MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『夏をゆく人々』

2016-03-16 00:42:15 | goo映画レビュー

原題:『Le Meraviglie』 英題:『The Wonders』
監督:アリーチェ・ロルヴァケル
脚本:アリーチェ・ロルヴァケル
撮影:エレーヌ・ルバル
出演:マリア・アレクサンドラ・ルング/サム・ルーウィック/アルバ・ロルヴァケル/モニカ・ベルッチ
2014年/イタリア・スイス・ドイツ

昔懐かしき「家族の肖像」について

 主人公のジェルソミーナの父親のヴォルフガング一家はイタリアのトスカーナ地方の田舎で養蜂業で生業を立てているのであるが、早朝の猟師たちの銃声による蜂への悪影響に悩まされており、ベッドを外に出して寝るような生活を送ったりしている。
 最小の用具だけで養蜂業を営んでいたが、やがて役所から衛生基準を守るために養蜂場を改修するように指導を受けたり、ヴォルフガングの兄が農場で使用し始めた農薬で蜂が大量に死んだりして、だんだんと養蜂業者に逆風が吹き始める。
 そんな時にジェルソミーナが申し込んでいた『ふしぎな国』という、地域で一番の特産品を決めるコンテストに出場して宣伝しようと試みるのであるが、兄に優勝をさらわれてしまい賞金を貰えなかったのみならず、更生させるために預かっていたマルティンが逃げ出して行方不明になってしまうのである。
 ジェルソミーナは一人でコンテストが開催されていた島に戻り、マルティンを見つけだし一夜を共に過ごした後、彼女を心配するあまり外で眠っていた家族のもとに明け方一人で戻って来る。やがてカメラがパンすると一家はいなくなっており、彼らが暮らしていた家は空っぽになっている。
 じわじわと追い詰められていったヴォルフガング一家は一体どうなったのかと勘案するならば、そもそも本作の冒頭で描かれていたものは3つの軍の車両のヘッドライトで、軍人の一人が「こんなところに家がある」と驚いていたのだから、本作で描かれていた「幽霊譚」は第二次世界大戦時にムッソリーニ政権がトスカーナ地方を支配する前の、のどかに暮らしていた昔懐かしき「家族の肖像」だったのではなかっただろうか。


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