原題:『セーラー服と機関銃 -卒業-』
監督:前田弘二
脚本:高田亮
撮影:相馬大輔/川島周
出演:橋本環奈/長谷川博己/安藤政信/大野拓朗/宇野祥平/鶴見辰吾/伊武雅刀/武田鉄矢
2016年/日本
ヒロインの唇の赤さについて
かつて目高組の4代目組長だった星泉は、いまではかつての組員と共に「メダカカフェ」を営み平穏な日常を送っていたが、モデルの勧誘から劣悪な仕事を強いる業者の存在を知り、クッキーのような危険ドラッグを売る輩まで現れ、泉はかつて敵対していた浜口組を疑ったのだが、実は堀内組という巨大組織が警察や市長までも取り込んだ策略であることを知る。
泉は、軍門に降った浜口組と一緒にいた堀内組の幹部の安井と薄暗いバーで対峙するのであるが、小さな街をターゲットにした理由を「街の若者たちが進学や就職のために街を出て行ってしまうから、残った高齢者たちのお世話を自分たちが代わってしてやるのだ」と語る安井の言葉は「正論」で、だからと言ってその「正論」に隠された陰謀を見逃す訳にはいかない泉は月永や土井たちと堀内組の事務所に乗り込んで「おまえの言うことは気にいらない」と言いながら機関銃をぶっ放す。「正論」を否定するためには敢えてヤクザな稼業に身を落とさなければならないのである。だから高校卒業後に地元に残り、街の祭りにも参加して快楽に浸っている泉の唇の赤さが口紅によるものではなく、月永の血によるものであることを忘れてはならないであろう。
ほぼハンディーカメラによる映像だが、違和感なく観られる理由は、ハンディーカメラの性能が格段にアップしているからで、 長回しにこだわっていた相米慎二監督が観たら羨むのではないだろうか。