青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

夏の夕陽と常願寺。

2024年08月23日 10時00分00秒 | 富山地方鉄道

(夏の夕陽と常願寺@常願寺川橋梁)

夕陽は常願寺、夕暮れは越中三郷。地鉄のトワイライトタイムを楽しむには外せないルーティーン。ちょっと氷見の里山の方まで温泉に入りに行ってしまったので、常願寺川に戻った頃にはだいぶ夕陽が西に傾いていた。地鉄の中でも、電鉄富山~寺田間は本線・立山線の列車が頻繁に走り、長い長い常願寺川の鉄橋を絡めながら、刻々と変わる光線に合わせて色々なアングルが楽しめる。セオリー的には、電鉄富山側の常願寺川左岸から立山連峰をバックに順光で撮影するのがいいのだろうけど、私は特に夕方の時間は逆光が好き。夏だと空気がモヤって立山連峰も見えませんですしねえ。ただし、越中三郷側は河川敷の灌木が伸び放題に伸びており、若干アングルを支障するようになっている。今のところギリギリ交わして何とかガーター橋の上を走る列車を写し止めることは出来るのだけど、来年あたりになったら三郷側のアングルは潰れてしまうかもしれない。

大きく構図を開いて構えると、この夏の暑さですくすく伸びた灌木がかなり目立つ。スコーンと抜けた川の風景を撮りたいのだが、これでは何を撮りに来たのかちょっと散漫。河川敷の灌木とかは、たまの大水でも出れば樹木ごと根こそぎ流されて行って植生が強制的に替わるものだが。夏の夕日が沈みゆくのを見ながら、ヤブ蚊の襲来を交わしつつシャッターを切る。宇奈月温泉から戻って来たかぼちゃ京阪が、たっぷりの夕陽を浴びながら富山方面に向かって行きます。

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浜風の中の白昼夢。

2024年08月19日 10時00分00秒 | 富山地方鉄道

(海の香りのする駅に@浜加積駅)

地鉄の駅の中では、比較的海の雰囲気があるのが、この浜加積の駅。「浜」と名前がついているからそう思うのかもしれないが、路地裏にひっそりと佇む駅舎から広がる空の向こうに、青い富山湾が見えるような気がする。古い駅舎の多い富山地鉄ですが、今年のお正月に発生した能登半島地震に伴い、耐震補強の観点から一部の老朽化が進んだ駅ではリニューアルの事業が始まっています。風雪に耐えたトタン屋根は軒が歪み、雨風をしのいだ赤茶色の屋根瓦は今にも剥がれ落ちそうなこの駅舎も、おそらくはその対象になっているものと思われますが、未だその気配はありません。軒下に並べられた自転車数台、この駅の利用者のものであろうか。そう思うには訝しいほどに、真夏の光線の下で静寂に包まれていました。

駅舎の中に入ると、陽射しが遮られて外に棒立ちでいるよりかは幾分マシだ。駅のつくりは富山地鉄の標準的な構造、地鉄において最初から無人駅として作られた駅は少なく、どこの駅にも駅舎とかつての窓口が残っていて、そしてその窓口の大半が後の無人化によって閉鎖されている。個人的に、ローカル私鉄の無人化された駅舎の、閉じられた出札口を覗くのが好きだ。駅に駅員がきちんと詰めていた時代が、そのまま閉じ込められているような気がするのだ。海に近い駅らしく、壁には津波対策で海抜が示してある。土間打ちの待合室からホームへは数段の階段を上がって行く形。ホームには、潮風に錆びて蝕まれ朽ちて落ちるを繰り返し、既に用を成していない駅名票がある。地鉄らしい・・・と言ってしまえばそれまでだが、どうしてここまで、という惨状である。

アスファルトの照り返しは真っ白く、日差しをよける場所もない灼熱の駅前。1分でも立っていられないほどで、呆然となって来る。京阪10030が富山方面からゆっくりと浜加積の駅にやって来た。以前は(今でも)地鉄の電車で言えば60形至上主義ではあるけれど、夏にこのコントラストの強いかぼちゃ色の京阪は案外悪くない。悪くないというか、富山の夏の空気感にピタッとハマっている。それもそのはず、かぼちゃは夏の緑黄色野菜なのであった。

 

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夏が苦しい時代。

2024年08月18日 10時00分00秒 | 富山地方鉄道

(散居の夏、とやまのなつ@横江~岩峅寺間)

今年の夏は、7月の入口から本当に暑かった。人間として半世紀くらい生きてますけど、子供の頃はこんなに暑くなかったですよ。朝の涼しいうちに朝顔に水をやり、算数ドリルを片付けて、午前中は学校のプール開放に行き、帰って来てそうめんを食べ、午後は和室で扇風機を掛けながらうたた寝をするような・・・そんな夏休みであったような気がするのだが、今は日がなエアコンは点けっぱなし。早朝のわずかな時間だけ、窓を開けて部屋の空気の入れ換えがてらにエアコンを止めてはみるのだけど、もう朝の8時ごろには部屋の温度が30℃を超えてしまいたまらず再びエアコンを点けてしまう。そして令和の子供たちはあまりの暑さに部屋から出ることも出来ず、手持ち無沙汰を慰めるのはYoutubeやスマホのゲーム。外に出るには危険過ぎて、何か夏らしい思い出を作ってあげる事も出来ない。ひたすらに「夏が苦しい時代」の子供たちは、夏の夏らしさみたいなものは年寄りの昔語りと諦めて、ひたすら快適な空調環境で黙ってインドアに過ごすもの、と割り切っているのだろうか。

それでも首都圏に比べれば、こちらの方にはまだ「昔らしい」夏の景色が残っているのではと思う。
稲田を渡る風に乗って現れたキャニオンエキスプレス。
富山も、暑いは暑いが。

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立山源流、清冽に。

2024年08月16日 23時00分00秒 | 富山地方鉄道

(猛暑に一服の涼@本宮砂防堰堤)

弥陀ヶ原の南側にある立山カルデラは、日本でも有数の活動量の多いカルデラで、現在でも崩壊を繰り返しては常願寺川の下流へ大量の土砂を押し流しています。ひとたび暴れれば、富山平野の豊かな耕土を覆いつくすほどの大量の土砂や岩石を流し込んで来た立山カルデラ。現在は、立山砂防軌道による懸命な治山工事と、幾重にも建設された砂防ダムによって、カルデラの崩落防止と常願寺川の治水がおこなわれています。この辺りの常願寺川は、山間に大きな大きな氾濫原を作って流れて行くのでありますが、急流・・・と見せかけて、比較的河川勾配は緩やか。その要因が、カルデラから大量に流れ込んだ土砂を受け止めるこの本宮砂防堰堤にあります。高さ22m、幅107m、貯留する土砂は500万㎥。500万㎥って言われてもどのくらいの量だかなかなかピンと来ないのだが、東京ドーム1個分の容積が125万㎥くらいみたいなんで、この砂防堰堤の向こうに東京ドーム4杯分の土砂を溜め込んで氾濫原を作り、万が一があった時に下流へ向かって流れる土砂の速度を緩やかにしている訳だ。砂防ダムなので自然に作られた滝とは違うが、堰堤を超えてビロードのようにきれいに糸を引いて二段に落ちて行く水の風景は優美。猛暑の中で、一服の涼である。

富山シリーズの冒頭でもご紹介したが、そんなこんなでこの日は涼を求めて、本宮砂防堰堤の下流での川遊び。頭の上から降り注ぐ焼けつくような日差しは容赦なかったが、それでも足元だけはせめてもの涼しさがあった。足元に流れる立山源流の冷たさを味わいながら、常願寺川の谷底から仰ぎ見る千垣の鉄橋。谷を彩る木々の緑よ、岩を流れる水の青さよ、そして沸き立つ雲の白さよ。雷鳥が天翔ける立山路、盛夏を満喫のひとときである。

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岩峅寺、打ち水の傍らに。

2024年08月14日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(旅の始まり@岩峅寺駅)

上滝線沿線の撮影を済ませ、岩峅寺の駅で一日フリーきっぷを発行してもらう。今日は一日だけの滞在で、正直一日フリーきっぷの元を取れるほど乗れるかどうかは怪しいのだけど、正直言って、この手のフリーきっぷは使う使わないに関わらずその路線を撮影するための許可証みたいなもんじゃないかと思っている。小規模な地方私鉄ならどのみち大した額じゃないし、どこも苦境に陥っている地方私鉄をささやかな応援するものとして、「あいつらは撮るだけ撮って何にもカネを落とさない」って後ろ指差されるのも嫌なのでねえ。自分の中のちょっとした矜持みたいなものですし、これが岩峅寺駅の売上、ひいては地鉄の売り上げに繋がると思えば、ね。嘱託のじいちゃんが窓口手売りなので発券に時間はかかりますが。という訳で、買って撮りましょフリーきっぷ。撮るのに疲れたらもちろん乗ってもよいし。

夏の岩峅寺の駅。季節ごとにその雰囲気に魅了される、地鉄の中でも自分の中では一、二を争う好みの駅です。富山に行くたびに訪れているから、写真集でも作れるんじゃないかというくらい、もう何十回、何百回とシャッターを切っていると思う。カメラを握りながらふと気づくと、ホームの上には赤とんぼが飛んでいて、猛暑ながらも季節だけは確実に秋に近づいているようだ。暑さに耐えかねたおじいちゃん駅員が撒いた打ち水の水たまりにトンボが羽根を休めていると、構内踏切が鳴って、「TY5」こと特急たてやま5号が姿を現しました。

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