青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

京滋を結ぶトリプル・ハイブリッド。

2024年11月24日 17時00分00秒 | 京阪電鉄

(歴史の道、あふさかやまの道@逢坂関跡)

大谷駅から浜大津まで。いわゆる「逢坂越え」の道には、京の都から東国や北陸道へ出て行く際の関所である「逢坂の関」があったことで、古くからの歴史や文学に名前を残しています。その中でも有名なのは、百人一首に読まれた蝉丸和尚の「これやこの いくもかへるも わかれては しるもしらぬも あふさかのせき」の句でしょう。意味としては、「これが、知る人も知らない人も分かれて行く、有名な逢坂の関なのだなあ」という見たままの感想なので、何かの掛詞が織り込まれていたり何かの暗喩があったりということはなかったりする。蝉丸和尚と言えば、百人一首の絵札を使った遊びである「坊主めくり」では最凶最悪のカードと言われており、引いた瞬間にビリ確定とか、引いた瞬間トップ目に持ってるカード全部あげなきゃいけないとか色々とローカルルールがありましたよね。我が家だとどうだったかな?引いた瞬間ゲーム終了で、その時点での持ち札数のトップが勝者になるルールだったと思う。なんで蝉丸がそんな特別キャラ扱いされるのかってーと、蝉丸って百人一首で出て来る坊主の中で唯一帽子をかぶってて、パッと見で坊主に見えないから・・・という理由だったような。

京津線の逢坂山越えのトピックス、逢坂山隧道東側にあるほぼ直角の超絶急カーブ。電車は極端にスピードを落として、車輪をレールに擦り付けながら慎重に慎重にカーブを曲がって行きます。特にイン側にあたる浜大津方面行きのレールの半径のキツさは恐ろしい。実際の鉄道線ではあるのですが、その見た目のスケール感はNゲージに近いですよね。ここを単車以外が通ることが無謀に近いと思えるほどの急カーブで、よく見ると京津線の電車の台車が車体からはみ出しているのが分かります。京津線は全線が軌道法に基づいて建設されているので、こういう急カーブなど通常の鉄道線では計画外になりそうな規格のものも随所に取り入れられているようです。そのため車両限界的には相当厳しいものがあって、800形1両の全長は16.5mなんですが、これ以上車体が長く出来ないんでしょうね。本当は京都市内を地下鉄で走るならもっと大型の車両を入れたいんでしょうけども。

上栄町~大谷にかけての登り坂を。国道1号線に沿ってブラブラと下って行く。逢坂山トンネルを境に浜大津まで下り坂なので、歩きの身には楽だ。上空を大きく跨ぐ二本のアーチは名神高速道路の上下線。大津トンネルと蝉丸トンネルの間になる。このアーチをくぐって逢坂山の急カーブに向かう電車を待っていたのだが、逢坂山の山影に早くも隠れ始めた光線でまだらになってしまった。気にしない(気にしろよ)。

逢坂山の峠道、この辺りが文字通り「逢坂」という名前の集落になる。滋賀県大津市逢坂一丁目、ということだが、東海道と京津線にへばりつくようにしてウナギの寝床のように続く古い家並みが特徴的だ。逢坂山の坂道を下って行く京阪800形。峠のサミットの大谷駅が標高160m、びわ湖浜大津の駅が標高90m程度だから2.5kmで70mを降りて行く事になる。平均したら30‰弱の勾配になるのだからそれなりの連続勾配だ。地下鉄・登山電車・路面電車のトリプルハイブリッド、それが京阪京津線の魅力である。

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同じ場所でも100円高い。

2024年11月23日 07時00分00秒 | 京阪電鉄

(悩ましき運賃計算@京阪山科駅)

出町柳から三条京阪へ出て京都市営地下鉄の東西線に乗り換え、地下鉄の山科駅を経由して京阪山科駅へ。この間、出町柳(京阪鴨東線)三条・三条京阪(京都市営地下鉄)地下鉄山科(徒歩)京阪山科というルートを通っているのだが、ここで問題になるのは地下鉄山科も京阪山科もほぼ同じ位置にありながら、運賃が異なること。地下鉄と京阪京津線の分岐駅は一つ手前の御陵(みささぎ)駅なので、京阪山科で降りる場合は御陵~京阪山科間の料金が加算されてしまい、三条京阪から地下鉄山科の260円に対し三条京阪~御陵~京阪山科は360円になってしまうのだ。私は京阪電車の「びわ湖1日観光チケット」を買いたかったので京阪山科に来たんだけど、そのまま京阪山科で降りたら100円高いというのは結構初見殺しの運賃体系だよなあ。同じ三条方面から地下鉄も京津線も同様に発車するのだが、同じ山科に行くのに「どっちでもいい」とはならんのはトラップでしょ。特に最近はICカードにチャージさえされていれば、とりあえず改札は通れてしまうからねえ。ステルス的に高い運賃を払わされている観光客などもいるのかもしれない。地元民はそれを分かって三条方面に行く場合は地下鉄に乗ってしまうようだけど。

久し振りに来た京阪京津線。ご存じのように、そもそも昔は三条京阪から京都の東山を併用軌道で越え、蹴上から山科を通って浜大津へ至る路線でした。当然三条京阪~浜大津は京阪の一社運賃だったものが、御陵から先の市営地下鉄への転換で二社跨ぎの割高な運賃になった上に、最近は新快速を増発してフリークエンシーを高めるJRのほうが利便性も高く、京津線は利用者減による苦境に立たされています。京阪グループの中でも京津線と浜大津で接続する石山坂本線は収益が群を抜いて悪いらしく、いつの間にか三条京阪からの浜大津行きが20分に1本(毎時3本)になっていたのは悲しい。前までは15分に1本(毎時4本)だと思ったのだけど・・・そして淡い水色を中心にしたパステルカラーだった京津線の主役・800形はいつの間にか本線筋と同じグリーン系の塗装に代わってしまっていた。

それでも、蹴上の坂がなくなっても、本数が少なくなっても、電車の色が変わっても、大谷から逢坂山の坂道を越えて浜大津へ降りて行くあたりの情景は健在である。京津線の魅力はここから先にありますのでね、大谷の駅ですれ違う京阪800形。急勾配の途中の駅は、駅のホーム自体が坂道である。緑濃き駅前通りには、有名な鰻の名店があっていつも混雑している。この日も、秋の行楽シーズンらしく、多くのクルマが駐車場に入りきれずに列をなしていた。その渋滞は国道1号線まで延びていたのだが、この人たちの半分でも京津線に乗ってくれば渋滞もなくなるし、京津線の収入にもなるのにねえ・・・

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淀を走るや、街中華。

2024年11月20日 23時00分00秒 | 京阪電鉄

(淀屋橋行きおけいはん@出町柳駅)

先日の京都プチ遠征。叡山電車に乗った後は 、出町柳駅から京阪電車に乗りまして。関西の私鉄というもの、一応それなりに撮影しているかなあ・・・と思いつつ過去の写真のフォルダを漁っていたら、南海・阪急・近鉄・神鉄が厚めで京阪・阪神が薄め。特に京阪電車は、別に大した理由がある訳でもないのだが本線筋(淀屋橋~三条)をあまり撮影出来ないでいる。どっちかってーと、浜大津を中心にした併用軌道の周りに情緒がある京津線・石山坂本線が好みでしてねえ。結局、この日も京阪電車を三条で下車し、京都市営地下鉄に乗り換えて京阪山科から浜大津方面に行ってしまった。ただ、出町柳から乗った京阪電車は少し目を惹かれましたねえ・・・2600系。

京阪のシンボルカラーでもあるグリーン系の内装に、フワっと柔らかめのロングシートの両端部にはスタンションポールもなく・・・ラッシュの時にドア横の客がはみ出してきてケンカになりそうなアコモである。ラッシュも関東ほどきつくないとか、そういうのがあったりするのだろうか。元々関西には、近鉄を始めとして1960年代メイドの電車がゴロゴロしておりますんで、1980年代製造のこの車両が決して「ド古い」と言う訳でもないのですけども、関東の感覚だと通勤電車なんてもんは廃車にしなけりゃだいたいデビュー30年くらいで内外装の思い切ったリニューアルとかする感じなので、経年以上に「なかなか古風な電車」な感じのする車両である。

まだ10月半ばのこの日は、日中は長袖を着ていると汗ばむくらいの陽気だった。そのため車内には冷房が入っていたのだが、ラインデリアに付いてる社紋入りのサーキュレーターみたいなのがカッコよくて萌える。社紋の入った扇風機とかラインデリアの類があるの、昭和の私鉄電車って感じに満ち溢れてますよね。この装置、京阪独自の冷房装置で「回転グリル」というものらしい。役割としては、まさにサーキュレーターと同じで、車内に冷風を行き渡らせるためのハブみたいなものなのだけど、予想通りというか京阪ファンには「中華鍋」とか「中華どんぶり」とか言われているらしい。鉄道ファンって、そういうあだ名をつけるの、ホント好きよね。

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湖国の一夜

2016年07月30日 23時04分25秒 | 京阪電鉄

(湖国夕照@ホテルの部屋から)

ホテルの部屋から眺める湖国の夕暮れ。先週の浜松~京都ツアーは伝票が向こう持ちでしたんで(笑)、正直テメーのカネだったら泊まらないプリン〇ホテルとかに泊まってしまいました。滋賀県は西武グループの創業者である堤康次郎の出生の地ですから西武&コクドの影響力は強く、鉄道で言うと近江鉄道は西武の車両ばっかだし、近江鉄道バスは黄金期のライオンズカラーだし、プリ〇スホテルだけでも大津、彦根、マキノと3つもありましたからねえ…堤義明の総会屋絡みで彦根、マキノは売却されてしまいましたけども。


最上階37Fから眼下に広がる大津の夜景を。ホテルも高けりゃ値段も高いという首尾一貫としたバブリーな思想を平成の世に伝える〇リンスホテル。この辺りは大津一番の繁華街っぽいが、西武デパートもPARCOもあったりするのがさすが西武王国だなあ。湖岸にはホテルに続いて公園や県立武道館や県立芸術劇場(びわ湖ホール)が立ち並び、県庁所在地らしい文教地区としての側面もあります。


翌朝にぶらっと浜大津の旧市街に出てみたのだが、去年のGWに京津・石山坂本線を乗り潰した時にちょこちょこと歩いてみたので勝手知ったる所。路地に味わいがあるよね。ちょっと錆びれてはいるけれども…この辺りは寺町でもあるので、路地裏から大きな伽藍がちらりと見えたりして、余計そう感じるのかもしれない。


早朝、人気のない西近江路を、逢坂越えに向かう京津線。板塀の旧い店舗には「螺細三寶堂」と書かれていますが、仏壇や欄間の装飾をする店らしい。そんな店が普通に通りにあるのも、この辺りが寺町なのか、京の都に近いが故か。


交差点の大カーブを右に回り込んで浜大津の駅に進入するお決まりの構図。定番だがカッコいい。去年に引き続いてまた撮ってしまった。交差点の脇にある「三井寺の力餅」はよくあるシンプルな棒きなこ餅ですけど、トロリとして美味しいですよ。日持ちがしないのであんまり土産には向きませんが…

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波止の停車場 汽笛にむせぶ

2015年05月16日 00時00分28秒 | 京阪電鉄

(夜の帳降りて@浜大津駅前交差点)

石山寺から浜大津の駅に引き返し、上栄町の「小町湯」でのんびり風呂を楽しんでいたらいつの間にかとっぷりと日も暮れてしまいました。銭湯らしい熱い風呂に入ったので、湯上りに生ビールでもカーッ!とやりたい気分ですが、一応これからハンドルを握る身なのでこれを自重。駅の周りには大して食事するところもなかったので、値段だけはそれなりの、美味くも不味くもないようなラーメンを啜って歩道橋に上がってみる。夜になっても特段人通りに変化のない浜大津の交差点を、坂本行きの電車が行く。

 

人通りは増えずともさすがにGW、琵琶湖周辺からの行楽帰りのクルマで、電車通りの京都方面は渋滞が激しく。浜大津交差点には夕方から交通誘導員の方が立って、交差点への無理な進入を止めています。このマイカー行楽客のいくらかでも京津線で京都に帰ってくれればいいのにねえ。

 

渋滞する車列の横を静々と浜大津駅へ進入する800形。夜間の軌道走行時の視認対策として、車両下部に付けられた車幅灯が光っているのがお分かりいただけますでしょうか。京津・石坂線を走る列車は警笛の音が高低2種類あるようなのだが、信号が青に変わって列車が交差点に入る時の合図のような低い警笛は、ボォ~~ン、ボォ~~ンとまるで琵琶湖を行く船の汽笛のように聞こえる。夜の少し湿ったような空気の中に響く警笛は何とも哀愁があって耳触りよく、波止場に近い浜大津の停車場に情緒を添えてくれるようです。


夜の浜大津駅を守る誘導員さんの灯火。そーいや新しくなったカメラで夜間撮影するのは初めてだな。一応感度結構上げて撮ってるんだが、以前のD90に比べればさすがに画像のザラツキが少ない。前はISO400から上でもう結構ザラザラになっちゃってたから…この日一日でかなりの枚数を撮ったので、それなりに手に馴染んできたかなと。本当ならば一泊して、明日は京都に出て叡山電鉄辺りの新緑でもと行きたいところなのだけど、ああ、かぐや姫的な刹那の日帰り旅が恨めしい。そろそろ家に帰らなければいけません(笑)。


帰りは浜大津から石山坂本線で京阪膳所へ出て、JR乗換で再び米原を目指す。帰りの新幹線は米原停車&静岡停車のひかり536号…ってこれ去年福井鉄道行った時も帰りに乗ったな(笑)。米原に停車するひかり号では東京行きの最終です。まあ静岡からはクルマ運転して自力で帰らなきゃいけないんだけど、静岡までの1時間ちょっと、疲れた目と体を休められるのはありがたい事です。

何年か前から意識して地方の中小私鉄を訪問する旅を続けて来ましたが、今回のお相手は一応京阪電鉄という大手私鉄。京阪電鉄の中でも元々京津線が京津電気軌道、石山坂本線が大津電気軌道という独立した会社であって、大正時代に京阪と合併したと言う出自からも色濃い独自性は窺い知る事が出来る訳ですけど、京津線・石山坂本線の多彩さと味わいは中小私鉄のそれに近く十分に魅力的で乗り応えがある路線でしたね。特に短い間に目まぐるしく性格の変わる京津線は面白かったので、機会あらば是非お乗りいただいてその味わいを楽しんでいただきたいと思いますね。
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