青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

三岐宇賀川、爛漫に咲き誇り。

2023年04月29日 07時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(おめでたい駅、花咲く駅@大安駅)

三岐鉄道・大安駅。大安と書いて「だいあん」。大安吉日っぽくてとてもおめでたい、縁起の良さそうな駅。駅に図書館と公民館みたいな施設が併設されていて、駅務を役場の職員さんみたいなおばちゃんが管理していた。駅前にはそれなりの広さのロータリーがあるものの、商店などの姿は皆無なのは保々の駅と変わらないですね。ってか、三岐鉄道を訪問する場合、電車で回ろうとするなら確実にどっかのコンビニでパンかおにぎりかくらいは仕入れておいた方がいい。どこの駅も駅チカで食事をするような場所がなく、コンビニもろくにないので、確実に飢える(笑)。

1面1線のホームに黄色い電車が止まって去って行った、大安の昼下がり。駅から北に向かって2~3分歩くと、田んぼの向こうにきれいな桜並木と公園が見えて来ました。周辺市町村と合併していなべ市となる前の旧大安町庁舎に沿って続くこの桜並木は、北勢に春を告げるいなべの桜の名所でもあります。この公園の真ん中を三岐鉄道の鉄橋が渡っていて、三岐随一の桜の名撮影地ともなっています。三岐と言えば春は宇賀川、幾多の名シーンを飾ったフォトポイントです。今年の桜をどこで撮ろうかと考えて、いくつか候補は思い当たったんですが、その中でも一番来たかったのがここなんですよね。抜けるような青空に満開の桜、文句なしの天気に恵まれて思わず「来てよかったなあ」なんて独り言ちたりして。

のんびりと鳥のさえずりを聞きながら川沿いの土手に腰掛けて桜を愛でる。赤電、セメント貨物、西武401系と、三岐のお馴染みの面々が春爛漫の宇賀川を渡って行く。地元の老人が思い出したように土手沿いの遊歩道を歩いてくるほかは、何もかもを忘れてひたすらにそよ吹く風と春の日差しに包まれながら過ごす、心のデトックスタイム。「常に春はこうありたいなあ」と思うような、いい時間の過ごし方をさせてもらいました。

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保々、ほぼ、西武。

2023年04月24日 17時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(ナッパ服、風に揺れて@三岐鉄道・保々車両区)

三岐鉄道の保々駅前。車両区とCTCセンターのある主幹駅でもあります。主幹駅、といえども駅前にコンビニ一つなくて、本当に駅の機能の他には何もない。そもそも三岐鉄道、敷設された目的が藤原岳からの石灰石・セメント輸送の産業鉄道なので、あまり沿線にある街とか集落に配慮せずに建設した感じが強い。駅前に小さな商店街みたいなものがあってもいいようなもんだけど、その雰囲気すらない調整区域内にあって、住宅がある場所が遠く離れている。静かな車両区の事務所の軒先に、作業員たちのナッパ服が揺れる。

庫内でメンテナンス中の101系。これも元・西武の401系。切妻でペッタンコの国電的風貌は素っ気ないけれど、私は三岐ではこの車両が好きです。風貌汚れたウエス、グリスの缶、竹ホウキ、雑然と詰まれた部品の数々。忙しなく働く作業員の方々。 西武時代のレモンイエローに忠実に復刻された西武701系、検査明けできれいな姿を撮りたかったのだけど、この位置に留置されてるって事は今日は出番なしですかねえ。701・401・新101と元西武の陣容で構成された三岐の保々車両区、自社発注車こそないものの地方私鉄の検修区として魅力があり過ぎて、眺めているだけで飽きないものです。

 

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春三岐、桜花録。

2023年04月22日 15時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(北勢・春の日。@保々駅)

ちょっと懐かしめのエビ茶色の電車。西武線沿線のアラフィフの世代以上には懐かしいカラーリングでしょうか。いわゆる一昔前、西武電車が今のライオンズブルーとかレモンイエローになる前の「赤電」カラー。本家の西武鉄道でも、新101系のリバイバル赤電なんかがおりますけど、やっぱ赤電カラーは701系あたりの「西武顔」にこそ、という感じがあります。旅客車両の全部が西武OBの三岐鉄道ならではの、赤電カラーのリバイバル。春の光に包まれた保々の駅、西藤原行に子供たちが見送りの挨拶をすれば、警笛一斉。北勢の春の日にこだまして。

保々の駅から北側、北勢の田園地帯を流れる朝明川の流れに沿って、きれいな桜並木が続いています。地元の老人会の面々か、桜の下では花見の宴。川沿いの桜並木と言えば、この前に訪れた埼玉の大落古利根川は雨の日だったんですけど、この暖かな春の日にほころぶ満開の桜をみると、やっぱ天気はいい方がいいに決まっている訳で。今シーズン、やっといい天気の下で満開の桜を見れたような気がする。

ほどなくツリカケのくぐもったモーター音を響かせて、先ほど赤電を保々の駅でやり過ごしたフライアッシュ貨物がやって来ました。東藤原と碧南港を結ぶフライアッシュ貨物、14両で知多半島の碧南を出て、稲沢経由で富田へ運ばれ一晩を過ごし、翌朝便で10両、この午前便で4両を東藤原へ運んで行きます。日本でここでしか使われないホキ1000形、白く大きな異形の体躯が魅力的。東藤原からは碧南火力発電所の煤塵吸着に使われる石灰を運び、碧南からは発電所で出た石炭の焼却灰を持ち帰りセメントの材料として加工するという、昨今やたらと推奨される循環型社会を象徴するような貨物列車です。

朝明川の満開の桜並木。春の訪れに田園地帯でも田植えの下準備に余念がないようで、冬の間に生えた田んぼの下草刈りと、トラクターを使っての田起こしが行われていました。線路の向こうに蒼く連なる鈴鹿山脈の山並みがとても清々しい、北勢の春景です。

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大落古利根、桜色プロムナード。

2023年04月19日 17時00分00秒 | 東武鉄道

(過ぎて行く春@大落古利根川橋梁)

春雨は降ったり止んだりを繰り返して、満開の花と河川敷の草木を潤わせる。その代償として満開の花弁が、雨に打たれてハラハラと散って行く。埼玉の古利根水系沿いには、中川の上流の南栗橋辺りに権現堂堤公園ってのがありましてね。そこが観光雑誌に乗るくらいのかなり有名な桜並木なんですけど、ここ大落古利根川の桜並木も見事なものです。樹の勢いがいいのか花付きがいいのか、ともあれ、見事なものでしたね。少し錆びて古びた感じのガーター橋と、その橋を渡って行く新型電車。道行く男性一人、春雨のプロムナードを歩く。春雨じゃ、濡れて参ろう・・・ってか。

桜色、車窓と水面に流れ行く。

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物憂げな路地のモノローグ。

2023年04月17日 17時00分00秒 | 東武鉄道

(春日部の街、路地先ちらり@藤の牛島駅周辺)

東武野田線・藤の牛島駅を降りて、大落古利根川の桜並木に向かう間、駅前通りの先に、ちょっと気になる店を見付けてふと立ち寄り。売ってるのはお好み焼きのようなのだが、今のご時世で一枚100円という恐ろしいプライシングと、メニューのバリエーションも謎過ぎる・・・思わず注文を乞うと、気の良さそうなじいちゃんが「今焼いててあと10分かかるけどいいかい?」と。

古びたパイプ椅子に「お好み焼き」の赤ちょうちん。自動販売機の前のガチャガチャ。ガチャガチャの中身を見たら、「昔懐かしの人形の尻に火を付けたらウ〇コがニョロニョロと出て来るヘビ玉みたいなアレ」が入ってて、令和のこの時代にまだそんなもん生産してる工場があるんだねえ・・・という妙な感慨を覚える。何とも昭和の駄菓子屋然とした佇まいに満ちた店先で、あまりにも謎なメニューのラインナップから無難に「もち」と「唐揚げ」を注文。路地先の向こうの踏切と、通過して行く野田線の電車を眺めながら暫し待つ。せっかくとんがったメニューなんだから、もう少し攻めても良かったか。

暫し待って「お待たせ!」と渡されたお会計200円のお好み焼きは、焼き立てをアルミホイルで直包みするワイルドタイプ。手提げ袋に入れてくれたのだが、いざ食おうとすると熱くて持てないので、お好み焼きを冷ましがてら大落古利根川まで歩いては桜を見ながらアツアツのお好み焼きを頬張る。餅は予想通りの味だが、唐揚げはピザソース&チーズで洋風仕立てだった。ってか食べながら「あのじいさん、唐揚げとチーズピザと間違えてねえか?」疑惑があったのだが、唐揚げも入っていたので文句はない。と言うか、この物価高のご時世で一枚100円という時点で儲けはないだろうな。こういう謎の店を見付ける事も街歩きの愉しさの一つではある。

三畳あるかないかの店先のスペースで、忙しなくコテを返しながらお好み焼きを焼き続けている店主の姿を見ながら、全て手書きで書き付けられたメニューと、春の雨に打たれる桜並木をぼんやり眺めていた春日部の街。なんだか私小説的で物憂げなアフタヌーンを、揺蕩うように流れる古利根の流れと東武電車。北埼玉の春景色である。

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