MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『明け方の若者たち』

2022-01-03 00:59:02 | goo映画レビュー

原題:『明け方の若者たち』
監督:松本花奈
脚本:小寺和久
撮影:月永雄太
出演:北村匠海/黒島結菜/井上祐貴/楽駆/山中崇/佐津川愛美/高橋ひとみ/濱田マリ
2021年/日本

逆の意味での「問題作」について

 粗筋を簡単に書いてみるならば、2013年の一流企業への就職が決まった優秀な大学生たちが1年前にお祝いとして明大前の居酒屋で飲み会を開いており、主人公の「僕」も参加しているのだが、その大学生たちの中に浮かない顔をした「彼女」を見つける。「彼女」は帰り支度をして店を出ようとするのだが、忘れ物をした感じで、たまたまそばにいた「僕」が訊ねると「彼女」は携帯電話を失くしたと言い、自分の電話にかけて欲しいと「僕」に頼む。「僕」が彼女の電話にかけてみると、何と彼女の電話は彼女のコートのポケットに入っていたのだが、それは後に「彼女」の「僕」に対するアプローチだったことが分かるのだが、交際するようになるのである。
 ストーリーは一年後に社会人になった「僕」が「こんなハズじゃなかった人生」を目の当たりにするという流れで、それならば一年前の飲み会において「僕」はもっとはしゃいでなければならないと思うのだが、「僕」が既に斜に構えている感じで分かりにくいし、「彼女」が既婚者であることを知って付き合うのだから、「フラれた」ことを嘆いているのも疑問が残る。「こんなハズ」になることは分かり切っていたからである。
 気になるシーンを指摘しておきたい。「僕」が就職した印刷会社で大量の印刷ミスが起きてしまい、「僕」の配属先の総務部のみならず社員総出でミスした箇所に正しく印刷されたシールを貼っていくのであるが、その雑誌が「GAIA」というものである。認識に間違いがなければ「GAIA」とは自己啓発セミナーなどを主催している怪しい団体だと思うのだが、どうしてそのような団体の雑誌がわざわざ選ばれてストーリーに組み込まれているのか理解に苦しむ。個人的には似非科学だとは思う「サブリミナル効果」でも狙っているのかもしれないが、本作の主人公たちが「迷える若者たち」であるが故に、危うい気さえするのである。
 ラストのクジラ公園で「僕」と「彼女」が数年前に飲んだ缶ビールが椅子の上にそのまま残っており、「この偶然は偶然ではなく必然なんだよ感」にもオカルト臭が漂い、逆の意味でかなりの問題作だとは思う。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-112407


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