(霜行列車@高滝~上総久保間)
もうすぐ房総の里山風景の向こうに、朝日が昇ってくる時間。この明け方の日の出前が一番寒い。里見発の一番列車をどこで迎え撃とうかと思いつつ思案していたら時間切れになってしまった。何の色気もない踏切の畔でキハの到着を待つ。もうね、寒い中でいちいち外で待っているのも辛いので、踏切の鐘が鳴るギリギリまでクルマの中で温まっておりました(笑)。日の出間際の房総の片隅、何気ない踏切のひとコマ。まだ消えない水銀灯の下、いつもの懐かし色のキハがキラリと浮かび上がります。
春は新緑、夏は青々とした葉を茂らせ、そして秋には見事に黄葉して散って行く久保の大銀杏。冬は・・・冬はどうなのか。と思って見に行ってみたら、日の出前のほの明るい空に、細かい枝の先の先まで大きく枝を伸ばす大銀杏のその姿が、何だか人の体の中に張り巡らされた神経の巡りのようで印象深い。生き物や植物に限らず、建物だってクルマだって電車だって何でもそうだけど、長い間生き続けたものにはそれ相応の魂や意識が宿るもの。この久保の大銀杏も、既に人格を備えているかのような、威厳と風格があります。
「いってらっしゃい、今日もご安全に。」
霜降りる真冬の朝。単行キハを見送る大銀杏の声が聞こえたような、上総久保の朝でした。