青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

そんなに急いでどこへ行く

2015年02月15日 22時26分12秒 | 日常

(なんかNHKっぽいロゴ@どきどきリニア館)

寒い時期だからかちょっと風邪気味だったりして出歩いていないですが、先日子供を連れて行ってきたのは山梨県は都留市にある山梨県立リニア見学センター「どきどきリニア館」。山梨にリニアの実験線が移って、見学センターが出来たのも知ってはいたんだけど今まで一回も行った事はなかったんだよな。しょっちゅう富士急行とか中央東線とか撮りに行ってるのに。あ、ちなみに富士急行線の田野倉駅の西側の山にへばりついたような場所にありまして、一応大月駅から一日5便のバスも出てたりする。


施設は山梨県の物産を売ってるお土産棟とリニアの展示やってる棟に分かれておりまして、どうやら最近リニア館は新しく改修された様子。オトナ一人420円の入場料はかかりますが、とってもキレイです。1Fフロアにはリニアの実物大モックアップ。MLX01-2と言う車体番号らしい。これが山梨の実験線で時速581kmの世界最高速度を計測した車両だそうです。

 

そして壁面には日本のリニア開発のヒストリーが。そもそもリニア自体既に鉄道と言う概念から超越した未来の乗り物だけに、正直そんなに食指の動かないジャンルではあったんだが、こうして見ると国策としてリニアを諦めずに実用化に近付けようと日々努力していたんだなあと言う事は分かります。個人的にはリニアと言われると国鉄時代に宮崎県の美々津に作られた宮崎実験線時代のイメージが強いっすね。この日の丸カラーのリニア(ML-500)が懐かしいのだが、今は美々津の実験線はソーラーパネルが置かれて太陽光発電の基地になってるんだよな。

 
 

ここの施設の白眉は3Fにある「山梨県の鉄道」を模したジオラマですかね。スクリーンにCGを配し、山梨県の四季を織り込んだシーナリーは素晴らしいです。ここらへんのカネのかけっぷりはさすがに公営施設と言うか。特に大月駅に長野色の115系が滑り込むところとかいいよなあ…岩殿山から俯瞰したイメージなんですかね。

 

この日はリニアの実験も行われていたので、館内放送では逐次リニアの運転状況を知らせるアナウンスが流れていました。館内のモニターでもリニアの現在位置を確認する事が出来るのですが、なんせ遠くにいても時速500kmで移動する物体なのであっという間にやって来る。そして目の前を通過するリニアの速え~のなんの(笑)。初めて生で見たんで驚いちゃったんだが、鉄筋の立派な建物の中にいても時速500kmの物体が間近を通過すると物凄い轟音と衝撃波で建物が揺れるんだよね。そしてその姿をカメラで補足しようとしたんだが、もはや早押しクイズと言うか(笑)。


接近戦だととても太刀打ちできないので、長玉使って相対速度を下げるしかあるまいと言う事でチャレンジした次の一枚。補足成功。計画では品川駅を起点とし、大深度地下を通って橋本駅からこの山梨県区間に入るルートになってるんだけども(当然この実験線も正式ルートの一部)、確かに地上でこんなもん走られてたら周辺住民から衝撃波とかで苦情は出るんだろうなあ。

品川~名古屋間の開業は2027年を予定しているそうだが、昭和50年から色々と試行錯誤を繰り返して未だ実用化に至らない部分とか、南アルプスを山岳トンネルで一気通貫すると言う荒唐無稽の計画とか、正直本当に出来るのか?と疑問に思う部分もあったりはする。リニアが開通すると山梨から品川まで25分らしいけど、まさに狭い日本そんなに急いでどこへ行く、だ。メシ食う暇もありゃしない(笑)。
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最後の王国

2015年02月01日 11時55分05秒 | 秩父鉄道

(副本線進入…@永田駅)

秩父鉄道は、単線の割には1時間あたり約上下2本の旅客列車に貨物列車が絡む意外に過密なダイヤが組まれております。貨物列車は、上下列車を一括で退避したり、後続の電車に追い越されたり、貨物列車同士の交換をするのに長時間停車を含め実にのんびりと寝たスジで走ってるので、電車にて追っかける事も出来るのが嬉しいところ。旅客列車に比べると圧倒的に長大な編成の貨物列車は、交換や追い越されの長時間停車をする場合には本屋から一番遠く有効長の長い副本線に入り、進路の開通を待ちます。上下列車の交換待ちのために永田駅の副本線に入線するデキ501牽引の7005列車。

 

波久礼の駅から国道に出て北上、国道沿いのインカーブへ。この辺りの並走する国道140号ってのは秩父方面へのメインルートなんで、アングル的にはクルマの被りは避けられないところ。イチかバチかのギャンブル構図になってしまうので避けたかったんだが、他にこれと言って撮りたい構図もなかったんでやってみる事に。カーブの向こうにデキ(7304列車)の姿が見えた頃に奇跡的に車の流れが切れ、「っしゃあ来たか!」と思ったのだが、べスポジの切り位置ではガッツリとトラックに入り込まれるのでありました(笑)。

 

何とも中途半端な結果を抱えて波久礼の駅に戻ると、今度は返空の7105列車が副本線に進入して来ました。デキ300シリーズは、正面窓が細いのが特徴。田舎ヤンキーがかけている細いレンズのメガネのような(笑)。貨物列車は小さな波久礼駅のホームを大きく通り過ぎ、出発信号機の前まで行って停車。ブレーキ管の中をエアーが伝わる空気音が聞こえてきます。ヤマから降りて来る積載の鉱石列車は総重量1000tですが、荷卸しをして空っぽになった空車でも総重量は300tあるとか。


波久礼から上長瀞へ。この駅に初めて来た時にも思ったんだけど、ホームの上屋を支える古レールのカーブが優美な駅です。土休日は長瀞周辺の散策をする観光客も目立つ駅ですが、この日は人っ子一人おらずひっそりと静まり返っておりましたねえ。


駅の北側に続く小道から先ほど波久礼の駅に止まっていた7105列車を。ちなみにこの列車、波久礼で15分止まった後、長瀞で上り貨物、上り列車、下り列車の退避のため35分くらいの長時間停車をこなしております。そんな長時間停車の間機関士の方は何をやっておるのでありましょうか(笑)。この駅横の小道は長瀞名物の桜並木になっておりまして、開花時はSL狙いの陣取り合戦が尋常じゃない場所でもあります。あと2ヶ月もすれば、再び激戦の火ぶたは切って落とされるのでありましょう(笑)。


定番。定番。ど定番。なんか意識はしてなかったんだけど定番の親鼻鉄橋に来てしまった。午後順光なんで狙ってもいいかなと思ったのだが、西の空は雲に覆われてしまってこれでパッとしない写真になるのは確定か。荒川の流れに洗われた変成岩の河原に陣取りつつ、橋を渡って行く積載貨物の盃のような形を眺めていると、ライン下りの船頭さんも船を止めて秩父の貨物を見送ります。


親鼻の陸橋から返空の7205列車を。牽引機は松尾鉱業鉄道出身のデキ107ですが、岩手県は八幡平にあった「天空の鉱山」こと松尾鉱山からやって来たデキ107は、前面ガラス上のヒサシ(つらら切り)が特徴。松尾鉱山は、ピーク時は八幡平の山奥に1万人を超える鉱山都市を形成し、「東洋一の硫黄鉱山」と言われた天然硫黄の鉱山でした。今はワンダーJAPANとかそっち方面に有名な鉱山廃墟群となっているそうだが、いやー、産業遺産マニアとしてはこれはそそりますなあ。


太陽は西に傾き、先ほどのデキ301に牽かれた貨物列車が遠くに秩父の山並みを望む親鼻駅の副本線に入って来ました。ちなみに、秩父鉄道では電機は冬場だけパンタ2丁上げになるのです。架線の凍結などによる集電不足を予防するためなのですが、やはり片パンより2丁上げのほうが圧倒的にサマになるんで、秩父のデキを撮るには冬場に来た方がいいと思う。


親鼻を出る7106列車。秩父の石灰石列車に積まれる財源は、影森にある三輪鉱山と、武州原谷で積まれる群馬の叶山鉱山から産出された石灰石ですが、その産出量は三輪が年間70万トン、叶山が年間200万トンと大きな開きがあります。新しく開発された叶山鉱山は、群馬と埼玉の県境付近にある採掘現場から、地下に埋設された20km以上のベルトコンベアーで武州原谷の工場まで石灰石を送り込むと言う大掛かりなシステムが構築されているそうな。今は石灰石のみを運ぶ秩父鉄道ですが、以前は秩父地区に点在する工場から原石だけでなくセメント含めあまたの派生製品の出荷があり、色々な私有貨車が混成されて秩父路を走りまくっていた時代がありました。


夕暮れの武甲山をバックに、和銅黒谷駅で交換する7305列車と7206列車。デキ107は鉱山鉄道向けに投入された車両だけあって、同じデキ100シリーズに比べて出力が高いのが特徴。荷を積み、ヤマを下り、荷を降ろし、ヤマへ戻り。毎日の風景の中で、秩父の産業の動脈として黙々と続けられる営みにマニアとして感謝せねばなりません(笑)。


通常スジでは20時、臨時スジでは22時まで貨物列車の設定があるので、撮ろうと思えばまだまだ行けるのですがそろそろ帰り支度と言う事で武川の駅に戻って来ました。日もとっぷり暮れ、武川の駅で三ヶ尻線の進路開通を待つ積載の貨物列車をバルブ。三脚持ってないからきっついわー。

青いナッパ服を着た機関士が運転台に乗り込むと、機関車のコンプレッサの音。
そしてブレーキ管を抜けて行くブレーキのエアー音。
発車の一瞬20両のヲキ車が奏でる連結器の衝撃音が乾いた夜空に響けば、貨物はゆっくりと消えて行くのであります。
ああ、ここはまさしく私鉄貨物最後の王国。
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