昭和末期の西条駅前には小規模の寂れた商店街があった。しかし、広島市内からやって来た若者の欲求を満たすような店があろうはずもなかった。マニアックな書籍やCDは必ず取り寄せになった。自転車をこいで遥か遠くの駅まで出るのも馬鹿馬鹿しい。だから時間はかかっても大学生協を利用して物を買い出した。
あれから20年の月日が流れ、駅前商店街は驚くほど様変わりした。個人経営の店の多くが姿を消し「今流行りの居酒屋」が軒を並べて小奇麗にはなっている。食料品関係で残っている昔からの店は「八百屋」と「ショージ」くらいではないだろうか。

西条駅から鏡山公園方面に延びた直線道路は「ブールバール」と呼ばれ、両脇には高層の建物がたくさん出来ている。大学移転が完了して東広島市西条は確かに発展したが、自然豊かな時代に学生生活を送った者としては、俗悪な面が気になり複雑な心境だ。文化的な街に成長するには本当に長い時間がかかる。

