現在、六本木の国立新美術館で催されている『クリスチャン・ボルタンスキー(Christian Boltanski) Lifetime』大回顧展には驚かされた。まるで廟堂のようで全く生気が感じられなかった。撮影できた作品を示してみる。
(『幽霊の廊下(La Couloir des Fantôme)』2019年)
白いカーテンに映されるイメージは骸骨である。
(『ぼた山(Terril)』2015年)
積み上げられているのは黒い服である。
(『スピリット(Les Esprts)』2013年)
100枚を超えるヴェールにはさまよえる霊魂のように様々なイメージが印刷されている。
(『アニミタス(白)(Animitas Blanc)』2017年)
10時間におよぶ映像にはカナダ北部の自然が映っているらしい。
(『白いモニュメント、来世(Monuments Blancs + After)』2019年)
「来世」の中に入っても明るい「未来」は見えない。
ボルタンスキーの作品はほぼ布や、そこに映る影や、新聞紙から切り取った顔写真などの紙で、まるで「ゴミ」から何とかして生気を再生しようという試みに見える。
『咳をする男(L'Homme qui tousse)』(1969年)は咳をしながら血を吐いている男が映った2分28秒のビデオなのだが、1970年に大阪でテレビ放送されたらしい。今ならば放送事故である。