青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

満開の 川根両国 花冷えて。 

2022年04月16日 17時00分00秒 | 大井川鐵道

(花曇りの日に@川根両国駅)

今年春は、勝沼と川根の桜を撮ろうと決めておりました。桜の時期は、あっちで咲いたこっちで咲いたと開花報告が一斉にやって来るので、事前に「ここの桜を撮る!」としっかり決めておかないと、アタフタしているだけで終わってしまいますのでね。川根界隈も桜の名所は色々ありますが、特に撮りたかったのは井川線の川根両国の桜。千頭の隣、井川線の車両の前線基地となっているこの駅には、駅を取り囲むようにたくさんの桜の木が植えられていて、満開の時期は見事な花の駅になるのです。情報は拾っていたので「この週末だろうな」というのは読んではいましたが、目論見通りに満開の状態で迎えてくれました。

車庫の前で出陣を前に憩う井川線のDDたち。ボリューム、花付き、咲き具合とも申し分ない両国の桜。惜しむらくは天気、この時期らしい花曇り。全てが上手く行くとは限らない。自分のヤル気、お天気、会社休み、咲く時期、フトコロ、家族理解。森羅万象組み合わせてこの趣味である。

出動の時間が近付いて、車両区の詰所から出て来るナッパ服の乗務員氏たち。DDのエンジンが回転し、桜の空に紫煙が棚引く。林鉄の詰所っぽさを色濃く残す構内の転轍機を手際よく転換させて、進路を確保して行く係員。手旗の誘導で本線に出たDD、係員がステップにぶら下がりながら、出発線へ桜のトンネルをくぐって行きます。

井川線の朝は遅い。9時台の下り列車を千頭へ迎えに行くため、単回のDDが出発作業を進めていました。少し冷たい花冷えの日に、今や満開と咲き誇る両国の桜。大柄な車掌氏の出発合図に応えて、機関車のホーンが響く山峡の駅。沿線の道路が整備される中、奥大井の住民の流動を維持する理由は既になく、あくまで四季折々の奥大井の自然を楽しむ観光路線と言った感じの井川線。僅か4往復+区間運転の1往復の列車しか走りませんが、沿線の電源施設と、奥泉ダムを始めとするダムの保守管理のために中部電力の支援を受け、運行が維持されています。

秋の紅葉の時期ばかり注目されるんですが、桜と新緑の時期もいいもんですよ。井川線。

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夕映え桜が目に染みて。

2022年04月14日 17時00分00秒 | 中央東線

(春の甲州、西日傾いて@勝沼ぶどう郷駅ホーム)

少し肌寒い風の吹く勝沼ぶどう郷の駅のホーム。扇状地の高台からは、甚六桜と向かいにあるぶどうの丘、そして甲府盆地を囲む山々と南アルプスが一望の下。ちょうど太陽が西に傾き、斜光線が桜に降り注ぐと、花弁の一つ一つが鮮やかなピンクに輝いて実に美しい。青い空の下、順光で眺める桜も美しいけれど、個人的には桜の花の真髄はこんな感じの半逆光で撮影するのが好き。儚げな感じが実に春らしいと思う。

211系の普通列車、445M八王子発松本行き。半逆光の桜を横目に、夕映えの勝沼ぶどう郷のホームに滑り込む。こういう何でもないような春の風景が染みますねえ。最近は本線筋でも沿線の県都経済圏を中心にしたダイヤを組んでいて、どこもやたらと運行系統が細かく分離されるようになりました。が、中央東線には塩山~韮崎に区間列車は走っているものの、比較的長距離の普通列車が残っています。一番長い列車は高尾~長野を結ぶ441M。約4時間弱をかけて関東甲信を走破する18きっぱー御用達の名物列車です。

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初鹿野に 咲くを待つ日の 昼長閑。

2022年04月12日 17時00分00秒 | 中央東線

(見上げて桜@甲斐大和駅)

明治36年に中央本線が甲府まで開通する以前は、甲州街道は、笹子側の最後の宿場である黒野田宿から、笹子峠の頂上までを長く険しい山道で越えていました。昔人が苦労に喘いだ郡内と甲州を分かつ笹子峠の下を、長い長い笹子トンネルでくぐり抜けた出口に位置するのが甲斐大和の駅。ここもこの時期、勝沼ぶどう郷ほどではありませんが、駅の周りを桜が彩ります。ホームから見上げると、勝沼と比べてなお標高の高い場所だけに、咲いている桜もあればまだつぼみのものもありますね。列車に一時間程度の余裕があったので、駅の周りで食事でもしようかと思ったのだが、気の利いた店は開いておらず。近くのコンビニで弁当と乾き物を買って、駅のホームで軽く花見酒と洒落込むことに。

ホームは片面式1線・島式2線の2面3線。典型的な中線ありの国鉄型配線の駅。利用者の数は少ないもののダイヤ上は重要な位置を占めており、かなりの数の普通列車がこの駅で特急の通過待ちをします。18きっぷシーズン、高尾から中央東線の普通列車に乗って出掛けると、通過待ちのバカ停ってのはだいたい四方津か甲斐大和か日野春かと相場が決まっている。

甲斐大和という名前になる前は、この駅は初鹿野(はじかの)という名前であった。この付近は、武田一族が織田・徳川連合軍と激戦の末に最後を遂げたと言われる地。初鹿野という名前も、武田氏の家臣を務めた一族の名前であったと聞く。ホームの跨線橋から駅を見守る桜を眺める。跨線橋には、かなり年季の入った「のりば案内」の看板。

人っ子一人いないホームにチャイムが鳴り響いて、特急列車が通過して行った。今や中央東線の車両は、特急がE353系、普通列車が211系に統一されてしまいましたが、少し前まではスーパーあずさのE351系、主にかいじに起用のE257系、増発臨時にトタの189系、普通列車も山スカ115系と長野色の115系がそれぞれ運用を持ち合うなど、バラエティ豊かな布陣が敷かれておりました。あ、ホリデー快速ビューやまなしで入って来るコツの215系とかもありましたねえ。

青空の陽の光、暖かな春の空気を吸い込んで、今や遅しと咲くを待つのは甲斐大和の桜。またぞろこの駅で特急の通過待ちを行うのか、のっそりと中線に211系の普通列車が入線して来ました。およそ10分の通過待ちも、この時期であれば苦にはならずの花見の時間。甲州の入口にて、昼に暫し長閑な時間を過ごすのも、豊かな旅の一ページでありましょう。

 

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春は桜花、春を謳歌。

2022年04月09日 23時00分00秒 | 中央東線

(碧山に輝く@甚六桜)

今回の甚六桜は、タイミング的には満開手前の八分咲きでした。八分咲きで若干雨に当たったので花弁の方も少し落ちていましたが、馴染みの桜でも最高のタイミングで訪れるのはなかなか難しいようです。過去10年弱くらいここの桜を見てるけど、こっちの段取りと天気と開花時期がビタッと合ったのって一回か二回くらいしかないですね。桜の時期ってのはなかなか私生活も忙しくて、年度替わりのクソ忙しい頃合いに桜の咲き具合に合わせて平日休みを取るなんて言い出そうものなら、心の安らぎと豊かさは得られても、出世レースからは外れてしまいそうです(笑)。

甚六桜公園から、テクテクと歩いて菱沼の築堤を望む高台へ。勝沼ぶどう郷駅から対岸の「ぶどうの丘」へ登ってみます。ここは扇状地の途中に突き出た望楼のような高台で、甚六桜公園を軽く俯瞰して見る事が出来ます。春を謳歌する風景の中、昼のトップライトを浴びて南松本からの返空タキ2080レ。タキ10車ですから真冬時のピークからはやはり両数が減ってますね。菱山の築堤は大きいので、スーパーあずさの12連くらいをミチミチにドカンと乗っけるのが映えるのですが、コロナ禍であずさも減車が続いていて増結なしの9連しか走って来ないのが難だ。あずさの連結面も被写体として好きなんだけどなあ。

出世は程々、春には正しく桜を愛でる人生がいいですね。

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山男、お色直しの晴れ姿。

2022年04月07日 17時00分00秒 | 中央東線

(お色直しの晴れ姿@勝沼ぶどう郷駅前)

勝沼ぶどう郷駅の駅前公園に保存されているEF64の18号機。いわゆる「ロクヨンゼロ」として保存されている中では最若番のこの機関車、確か旧大日影トンネルの遊歩道化と一緒にこの地にやって来たかと記憶しておるのですが、保存されてから既に10年以上が経過して、最近は結構外板の被膜の剥がれや腐食、そして何より塗装の退色がひどくて、パッチワークのような無残な外観になっておったのですよね。それを、甲州市が主体となったクラウドファンディングで300万円を集めて、今回修繕工事を施したのだそうです。素晴らしくピカピカになって、満開の甚六桜の中でその姿を取り戻したロクヨンゼロ。山男の復活です。

美しく咲く甚六桜の下で、新製当時のような塗装に仕立て直された姿。細かく見ると盤ぶくれが直り切ってないところとか、そりゃあ色々あるけど、記念写真を撮る家族連れと、ガチンコのロクヨンマニアに囲まれて、18号機も嬉しそうでした(笑)。

 

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