青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

月明かり 清かにそっと おやすみを。

2021年10月31日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(前立社壇の駅@岩峅寺駅)

立山・雄山神社の前立社壇の最寄り駅に当たる岩峅寺の駅。地鉄の駅の中でも屈指の荘厳さを誇る駅舎ですが、夜に訪れたのは初めての事。農協や酒屋などがひっそりと連なる駅前広場。人気の消えた駅前から見やれば、薄雲のかかる夜半の空に浮かぶ中秋の名月。朧月なれど、月灯りが静かに駅を照らし、その荘厳さが一層引き立って見えます。

岩峅寺駅、22:03分発、立山線上り最終列車。本日は14760形での運行。こないだまで最終は22:40頃だったんですが、春のコロナ禍改正(?)によって、終電が一本繰り上げになってしまいました。特急も運休、普通列車も本数減という事になれば、運用を確保するだけの車両数は必然的に少なくて済むようになる訳で、早晩運用を外れる車両が出るのかもしれません。

いつも富山は駆け足だけど、今回は間に万葉線などを挟んで、また少し違った風趣の一日でした。この日最後のシャッターは、岩峅寺駅の終列車。朝も訪れた駅はすっかり闇に包まれ、月と星の瞬く秋の夜長、糸の様に光のテールを引いて出て行く60形に旅の終わりを思う。別れの夜の涙のしずく、星も流れて散ってゆく。そっとそっとおやすみなさい、そっとそっと、おやすみなさい・・・

さて、およそ一ヶ月強に亘って続けて来た秋の富山行に関する記事は、これでひとまず終了となりますが、いかがなものだったでしょうか。次はどの季節に行きましょうかねえ。今年はイマイチ雪の少ない2月末に行ってしまったんで、雪を期待して1月の酷寒時期に来てみようかな。そうなると、クルマのタイヤもスタッドレス買わなきゃならんなあ・・・

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寺田、夜撮の愉悦。

2021年10月29日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(眠りに就く前に@寺田駅)

窓口にカーテンを引き、帰り支度をしている駅員氏にフリー乗車券を見せて夜の駅に忍び込む。秋の夜の冴えた空気に佇む寺田の駅。そんな駅の空気感を楽しみながら思い思いにシャッターを切っていると、右側通行の立山線ホームに、立山行きがやって来ました。

交換する10030形&14760形。駅を出ていつものアングルで。構内の水銀灯に鈍く光るレールがきれい。夜の撮影では、動きモノはどうやったって止めにくいのでこうやってブラして撮影する事が多いんですけど、そのブラシし加減って列車の速度とシャッタースピードの加減が意外と微妙なモノ。そこらへんのタイミングを上手に合わせるのが、夜撮の難しいところであり愉しみだったりもします。

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浜の夜風のしじまに。

2021年10月27日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(浜の駅、夜の静寂@浜加積駅)

「加積」を名乗る地鉄の駅たち、いくつか数はありますが、私は早月加積とこの浜加積が好きですね。何回か撮りに来た事があるのだけど、夜の撮影は初めて。この駅はお隣の早月加積以上に駅の入口が分かりづらく、住宅街の袋路になった小道の先にあって、正直こんな時間にカメラを持ってウロウロするのは憚られるような場所。なるべく近所の御迷惑にはならないように、静かに静かに息を潜めて列車を待つ。駅へ続く路地にある踏切が鳴り出して、滑り込んで来た電鉄黒部止まりの電車。乗降客も特になく、慌ただしいようなドアの開け閉め。しかし、漆黒の闇に浮かび上がる雷鳥カラーは良いものですね。神秘的でさえあります。

電車がレールを叩く音が徐々に徐々に遠ざかった後は、また元の夜の静寂に佇む浜加積の駅。
秋の夜長を鳴き通す虫の声と、 煌々とした駅舎の灯りだけが、訪れる人を待っています。

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宗義翁の理念は遠く。

2021年10月25日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(夜想曲@早月加積駅)

早月加積駅。戦前から建っていそうな古い駅舎ですが、駅の開設自体が昭和25年と戦後のモノ。駅前の灯油タンクは、かつてこの駅に駅員がいた頃の名残りなんでしょうね。昭和40年代頃は、この辺りの北陸本線のダイヤは圧倒的に特急・急行列車優先。普通列車は日中2時間に1本程度とまるで使い物にならず、30分に1本の本数を確保していた地鉄の圧勝でした。これこそ「並行はすれども競争にあらず」という創業者・佐伯宗義翁の理念の通りだったのですが、今や北陸本線が長距離輸送を新幹線に委ね、第三セクターとして地元のフリークエンシーに注力をしています。新しい車両と高速運転、ダイヤと線形の良さ、料金と様々な面で、滑川・魚津方面からの「対富山」に関してはあい鉄の圧勝。滑川基準で朝の7時台にライナー含めて5本の運行は強い。

すっかり日の落ちた富山平野。加積郷の空の上で、宗義翁は何を思う。
あい鉄の列車とすれ違いながら、かぼちゃ京阪が足早に走り去って行きました。

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常願寺、今日の陽はさようなら。

2021年10月23日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(秋の日、釣瓶に落ちて@常願寺川橋梁)

富山に戻ってから、再び地鉄沿線へ。万葉線をのんびり回っていたら、既に時間は夕方の5時を過ぎておりました。新湊ではあんだけの青空が広がっていたんですが、夕方にかけて割と厚めな雲が湧いて・・・夕焼け空は期待薄かと思いつつ常願寺川で三脚を出してみる。暫く待っていると、太陽が地平線と雲の僅かな隙間からこの日の最後の光を放って来た。スリットほどの隙間から射す光の長さは刹那の時間、果たして電車はやって来てくれるか・・・?とレリーズを握り締めていると、川の向こうから線路のジョイントを叩く音が聞こえて来ました。果たして舞台に躍り出たのは、雷鳥色の60形。この舞台に似合うのは私しかいないでしょう?とばかりの千両役者の登場であります。

長く伸びる秋の夕日を車体いっぱい綺麗に浴びて、この日最後のカーテンコール。
常願寺に響く鉄音が、富山平野に夜の帳を降ろします。

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