MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『傷だらけの天使 草原に黒い十字架を』

2017-03-01 00:31:44 | goo映画レビュー

原題:『傷だらけの天使 草原に黒い十字架を』
監督:神代辰巳
脚本:山本邦彦
撮影:田端金重
出演:萩原健一/水谷豊/岸田今日子/岸田森/ホーン・ユキ/高木均/大村千吉/苅谷俊介
1974年/日本

偽物で垣間見る儚い「ママ」について

 今回、主人公の小暮修が辰巳五郎から請け負った仕事は五十島美術館で公開される時価2億円の作品『六月のマドンナ』が国際的な美術品窃盗グループから守るために偽物にすり替えるというものだった。
 因みに『六月のマドンナ』(写真左)の元ネタはジャン=バティスト・カミーユ・コローの『真珠の女(Woman with a Pearl)』(写真右)である。元ネタというよりもそのままなのだが。

 ところが乾亨を事前に警備員として配置していたにも関わらず、ナツメと呼ばれる謎の少女の出現で修たちの計画は狂ってしまう。自分の母親に似ているという理由で、ナツメが修たちよりも前に絵画を盗んだのであり、ナツメが修を助けた理由は修が父親に似ていたからである。
 ナツメの母親はナツメに遺書を残して自殺していたのだが、ナツメは母親は海外に行っていると信じており、ケンジという男の子とバラック小屋で暮らしていた。
 窃盗未遂と少女誘拐で全国に指名手配されてしまった修はナツメと亨と『六月のマドンナ』と共に、逃亡を図り、孤児たちを集めてコミューンを作ろうとするのであるが、修が帰ってきた時には美術品窃盗グループに見つかったナツメは殺されていた。

 このシーンも不可解で、何故ナツメと共に『六月のマドンナ』も吊るされているのか思い返してみるならば、事件が起こった後に亨が警備員の任務に就いていた際に、再び『六月のマドンナ』のそばに紙飛行機を見つけているのである。

 この時亨は気がついていないのだが、作品のそばに立っても警報機が鳴らなかったということは警報機は機能していなかったということで、要するにナツメは再びどちらも自分にとっては同じということで本物と偽物をすり替えていたのであり、だから美術品窃盗グループは偽物の『六月のマドンナ』を残して去っていったのである。
 亨がそのことに気がついたのは、「墓」を掘っている最中である。絵画にしても家族にしても、修も亨も端から「偽物」に対して必死になっていたのである。「墓穴を掘る」とはまさにこのことではないだろうか。
 神代辰巳監督は本当に楽曲の使い方が絶妙だと思う。萩原健一が演じる修が口ずさむザ・テンプターズの『おかあさん』にしたところで、メインヴォーカルは萩原ではなくリードギターの松崎由治が歌っており、その「偽物」ぶりは徹底しているのである。

ザ・テンプターズさん『おかあさん』の歌詞
オカアサン
words by マツオカヒロコマツザキ
music by マツザキ
Performed by ザテンプターズ


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