(過ぎゆく秋@大平台界隈)
好天に恵まれ、秋を満喫出来た今年の11月。我が家からは、遠征・・・と言うほどのものでもない、いつもの箱根。いつもの大平台界隈。いつもの路地に、朝露に濡れたモミジの葉っぱが、苔生した小道の路傍に落ちている。秋過ぎ行く大平台、山を渡る風に心なしかの冷たさを感じて。
この日は、オダアツを荻窪ICで降りて、足柄幹線林道からの俯瞰チャレンジからスタートしてみる。上大平台のスイッチバックに旧型の三色団子が登って来た。日の短い時期になると、上大平台に光線が回るのは朝のうちのほんのわずかな時間だけ。8時を過ぎると側面が弱くなっちゃうんだよね。ってか久し振りに来たら見晴らしの良かった谷の木々が伸び放題に伸びてしまい、アングルを組める位置が極めて限定されている事に気が付く。夏の暑さのせいなのか、マント群落が山を覆っていて見栄えが悪いし、このアングルもあと1~2年で過去帳入りなのかもしれない。
最後の旧型が、カラフルな色を纏って最後の活躍。定番の大平台駅進入は、スプリングポイントの標識を添えて。圧倒的に何回も撮った場所だけど、落ち着いて編成気味に決められるところってのはなかなか少ないのが登山電車界隈。サンナナのあの重々しいツリカケ音が聞こえなくなって久しく、最後の旧型車の砦を固めるカルダン車のヨンロクですが、その去就は聞こえて来ません。台風被害がなければ、旧型車は2020年夏には引退していた訳ですけどね。インバウンド需要がコロナ禍で完全に停滞した中で、設備投資計画が見直された可能性はあります。
三色団子の色の境目を珍しく慣れない流し撮りで(笑)。大平台駅から姫之湯踏切に続く小道は、11月の中旬くらいではまだ木々によっては色付き前のモミジの木も多かったですね。箱根は比較的紅葉が遅いので、場所によっては12月の今頃が見頃になる木もあるのでしょう。いつも旧型を撮影する時は、これが最後だなと思って撮っているのですけど、紅葉と絡めて最後の秋なのか、雪を見て最後の冬と思うのか、桜を愛でながら春まで残るのか。オリンピックと同様に、一年延期で来年の夏までなのか。そもそも去るのか、去らぬのか。それは登山のお偉いさんしか知らないこと。
駅近くの小径の紅葉はイマイチでしたが、頼りになるのが大平台隧道前の大カエデ。函山文庫という歴史研究者の庵(?)の前に生えていて、毎年安定した色付きを見せてくれます。秋の日差しに透けて、燃えるような鮮やかな赤。トンネルから出て来たアレグラと赤の競演・・・大好きなアングルです。ただ、最近は周りの雑木がゴチャゴチャしてきてなかなかに撮影しづらいアングルになって参りました・・・以前はもうちょっと線路周りが片付いていたような気がするのだが、登山線も復旧工事が優先されて、線路周りの除草などは後回しになっているんだろうか。「働き方改革」みたいな話の中で、保線に関わる時間が取れなくなっていると聞いて久しい。草取りってのは線路を守る基本の基本、と聞いたこともあるのだけど。
かれこれ10年以上くらいは大平台の集落で季節折々に写真を撮り続けておりますけど、神奈川県の箱根と言えども高齢化と過疎の問題は避けられない様子で、大平台も時を経るごとに空き家が増え、街が荒れて来ているのは気になる材料でもあります。結局、地域の景観が守られるという事は、そこに暮らす人たちのマンパワーがあるからこそ成り立つもの。かつては小径の隅まで人の営みがあった大平台の街も、空き家の屋根が落ち、板塀は剥がれ、きれいに整えられていた庭はいつしか草生し、やがて蔓草に伸び放題に覆われてしまうんですよね。自然に還って行く、と言えば聞こえはいいけれど、かつての人の営みが、荒れ放題になって行く様を見るのは何ともなあと言う思いがあります。せめて定期的な草刈りくらいはしていただけないかな、と思わなくもないのですが・・・