ティツィアーノ・ヴェチェッリオが描いた『ウルビーノのヴィーナス(Venus of Urbino)』(1538年)を
見て感動したイタリアの枢機卿のアレッサンドロ・ファルネーゼ(Alessandro Farnese)が
ティツィアーノに注文した作品が『ダナエ(Danae)』(1544-46年頃)なのである。
官能性が増したことを理解するにはオウィディウスの詩によるギリシア神話を理解していないと
分かり難い。「アルゴス王アクリシオスが男児を授かるかどうかの神託を受けたところ、
王自身は男児に恵まれないが娘のダナエが息子を産み、そしてその息子にアクリシオスは
殺されるという予言が下った。この神託を恐れたアクリシオスは男性が近づかないように
ダナエを地下室に幽閉する」まではウィキペディア通りである。ダナエもその神託を知っては
いたのだが、全知全能の主神であるゼウスが黄金の雨に姿を変えたことで「ディフェンス」を
下げてしまったダナエは誘惑させられ妊娠させられてペルセウスを産んだのである。
だからエロス(=キューピッド)がダナエのそばにいるということは姦淫があったという
証しで官能性を増しているのである。