若い頃はウイスキーが苦手で2次会や3次会では鼻をつまんで水割りを飲んだものである。私がウイスキーを嗜むようになったのは30代に突入する前後だった。きっかけはハイボール(ウイスキーのソーダ割り)である。関東のキレのある(甘くない)チューハイと風味が似ていることもあって夏場にはよく飲んだ。しかし、トリスハイボールの美味しさを知ったのはつい最近の話だ。
ひょんなことで地元の歓楽街に近いバーに入り老マスターからトリハイを勧められた。若干のほろ苦さは私の好みだった。マスターは県東部の有名な造船所がある島の出であった。一般人では知りえない裏社会の情報に詳しかった。島の対岸にあった遊廓に通っていた話や現H市長のルーツ、極左封じ込め活動に従事した経歴など聞いていてまったく飽きがこなかった。
残念なことに聞き取り調査は長続きしなかった。出会ってから1年もしない内にマスターは不治の病で呆気なく旅立った。彼を観察して私は「香ばしい同族の自慢ばかりする連中とは距離を置く」ということを学んだ。もうじきマスターの三回忌が来る。その日にはトリハイを自ら作ろうと思う。
ひょんなことで地元の歓楽街に近いバーに入り老マスターからトリハイを勧められた。若干のほろ苦さは私の好みだった。マスターは県東部の有名な造船所がある島の出であった。一般人では知りえない裏社会の情報に詳しかった。島の対岸にあった遊廓に通っていた話や現H市長のルーツ、極左封じ込め活動に従事した経歴など聞いていてまったく飽きがこなかった。
残念なことに聞き取り調査は長続きしなかった。出会ってから1年もしない内にマスターは不治の病で呆気なく旅立った。彼を観察して私は「香ばしい同族の自慢ばかりする連中とは距離を置く」ということを学んだ。もうじきマスターの三回忌が来る。その日にはトリハイを自ら作ろうと思う。
