MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ラビング 愛という名前のふたり』

2017-03-18 00:04:02 | goo映画レビュー

原題:『Loving』
監督:ジェフ・ニコルズ
脚本:ジェフ・ニコルズ
撮影:アダム・ストーン
出演:ジョエル・エドガートン/ルース・ネッガ/マートン・チョーカシュ/マイケル・シャノン
2016年/イギリス・アメリカ

一つずつレンガを積み上げることの「忍耐力」について

 主人公のリチャード・ラビングが恋人のミルドレッドの姉のガーネットに、バージニア州では異人種間の結婚は法律で禁止されていたことを知っていながら妹と結婚したことを非難するシーンがある。もちろんリチャードは知った上でミルドレッドと結婚したのであるが、冒頭で長い間逡巡しながらミルドレッドが妊娠したことをリチャードに告げるシーンを観てしまった私たち観客はリチャードの葛藤を察して余りあるのではある。それでも白人相手にチキンゲームをしている最中ににミルドレッドとキスしたりしているのを見ると、リチャードの脇の甘さも目立つのだが、父親が黒人に雇われており幼少の頃から黒人たちと公私共に過ごしていたためにあまり深く考えていなかったのかもしれない。
 1958年に25年間の州外追放を裁判所から言い渡された後、ワシントンD.C.に住むラビング夫妻のテレビには1962年2月の「マーキュリー計画」と、1963年8月の「ワシントン大行進」が映り、『メイベリー110番(The Andy Griffith Show)』を見ているのであるが、夫妻が見ていた「ピクルス物語(The Pickle Story)」は1961年12月が初めての放送で、「結婚することの罪(The Crime of Being Married)」というタイトルでその様子の写真が掲載されたタイム誌は1966年3月の発売だから再放送を見ていたのだと思う。テレビ番組で時間経過を表そうとしたのだろうが、事実はなかなか複雑なのである。
 ずっと建設工事に携わり、黙々とレンガを積み上げていたリチャードがようやくラストで結婚前に買っていた土地に我が家を造るためにレンガを積み上げる時の感慨深さは計り知れない。


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