MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「One Of These Days」 Barry Manilow 和訳

2022-03-19 12:38:34 | 洋楽歌詞和訳

Barry Manilow - One Of These Days (Live on AM NY, 1974)

 バリー・マニロウの「ワン・オブ・ディーズ・デイズ」は1973年にリリースした

デビューアルバム『バリー・マニロウ』に収録されている。以下、和訳。

「One Of These Days」 Barry Manilow 日本語訳

そんなある日
何の特別なこともないある日
君は僕の名前を呼ぶだろうが
僕はそこにはいないよ
そんな日々の後には
多く過ぎ去って行った日々の後には
君には光が見えるだろうが
僕はそこにはいないよ

その日
どういうわけか僕は避けようとする力を見つけるんだ
僕は後に引かないよ
僕はまた自分自身を騙すつもりはないんだ
友達よ

そんなある日
突然君は思い出そうとし始めるだろうが
僕にはどうでもいいんだ
だって僕はそこにはいないのだから

その日
どういうわけか僕は避けようとする力を見つけると断言するよ
僕は後に引かないよ
僕はまた自分自身を騙すつもりはないんだ
友達よ

それが僕が言うこと
それが僕が自分自身に言い聞かせること
僕は後には引かないと
だから僕はそれを試してみて
僕がそこにいないことを君は知ることになるんだ
僕はそこにはいないんだ
そんなある日


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「Idiot Wind」 Bob Dylan 和訳

2022-03-19 00:55:16 | 洋楽歌詞和訳

 ボブ・ディランの歌詞集の新訳が『The Lyrics』(佐藤良明訳 岩波書店)として二冊同時の刊行されたのは2020年の3月らしい。ここでは改めて「Idiot Wind」を検証してみたいと思う。最初に佐藤の訳を引用してみる。

「阿呆の風」

悪意をもって、マスコミにあることないこと垂れ流すやつ
誰であれやめてほしい、と言われてやめる相手じゃないが
俺がグレイって男を撃って、そいつの妻とイタリアへ飛び
彼女が遺産で得た百万ドルが、彼女が死んで転がり込んだと?
そんな幸運、自分で操作ができるのか

みんな俺を見ているはず、なのにどうして忘れてしまう?
根付いた思いとイメージと、ゆがんだ事実に支配される?
きみもだぜ、きのう俺に聞いただろ、今は何が流行なの?
まいったね、俺のこと、その程度にしか理解していない
なんてスイートなご婦人だ

阿呆の風、きみの口が動くたびに吹いてくる
裏道を南に向かって吹いていく
阿呆の風、きみの歯がカチカチいうたびに吹いてくる
愚かしいのはきみだぜ、ベイブ
そんな口して、よくぞ息が吸えるもんだ

占い師にみてもらった、雷にうたれる相があると言われた
平和な暮らしは何年も縁遠い、どんなものか忘れちまった
十字架に孤独の戦士、貨車の扉が煙を吐いてる
きみは知らなかったろう、ありえることとも思わなかった、で
 も最後に勝ったのはこの男
すべての戦闘に負けた後で、戦争自体に勝利した

路ばたで目が覚めてもなお夢の中、物事おかしな具合に進む
きみの栗毛の雌馬の幻(ヴィジョン)が、俺の頭を走り抜け、俺の目から
 星が出た
愛する人を何人も傷つけられ、おまけに嘘を塗り込まれた
きみなんか、いつか溝に落っこって、目の前に蠅がたかる
きみの鞍が血に染まる

阿呆の風、きみの墓場の花を吹き抜け
部屋のカーテンをなびかせる
阿呆の風、きみの歯がカチカチ鳴るたびに吹いてくる
愚かしいのはきみだぜ、ベイブ
たいしたもんだ、それで呼吸ができるなんて

重力で引き落とされ、運命に引きはがされた
檻の中でライオンは確かにきみに手なずけられたが、それだけ
 で俺の心(ハート)は変わらない
いまやすべてが逆さになって、どこにも進めなくなった
善いものが悪になり、悪いものが善になった ー 上から見れば
 それが見える
でもきみはいま底にいる

式の場で気がついた、堕ちたきみはすでに物が見えていない
きみの顔も思い出せない、口も変わり、目も俺の目を見ていない
聖職者は七日目に黒衣を着て、建物が燃える間、表情一つ変え
 ずにいた
俺は車のステップに片足かけ、糸杉の木のそばできみを待った、
 春の季節が
ゆっくり秋へとめぐる間

阿呆の風がおれの頭蓋を旋回する
コロンビア川のダムから首都まで吹き抜ける
阿呆の風、きみの歯が動くたびに吹いてくる
愚かしいのはきみだぜ、ベイブ
たいしたもんだ、それで呼吸ができるなんて

きみを感じることができない、きみの読んだ本にも触われない
部屋の前を這い進むたび、そんな自分に辟易していた
エクスタシーへのハイウェイを、線路を、道路を走った
星々の下にきみを追った、きみの思い出に駆られ
乱舞するきみの栄光に突き動かされ

裏切られるのはこれが最後だ、やっと俺は自由になる
俺ときみの境界線で吠えてる野獣に別れのキスをし
俺がどれほど苦しんで、どんな痛みを克服したか、きみには決
 して伝わるまい
俺も同じだ、きみの神々しさも、きみなりの愛も決してわかる
 まい
そのことがほんとうに無念だ

阿呆の風がふたりのコートのボタンの穴を吹き抜ける
過去に書いた手紙の中を吹き抜ける
阿呆の風がふたりの棚にたまったほこりを舞いあげる
愚かしいのは俺たちふたり
これで物が食べられるのが、不思議なくらいだ

 

 引き続き拙訳を以下に試みてみる。

「まぬけの風」

誰かが俺のために情報を集め
新聞や雑誌に次々とネタを流している
それが誰であろうと俺は止めて欲しいと思ってはいるが
それは俺がそう願うだけであって
俺はグレイという男を撃って
奴の妻をイタリアへ連れて行き
というのも彼女は百万ドルの遺産を得たからで
彼女が死んだ時には俺のものになったと奴らは言っているが
もしも俺が幸運ならば仕方がない話ではないか!

誰もがいつも俺を見ているのに
奴らは振る舞い方を覚えられない
奴らの心はたいそうな考えと固定観念と事実の曲解で溢れている
君でさえ、昨日最も重要なことを俺に訊かなければならなかったんだから
こんなに長い付き合いなのに俺は信じられなかった
君はあの魅惑的な女性よりも俺のことを知らなかったんだ

まぬけの息吹は君の口が動くたびに吹いてくる
田舎道に吹き込んで消えてなくなる
まぬけの息吹は君の歯が動くたびに吹いてくる
君はどうしようもないバカなんだ
君がまだ息の吐き方を知っていることが驚きだ

俺は占い師のもとに駆け込んだ
雷に撃たれるかもしれないから用心しろと言われた
俺は長い間喧騒の後の静けさというものを知らずにいたから
それがどういうものなのか思い出せずにいる
不正を働く孤立した戦士がいる
貨車のドアから煙が流れ出ている
君はそれを知らなかったし
そんなことが起こることも想像していなかった
局地的な戦闘に全敗した後
最後に彼は戦争に勝利したんだ

道端で目覚めた俺は
時々生じる物事のなり行きに関して空想に耽っている
君の栗毛の雌馬の幻影が俺の頭を貫通し
俺は目をくらまされている
君は俺が最も愛している者を多数傷つけ
嘘で真実を隠蔽する
いずれ君は溝に落っこちて
君の目の前では蠅が群がり
君が乗っていた鞍には血が滴る

まぬけの風は君の墓に供えられている花々を吹き抜け
君の部屋のカーテンを揺らす
まぬけの息吹は君の歯が動くたびに吹いてくる
君はどうしようもないバカなんだ
君がまだ息の吐き方を知っていることが驚きだ

重力が俺たちを弱らせて
運命が俺たちを引き離した
君は俺の檻の中でライオンを飼いならしたが
俺の決心を変えるほど十分ではなかった
今あらゆるものが少しづつ混乱してきて
実際に原動力は止まったままだ
善いものが悪いもので
悪いものが善いもの
君が頂上にたどり着けばそれが分かるだろうが
君はどん底だ

俺は式典で気がついた
君の不正なやり方がついに君を盲目にしてしまった
もう俺は君の顔を思い出せないし
君の口も変化し
君の目は俺の目を見ていない
聖職者は土曜日の安息日に黒衣を着て
建物が燃えているのに
無表情で座っていた
春がゆっくりと秋めいてきた頃
糸杉のそばで俺は車のそれぞれのステップに両足をかけて
君を待っていた

まぬけの風が俺の頭骨を旋回するように吹く
グランドクーリーダムから首都へ吹く
まぬけの息吹は君の歯が動くたびに吹いてくる
君はどうしようもないバカなんだ
君がまだ息の吐き方を知っていることが驚きだ

俺はもう君を感じることができない
君が読んでいた本に触れることさえできない
俺が君の部屋のそばを這って通るたびに
自分が自分以外の誰かであれば良かったのにとひしひし感じる
エクスタシーへ向かうならば
ハイウェイでも線路でも街道でもかまわない
俺は満天の星の下で君を追った
君の思い出と並外れた栄光に追い詰められたから

俺が裏切られるのは今度こそ最後で
ついに俺は自由になる
俺は俺と君を離す境界線上にいる遠吠えする野獣に
別れのキスをした
俺が被った苦痛や俺が克服する苦悩は
君には決してわからないし
俺も君に関する同様のことも
君の聖性も君なりの愛もわからない
それが俺をとても悲しくさせるんだ

まぬけの風が俺たちのコートのボタンの穴を吹き抜け
俺たちが書いた手紙の束の隙間を吹き抜ける
まぬけの風が俺たちの部屋の棚の上にある埃を舞いあげる
俺たちは二人ともバカなんだ
俺たちが自立できていることが驚きだ

 さらに片桐ユズル訳や中川五郎訳と比較しながら歌詞の解釈の違いを考察していこうと思っていたのだが、それ以前に佐藤は誤訳が多く(結果的に片桐や中川の訳は未読)、そこまでする意欲がなくなった。「Idiot Wind」がリリースされたのは1975年で、その時佐藤は24歳だったから、それから45年聴き続けてきたはずの歌の歌詞の翻訳がこの有様なのかと愕然としてしまったのである。以後、佐藤良明が手掛ける翻訳の仕事は信用しないことにした。「I won't get fooled again!」

Bob Dylan - Idiot Wind (Official Audio)


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