青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

大銀杏は、魂を宿す。

2023年02月26日 09時00分00秒 | 小湊鐡道

(霜行列車@高滝~上総久保間)

もうすぐ房総の里山風景の向こうに、朝日が昇ってくる時間。この明け方の日の出前が一番寒い。里見発の一番列車をどこで迎え撃とうかと思いつつ思案していたら時間切れになってしまった。何の色気もない踏切の畔でキハの到着を待つ。もうね、寒い中でいちいち外で待っているのも辛いので、踏切の鐘が鳴るギリギリまでクルマの中で温まっておりました(笑)。日の出間際の房総の片隅、何気ない踏切のひとコマ。まだ消えない水銀灯の下、いつもの懐かし色のキハがキラリと浮かび上がります。

春は新緑、夏は青々とした葉を茂らせ、そして秋には見事に黄葉して散って行く久保の大銀杏。冬は・・・冬はどうなのか。と思って見に行ってみたら、日の出前のほの明るい空に、細かい枝の先の先まで大きく枝を伸ばす大銀杏のその姿が、何だか人の体の中に張り巡らされた神経の巡りのようで印象深い。生き物や植物に限らず、建物だってクルマだって電車だって何でもそうだけど、長い間生き続けたものにはそれ相応の魂や意識が宿るもの。この久保の大銀杏も、既に人格を備えているかのような、威厳と風格があります。

「いってらっしゃい、今日もご安全に。」

霜降りる真冬の朝。単行キハを見送る大銀杏の声が聞こえたような、上総久保の朝でした。

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冬らしい色を探して。

2023年02月24日 17時00分00秒 | 小湊鐡道

(暁のホームにて@上総鶴舞駅)

「関東の駅100選」にも選ばれている上総鶴舞の駅。鶴舞の集落の端にあって、小ぢんまりとした木造駅舎が建っています。右にカーブしたホームから、田園地帯に向かってレールが伸びてゆく様は、数々の映像作品やCMのモチーフにもなっていて、小湊鐡道を象徴する風景の一つ。大寒の頃を過ぎてもまだまだ寒い房総の早朝、美しい青みを帯びた空の下、暁を待つホーム。そしてびっしりと霜が降りて、白く染まったレールがありました。

凍て付くホームでカメラを握りながら、鶴舞の駅を取り巻く風景を一枚一枚切り取っていると、その一枚一枚ごとに白々と夜が明けて来て、田園の向こうに続くレールが微かに光を帯び始めます。遠くに小さく見える四種踏切が、名撮影地でもある池町踏切。鶴舞の駅には、駅前の大きな農業倉庫と、今は使われていない島式ホームと側線があって、往時はこの地域の農産物の集散地だったのでは?と思われる施設の跡が雑木に覆われたまま残っています。

養老渓谷方面への一番列車が到着する頃合いにはすっかり夜は明けて、雪が降ったかのような房総の霜降る枯野が広がっていました。牛久方面からやって来たキハ200の2連は、私の目の前でアリバイ程度のドア開閉を行った後、軽く紫煙を棚引かせながら、靄混じりの池町のカーブの向こうに消えて行きます。

冬場の小湊は、里山も田園も色を無くす時期。それだけに、今まで撮りに来たことのない時期でした。それでも、澄み切った夜明けの空の色と、田園一面に降りた霜の白さと・・・冬らしい色というものも、時間を選べばあるものだなという事に気付きます。

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房総の足を守る。

2023年02月22日 17時00分00秒 | 小湊鐡道

(白煙を引いて@上総牛久駅)

始発列車が出発し、牛久の中線に佇むキハ211。キハ200シリーズでも後半に増備された車両で、プレスドアではない平板の鋼材のドアと、尾灯に反射板がないのが見た目の特徴。キハ200は15年以上に亘って少しずつ増備されて行った車両なので、車両ごとに細かい差異があるのがマニア的なポイントなのだけど、自分は例えばサッシの形だとかエンジンのなにがしが違うとかそこまでの細かい話は興味がなかったりする。ライトな鉄道ファンですからね(笑)。

始発列車が出て行った後、次に出発するのは里見行きの送り込み回送。この時間帯の里見~牛久間にどれくらいの流動需要があるのか・・・という感じもしますけども、早朝に平日2本・土日1本の里見発五井行きが設定されています。そもそも、以前は渓谷方面から五井行きの上りの始発がもっと早かったと思うんだよな。今は養老渓谷も7時台の遅い時間が始発になっちゃってるから、平日の2本目は渓谷始発が里見始発に短縮されたものなんじゃないかと思うのだが。

小湊の朝の牛久以遠は、どっちかと言えば通勤より沿線の小中学校の通学需要にニーズがあったんですよね。高滝の高滝小学校と大久保の白鳥小学校が平成25年に廃校になって、付近の小学校は里見にある加茂小学校に統合。小さいながらも沿線に通学需要が発生した結果、里見の駅に交換施設が復活した経緯があります。駅員氏がホームの信号装置を操作し、この日初めて牛久から先の閉塞が解除されました。あとひと月半もすれば菜の花が咲くとは思えない凍て付いた空気の中、カンテラの光跡を合図に里見へ向けて出発して行くキハ211。里見始発はAM6:13、どれだけの乗客が待っているのだろうか・・・

半島の過疎化が進む中、小湊鐡道が、今日も房総の足を守ります。

 

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房総小湊厳冬記。

2023年02月20日 17時00分00秒 | 小湊鐡道

(マイナス3℃の出区前@上総牛久駅)

最近は仕事が忙しく、土日をフルで戦う体力もないのであんまり遠出もしてないんだけど、さりとて何もしないのも面白くないので・・・という感じでちょこちょことカメラを持って外出はしております。先日は、朝活という事で早朝の小湊鐡道に行って来ました。前の日に晩酌して早く寝ちゃったもんだから、朝3時なんかに起きちゃったんだよね。早朝にパパっと遊んで家に帰るなら家族に後ろ指差される事もあるまいってんで、真夜中の横羽線からアクアライン。朝5時の上総牛久、マイナス3℃の出区準備。DMH17型エンジンのアイドリング音が鳴り響く。

上総牛久。房総半島の中央部に位置する街で、東西は木更津から茂原を結ぶ国道409号線、南北は市原から大多喜を通って勝浦を結ぶ国道297号線大多喜街道が交わる交通の要衝。小湊鐡道の運行上も重要な拠点で、2面3線のホームに各方面の始発列車が滞泊しているのも基幹駅ならでは。最近はJRから導入したキハ40が幅を利かせ始めている中、個人的には「いやいや小湊と言えばキハ200っしょ!」と思っている原理主義者なのでありますが、この日の朝の牛久は、そんな私には嬉しいオールキハ200の世界。

時折構内を吹き抜ける風の冷たい事。上総牛久は房総半島の内陸の街で、夏は暑く、冬は寒い。凍て付く空気の中で続く出区準備、車内の清掃とサボの付け替えを行う女性車窓さん。小湊には何人かの女性車掌さんがおりますが、仕事とはいえこの時間から働いているのだから、なかなか大変な仕事である。

定刻AM5:25。時機に合わせて車掌さんが扉合図を行い、僅かながらの客を乗せて出発する五井行きの始発列車。コロナ禍による乗客減で、稼ぎ頭の五井~牛久間でも減車・減便の目立つ小湊鐡道。市原市南部沿線の過疎化と相俟って、鉄道部門の収益はかなり厳しい状況と聞き及びます。それでも房総の、いや日本の里山風景のアイコンともなっている鉄道会社。その主役たる「小湊ツートン」とも言えるオレンジとベージュの塗り分けのキハ200、既に最終増備からも45年を経過し、すっかりとオールドディーゼルカーになりました。プレスドアと車内配管の出っ張り、ドア内側のステップなど、今はないギミックがてんこ盛りの得難い車両。明けの満月の優しい光が照らす中、ディーゼルの白煙を噴き上げて、牛久の駅を出て行きました。

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小湊は やっぱキハ200じゃ ないっすか。

2022年07月07日 21時00分00秒 | 小湊鐡道

(いつもの川間、房国の青空。@上総川間)

言葉はいらぬ、川間の青空。
窓を開けて走る、サボ差しのツートンカラーの気動車よ。
この光景を、いつまでも。

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