雇い、2人の密会現場の証拠となる録音記録を録られてしまう。キャロルとテレーズは一度は別れてしまうのだが、キャロルの誘い水に対してテレーズの方から関係の修復が試みられる。それは同性愛という欲望によるよりも、例えば、テレーズの友人の一人が『サンセット大通り(Sunset Boulevard)』(ビリー・ワイルダー監督 1950年)をテレビで何度も観ながらセリフまで記録しているのであるが、そのような「既成の物語」から抜け出て「同性愛」という当時では未踏の人生を歩みたいというテレーズの強い思いがあったように思う。あるいは肉体の快楽というよりも、意図したものかどうかは分からないが、キャロルが「忘れて」いった手袋をテレーズがキャロルの目論見通りに送り返したり、キャロルが隠し持っていた拳銃で私立探偵を撃とうとした際に弾が出なかったことから、事前にテレーズが弾を抜いていたと推察でき、キャロルを人殺しにしなかった点など、2人は本当に「肌が合う」のだと思うのである。