(山里に復活のいで湯@浜平温泉しおじの湯)
奥多野線の終点・しおじの湯。正式には、「浜平温泉しおじの湯」。奥山の鄙びたいで湯を思い起こすのですけど、建物は随分と新しく立派である。以前、ここよりもう少し奥に「浜平鉱泉」という鉱泉場があって、奥多野館という一軒宿が営業をしておったのだそうですが、同館の廃業により浜平鉱泉の名前は地図から消えてしまいました。この「しおじの湯」は、そんな小さな山の湯を復興させるべく作られた日帰り温泉施設で、浜平鉱泉のあった場所で新しい源泉(湯の沢源泉)を探し当て、そこから1km程度引き湯をしているのだそうで。
帰りのバスは3時間半後。となれば、のんびりお湯に浸かって行く事以外に選択肢はない訳で、ちょうどいい湯加減の由緒ある鉱泉に身を沈める。電車とバスの長旅で固まってしまった体がほぐれて行く。露天風呂から眺める西上州の山の紅葉も見事。こんな山奥なのに案外と湯浴み客は引きも切らず、まあこの週末がこの辺りの山の紅葉の一番の見頃だったのかなと。お湯は薄く濁りのあるメタケイ酸による規定泉ということで、成分は薄いのかなと思いきや意外に成分濃厚な浴感。肌触りはすべすべというよりはひっかかるものがあり、湯口は赤く色付いて、少しの金気分と薄く酸味のある独特な風味の鉱泉でした。
一時間程度風呂に入ってもまだまだ時間があるので、併設の食堂「しおじや」で昼食。上野村の名物である「イノブタ」を使ったメンチカツ定食。揚げ物に思わずビールを合わせてしまった。今日はハンドル握ってねえからな。乗り鉄&バス旅はこれが出来るのが良い。揚げたてのカリっとしたメンチカツとビールがまずい訳ないのだが、正直申し上げて牛肉とか豚肉じゃなくイノブタだ!とガッツリアピールしてくるほどの何かはそんなに感じなかった(笑)。いや、メンチカツとしては普通に美味かったっすけど。
温泉に入り、食事もして、横になって少しウトウトしたり。それでも帰りのバスの時間には余ってしまうので、少し散策しながら「上野村ふれあい館」まで戻ってみようかと思う。GoogleMapで調べたら3kmちょいくらいだったので、一時間もあれば行けるでしょう。しおじの湯から歩きだした場所にある青看板には、左に行くと御巣鷹の尾根とある。ここも相当に山深い場所ではあるが、御巣鷹の尾根はこの場所からさらに15kmほど奥に行った想像を絶する険しい山間部。流石に墜落現場まで行くのは大変なので、心の中で慰霊のお山に手を合わせる。
湯上りの体を冷たい山の風に当てながら、午後になって少し雲が出て来た西上州の山間地を歩く。それにしてもこの辺りの紅葉の美しいこと、まさに見頃である。神流川の瀬や淵に寄り添うように、錦織りなす色付く木々を愛でながら歩いていると、時折ポツンと川に沿って家があったりする。ここに住まう人たちの苦労はいかばかりか。自分で訪れておいて言うのもなんだが、人跡稀なる交通不便な僻地にて「こんな不便な山奥に住んで、この家の人達はどうやって生計を立てているのだろう」という感情を持ってしまう事がたまにある。都会人の傲慢なのだろうね。きっと。