原題:『汚れた英雄』
監督:角川春樹
脚本:丸山昇一
撮影:仙元誠三
出演:草刈正雄/レベッカ・ホールデン/木の実ナナ/浅野温子/勝野洋/奥田瑛二/伊武雅刀
1982年/日本
「汚れた英雄」が汚れていない原因について
『ビッグ・ガン』(ドゥッチョ・テッサリ監督 1973年)がアラン・ドロンの「アイドル映画」だとするならば、本作は草刈正雄の「アイドル映画」と言った感じで、タイトルとは裏腹に全く「汚れ」がない。
驚くべきは最後のオチで、全日本選手権で総合優勝を果たした主人公の北野晶夫は翌年、世界選手権ロードレースに挑戦する。最初は良い成績を出せなかったが第6戦のオランダTTで優勝し、次の7月2日の午後3時11分にスパ・フランコルシャンサーキットで行われたベルギーGPで北野は死亡してしまうのであるが、この肝心なシーンは全て字幕で観客に伝えられるのである。実話ならまだしもフィクションでは意味をなさないと思う。
角川春樹は本作が初監督作品ということもあって「置き」にいった感が半端なく、グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の『ユディトI(Judith and the Head of Holofernes)』(1901年)などが使われており「構図」にはそれなりに拘ったようではあるが、ストーリーは無いも同然でモーターレース好きか草刈正雄の大ファン以外には全く共感されないであろう。