青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

紫煙の空へ。

2023年05月05日 10時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(夕暮れ、散歩の時間@平津駅)

東藤原からの帰り道、まだ一本くらいは途中下車してもいいのかな、という時間があったので、行きの車窓から駅前の桜が良く咲いていたのが見えた平津駅に降りてみました。平津と書いて「へいづ」と読み、始発の近鉄富田の駅からは二つ目。四日市市の北側の住宅街にある駅ですが、三岐線で沿線に住宅が広がるのはこの先の山城(やまじょう)の辺りまでですかね。結構年季の入った瓦葺平屋建ての駅で、小さいながらも間口が長くドシッとした風格があります。そして駅前の大桜が見事。犬の散歩中のお母さんも、思わず足を止めて桜を見上げる。

富田からの電車が到着して、足早に夕暮れの街を急ぐ通勤客たち。平津の駅を利用している人達から見れば、いつもの春の風景として気にも留めないかもしれないけど、私はこう言う至って普通の地方私鉄の駅の何気ない瞬間みたいなのが凄く好きなんだな。何も特別な列車や貴重な車両だけが鉄道写真って訳じゃないので。まだみんなマスク姿だけど、来年はマスクを外して桜が見れるといいですね。

三岐鉄道の駅は、貨物列車の対応のためにどこも有効長が長く、未だ無人化されずに駅員が勤務している駅が多い。駅には自動券売機も用意されておらず、未だに窓口で硬券の手売りという有人対応が続いています。富田から先の近鉄線への連絡きっぷも硬券で売ってるんですが、近鉄の自改とかに突っ込んじゃったりしないのだろうか・・・といらぬ心配をしてみたり。そう言えば、同株主の秩父鉄道も長年同じような対応をしていましたが、秩父は近年ICカードリーダーの導入で一気に窓口の無人化を進めたんですよね。そうすると、三岐はどうなるんでしょうねえ・・・全線やるにしても、費用対効果的にどうなんだろう。秩父ほどには乗降人員のない路線です。

宵闇迫る平津の駅。古式ゆかしい駅舎に、構内踏切が繋ぐ通路と、おそらく以前は警手が詰めていたであろう小さな踏切小屋。思い付きで途中下車して、ほんの30分程度の滞在でしたが、地方私鉄的なものは十分に吸収出来た感じはするな。そろそろ次の電車が来る頃とホームへ足を向けると、藤原岳の向こうの空が茜から紫に染まっていました。これぞまさしく「パープル・ヘイズ」というヤツか。ジミ・ヘンドリックスの世界です。

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水魚の交わり、重連で。

2023年05月03日 10時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(Uber Eatsがやって来た@いなべ市・宇賀川桜並木)

麗らかな春の日を宇賀川の桜並木で過ごしつつ、昼飯を持って来るのを忘れてしまい、コンビニ一軒ない三岐沿線で順調に飢える。楽しい事をしている時は、テンションが上がっているので腹は減らないものだけど、さすがに朝から小田原の駅で買ったチクワとレモンサワーしか口にしていないとなると何かしらを腹に入れたくなる。とはいえ、この場所から電車に乗ってどこか食事ができる場所を探すのも面倒だわなあ・・・という事で、「いなべ市でUber Eatsが頼めるなら、テリヤキマックのセット持って来て欲しい」なんて青い鳥に投げ込んだら、旧知の友人がマックを持ってホントにやって来たのは驚いた(笑)。持つべきものは・・・とは言え、実際にリアルで顔を合わせたの何年振りなのだろう。

午前中に訪れた朝明川の桜堤防、午後になって出て来た風にハラハラと花弁が舞う。本当にしばらくぶりだったので、友人のクルマで近況報告を絡めて四方山話をしながら三岐線沿線を巡る。初めて会った頃は学生だったから、季節と年月だけが確実に過ぎていて、そして残酷だけれどもお互い歳を取ったなあ、なんて。

午後の日差し傾く三岐宇賀川。少し赤味を帯びた色が桜に映えて美しい。お互いにカメラを構えながらやって来たのはまた赤電。この日はやたらと赤電にエンカウントする率が高かった。列車を待つ間、一人でぼんやりしているのもいいけれども、気の置けない友人とああでもないこうでもないと話しながら待つのも楽しい。割と趣味は一人でやる事が多いタイプなんで(基本ソロ活なんですよね)、こんなシチュエーションも久し振りだったなあ。しかし、しばらく会わなくたっても、話せばあの頃と変わらない感じであって、そこが何とも奇妙な感覚だった。そんなもんなんかもしれないけど。

セメントキルンの煙立ち上る、東藤原の夕景。入れ替えに勤しむED451と454のコンビ。ひとしきり入れ替えを眺めた後、友人と別れて乗り込む上りの電車。これからもお互いに家庭も事情もある身の上、昔のように頻繁に・・・とはいかないのかもしれないけど、水魚の交わりを持った仲である事には変わりなく。また、たまには重連で遊ぼうぜ。ってな訳で、これからもよろしく。

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宇賀の流れは清らかに。

2023年05月01日 17時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(セメント貨物・桜花の中を@宇賀川橋梁)

満開の宇賀川橋梁、春の日差しを浴びて駆け抜ける三岐のセメント貨物。太平洋セメントの藤原工場で製造されたセメントを、四日市港のサイロまで運びます。同じ荷主の東の秩父鉄道は、3月中旬から1ヶ月程度設備点検のために熊谷工場の操業を止めてしまうので、満開の桜の季節には動かないのがレイルファンには泣き所だったり・・・ちなみに、秩父の熊谷工場の再稼働を待って、GW~6月くらいまで藤原工場が設備点検に入ります。当然ながら、その際は三岐のセメント貨物も動きません。グループ全体で生産調整をしているのでしょう。

正規のセメント便の合間に、東藤原に留置している貨車の交番検査のための回送なんかがあったりします。確か、三岐のセメント貨物に使われているタキ1900は川崎貨物かなんかで検査してるんじゃなかったかな。約1,800両が製造された日本のセメント輸送のスタンダードな貨車ですが、最終ロットが1981年って事なのでもう製造してからだいぶ長い年数が経っている骨董モノの貨車。残されたタマは少ないと思われるので、大事に大事に使っていただきたいものです。

花満開。昼を過ぎて光線が横に替わって来たので、並行する道路の橋の上から宇賀川の鉄橋を。ちょうど赤電が富田から戻って来ました。桜の花弁の中からひょっこりと顔をのぞかせる元西武701系。

宇賀川は、鈴鹿山脈の石榑峠に源を発する二級河川で、員弁川の支流に当たります。上流部は「宇賀渓」と言われて、古くから滝巡りや竜ヶ岳へのハイキング、キャンプなどのレジャーで親しまれていた三岐線沿線の観光地でした。そう言えば、少し前までJR富田駅にある使われなくなった三岐線のホームに「三岐鉄道で宇賀渓・藤原岳へ」という観光アピールの看板があって、宇賀渓ってのは、沿線ではそれなりの観光地であったのだなあ、なんて思ったものですが・・・ちなみに大安駅の次の三里駅は、1986年まで「宇賀渓口」という名前で、駅から三岐バスが宇賀渓のキャンプ場まで走っていたそうな。

宇賀渓へ向かう三岐バスの路線は、2010年代に廃止されて久しく。三岐線は元より沿線にさほど有名な観光地もなく、地域輸送の担い手・・・と言うほどには人口集積地を走らず、ただひたすらにセメント輸送を通じて産業鉄道としての使命を全うしてきた武骨な路線。今さらあえて観光需要を求める気がないのもらしいと言えばらしいよなあ・・・。沿線の一番の観光地って丹生川の「貨物鉄道博物館」くらいなもんでしょ?(笑)。

レトロリバイバルの西武401系が、満開の宇賀川橋梁で踊ります。

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三岐宇賀川、爛漫に咲き誇り。

2023年04月29日 07時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(おめでたい駅、花咲く駅@大安駅)

三岐鉄道・大安駅。大安と書いて「だいあん」。大安吉日っぽくてとてもおめでたい、縁起の良さそうな駅。駅に図書館と公民館みたいな施設が併設されていて、駅務を役場の職員さんみたいなおばちゃんが管理していた。駅前にはそれなりの広さのロータリーがあるものの、商店などの姿は皆無なのは保々の駅と変わらないですね。ってか、三岐鉄道を訪問する場合、電車で回ろうとするなら確実にどっかのコンビニでパンかおにぎりかくらいは仕入れておいた方がいい。どこの駅も駅チカで食事をするような場所がなく、コンビニもろくにないので、確実に飢える(笑)。

1面1線のホームに黄色い電車が止まって去って行った、大安の昼下がり。駅から北に向かって2~3分歩くと、田んぼの向こうにきれいな桜並木と公園が見えて来ました。周辺市町村と合併していなべ市となる前の旧大安町庁舎に沿って続くこの桜並木は、北勢に春を告げるいなべの桜の名所でもあります。この公園の真ん中を三岐鉄道の鉄橋が渡っていて、三岐随一の桜の名撮影地ともなっています。三岐と言えば春は宇賀川、幾多の名シーンを飾ったフォトポイントです。今年の桜をどこで撮ろうかと考えて、いくつか候補は思い当たったんですが、その中でも一番来たかったのがここなんですよね。抜けるような青空に満開の桜、文句なしの天気に恵まれて思わず「来てよかったなあ」なんて独り言ちたりして。

のんびりと鳥のさえずりを聞きながら川沿いの土手に腰掛けて桜を愛でる。赤電、セメント貨物、西武401系と、三岐のお馴染みの面々が春爛漫の宇賀川を渡って行く。地元の老人が思い出したように土手沿いの遊歩道を歩いてくるほかは、何もかもを忘れてひたすらにそよ吹く風と春の日差しに包まれながら過ごす、心のデトックスタイム。「常に春はこうありたいなあ」と思うような、いい時間の過ごし方をさせてもらいました。

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保々、ほぼ、西武。

2023年04月24日 17時00分00秒 | 三岐鉄道・北勢線

(ナッパ服、風に揺れて@三岐鉄道・保々車両区)

三岐鉄道の保々駅前。車両区とCTCセンターのある主幹駅でもあります。主幹駅、といえども駅前にコンビニ一つなくて、本当に駅の機能の他には何もない。そもそも三岐鉄道、敷設された目的が藤原岳からの石灰石・セメント輸送の産業鉄道なので、あまり沿線にある街とか集落に配慮せずに建設した感じが強い。駅前に小さな商店街みたいなものがあってもいいようなもんだけど、その雰囲気すらない調整区域内にあって、住宅がある場所が遠く離れている。静かな車両区の事務所の軒先に、作業員たちのナッパ服が揺れる。

庫内でメンテナンス中の101系。これも元・西武の401系。切妻でペッタンコの国電的風貌は素っ気ないけれど、私は三岐ではこの車両が好きです。風貌汚れたウエス、グリスの缶、竹ホウキ、雑然と詰まれた部品の数々。忙しなく働く作業員の方々。 西武時代のレモンイエローに忠実に復刻された西武701系、検査明けできれいな姿を撮りたかったのだけど、この位置に留置されてるって事は今日は出番なしですかねえ。701・401・新101と元西武の陣容で構成された三岐の保々車両区、自社発注車こそないものの地方私鉄の検修区として魅力があり過ぎて、眺めているだけで飽きないものです。

 

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