青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

冬の東北道に、彗星を見た。

2025年01月30日 17時00分00秒 | 弘南鉄道

(上野発の夜行・・・バス@上野駅前)

今回の津軽行き、行きは弘南バスの「パンダ号(青森港フェリーターミナル行き)」にしてみました。前回は横浜駅から弘前~五所川原行きの「ノクターン」にしたんですけど、3列夜行のノクターンに対してこの「パンダ号」はオールドタイプの4列シート。いわゆる普通の観光バスの設えなのですが、その分値段はお安くて、ノクターンの9,000円に対してパンダ号は5,500円。首都圏からストレートで弘前に向かう交通機関としては恐らく最安値ではないだろうか。まあ、値段の部分ももちろんあったんですけど、自分としては時間帯ですねえ。いくら新幹線が速い言っても、始発の新幹線で行ったかて新青森乗り換えで弘前10時半になっちゃうから。このバスは上野20:30発で弘前が定刻だと5:45で、朝6時前から現地で動けるのがでかいんだよなあ。折角行くんだから、目いっぱい楽しみたいじゃないですか。

パンダ号の上野駅のバス乗り場は、駅から少し離れた昭和通りの上。首都高速上野線の下のバス停を出ると、松坂屋前から湯島天神の前を通って本郷へ出て、飯田橋の入口から首都高池袋線へ。昨年からさいたま新都心バスターミナル経由に変わったらしく、追加で2、3人の乗客を追加で拾った後は岩槻ICから一路東北道へ。この日の乗客は4列シートの各ブースに1人ずつ・・・くらいの乗車率で、乗客それぞれの隣りに人がいないというちょうどいい塩梅。正直4列シートですし、冬だから着込むじゃないですか。それで隣にそれなりに体の大きな人が来たらかなり居住性は悪いと思う。寝れなくてもいい、とにかく安く行きたいというなら止めはしませんが、青森まで10時間以上かかりますしね。決して繁忙期に使うバスではないし、金曜の夜みたいなピーク時期に使うバスでもないことは申し添えておきたいですね(笑)。さいたま新都心を出るとその日のメンバーが確定(以降乗車なし)なので、慣れた人は勝手に席を動いて寝やすい位置を確保してた。その辺りは勝手知ったる・・・ということで、運転士氏も暗黙の了解なのだろう。

4列シート・トイレなしのバスのため、さいたま新都心を出た後は東北道に入って佐野・国見・紫波のSAで10分程度の休憩を取る。約10時間の旅路である。上野発20:30→さいたま新都心21:30→弘前BT5:45→青森駅前7:05→終点の青森港フェリーターミナルの到着は7:25。青森港フェリーターミナルからは8:10発の青函フェリーやその後の津軽海峡フェリーに連絡し、お昼過ぎから午後の早いうちには函館港に到着できるダイヤになっている。上野発の夜行列車がなくなったいま、上野を出て青森駅から私も一人連絡船に乗り、凍えそうなカモメ見つめて泣いてしまえるのは、この「パンダ号」だけになってしまった。新幹線が新函館北斗まで繋がっている現在、航路に接続して北海道を見据える公共交通機関というものも極めて珍しいものがありますよね。

さいたま新都心を出て、22時前には早々に車内を消灯してしまうパンダ号。さすがにそんな早くは寝られないのだが、さりとてすることもないので目を瞑るしかない。夜行バスというものは基本的にそう熟睡できるもんでもなく、そこは諦めていたんだが、下手にセパレートな3列シートよりも2席分を自由に使えることで案外居住性は悪くなかった(それだけに隣に人がいたら地獄だろう)。うつらうつらしながらたまに目が覚めて窓の外を見やると、盛岡を過ぎて滝沢あたりから真夜中の東北道は吹雪。除雪隊に前を押さえ込まれ、八幡平まで小一時間ノロノロ走行に終始したパンダ号。これは弘前到着はどんくらいになるんかなあ、と案じていると、除雪車が安代JCTで道を譲って前が開いたとたん、遅れを取り戻そうと物凄い勢いで回復運転を始めた。正直普通のドライバーでは吹雪の圧雪路をこのスピードでは走れんぞ、というような高速限界走行で、制限速度標識に出てる数字が見えないのか津軽ルールなのか、鹿角の山ん中をお尻がフワッフワ浮くくらい飛ばしていくのだ。バスマニアの中では、冬の東北道で一番速いのは弘南バスという噂もあったりなかったりするのだが、ゆっくり走る乗用車やトラックを立ち木をなぎ倒すように交わしていく。大型バスの重量による安定性とエンジンのトルクはあるのだろうが、このハンドル捌きはさすが冬の東北道のスピードキングである。

弘南爆走族こと弘南バス。雪の東北道の歴戦のツワモノは、フロントグリルにこってりと雪を付け、大きく遅れを縮める回復運転を見せ、弘前バスターミナルに定時15分遅れで到着したのでありました。

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童達 行く末いずこ 鰐の道。

2025年01月28日 23時00分00秒 | 弘南鉄道

(いつもの朝を、いつまでも@弘南鉄道大鰐線・鯖石駅)

「津軽」という土地の名前のイメージを、一般的にはどう想起するだろうか。それは、春の弘前の桜であったり、夏のねぶた祭だったり、秋を彩る実りのリンゴだったりもするのだろうけど、何と言っても冬の厳しさを想起する人が多いのではないかと思われる。去年の夏、津軽を旅して改めて思ったこと。勿論、夏は夏でその季節なりの良さがあったのだが、「津軽はやはり冬に行きたいよな」ということだった。去年の夏は暑さを求めて九州まで馳せ参じたが、冬は冬らしく凍てつく寒さを求めたい。そんな当たり前のことが、だんだんと季節感のなくなって行く四季の国ニッポンの正しい楽しみ方だと信じてやまない。折しも去年の暮れからJPCZ(日本海収束寒気団)の度重なる発生で津軽地方は災害級の大雪に見舞われていて、ニュースで伝えられるその自然の猛威にただ驚くばかり。当たり前だが、雪も降り過ぎては日々の生活に差し障るということだ。地球温暖化によって基本的には暖冬なのだろうが、その分海からの水蒸気の蒸発量が多く、ひとたび寒気が入ってくれば大雪になってしまうのだろう。正月過ぎから冬の津軽行きの算段を立てながら、降らなければつまらないし、降り過ぎたら身動きが取れないし・・・などと天気予報を見ながらにらめっこ。旅の人間は勝手なものだとひとりごちて、弘前行きの高速バスに乗り込んだ。

弘前の街から、平川・黒石、そして大鰐の街を結ぶ弘南鉄道が好きだ。目の前の景色をすべて剝ぎ取ってしまう地吹雪の中を走るストーブ列車のような、そういう「演歌的」かつ「太宰の物語」のような抒情的な世界観は津軽鉄道に譲るけれども、弘南鉄道は文教都市・弘前の街を支えるべく、弘南線も大鰐線も学生を中心とした地元密着輸送で長年頑張って来た。来た、という言葉を使ったのは、当然ながら昨年秋に発表された「2027年度を限りとした大鰐線の運転休止(廃止)」という非情な事実にほかならない。2010年ごろから苦境が伝えられていた大鰐線の経営は、とうとう3年間の経過措置を取った上での運転休止という形で結論が出た。すぐに廃止としなかったことは、同線の主力である通学輸送に影響が出ないように、十分に学生たちに時間的な猶予を与えたいという立派な判断であったと思われる。

月曜日の朝、駅へ続く雪道。構内踏切が鳴って、慌ててみんながホームへ駆け上がる。
卒業まで、電車で通える子がどのくらいいるのだろう。
鯖石の駅は、元気な子供たちの声で、いつものように始まった。

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さよならだけが人生だ。

2025年01月25日 13時00分00秒 | 弘南鉄道

 (雪を蹴立てて・・・@鯖石~石川プール前間)

大鰐線の東急7000系。大鰐線は、弘南線と違ってちゃんと原形顔の東急がやってくるのがいいところ。ちなみにこの写真を撮影したのは2019年(平成31年)の冬のことなので、もう6年も前の話になる。私が初めて弘南電車にお邪魔したこの冬はまだコロナの前だったから、厳しいと言っても今ほどではなかったんですよねえ。この時間の流れの中で、やっぱりコロナによって失われた3年間というのは地方の鉄道事業者には大きな痛手でしたよね。2019年から現在までに変わったところといえば、弘南線では朝の学生向けの4連が廃止、コロナ禍と従業員不足からの日中30分→1時間ヘッドの大幅拡大があって、大鰐線では初電の繰り下げ、朝夕の本数の削減、そして2024年秋の正式廃止表明ですからね。変わるにしても変わり過ぎだろうと。今調べたら弘南線が2019年当時の29往復→23往復(▲6往復12本)、大鰐線が20→17往復(▲3往復6本)だから弘南線がだいぶ減ってますよね。弘南鉄道、かつては津軽地域の交通のベースというか、域内輸送の要みたいなとこありましたけど、人口減少には勝てん。まあね。もう何を言っても詮無きことですから。弘前の街、という意味でも、バスターミナルに併設されてたイトーヨーカドーが退店して(ロピアになったらしい)、土手町の中三弘前店は倒産してますからね。そして津軽と言えばもう一つの楽しみである温泉めぐりなんかでも、お気に入りの温泉がいくつもいくつも休廃業していて・・・新しいものに入れ替わればまだそれは新陳代謝なんだけど、湯ノ沢三湯も新屋もさんないも失われてそのままですからね(たらポッキは頑張ってくれよホント)。百沢温泉みたいに新しい人が入って再興に向けて頑張る温泉もあるけど、そういうのはなかなかないからさ。せめて虹のマートとか鯖石のドライブインとか青柳会館とか、そういうのくらいは生き残っておくれよと思うしかない。

さよならだけが人生だが、そうでもないってことを探しに、行って参ります。

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津軽へ。

2025年01月22日 22時00分00秒 | 弘南鉄道

(降る雪に眠る@津軽大沢駅)

弘南鉄道・大鰐線の廃線。昨年の秋に発表されてからというもの、日増しに募る津軽への思い。そして、年末からの津軽は大変な大雪で、何度も何度もレールを閉ざされながらも、何度も何度も除雪をおこなっては道を切り開き、津軽の人々の足たらしめんとする奮闘の姿がなおさらその気持ちを駆り立てている。大鰐線のキ105こそ、相棒のED221の不調によりこの冬はご隠居を決め込んでいるが、弘南線のキ104&ED333のコンビはこの年末年始の豪雪を切り裂きながら連日獅子奮迅の活躍であるという。雪というものの難しさ、降り過ぎれば電車は走らないし、ダイヤがない中で辛抱強くラッセルを待つゲリラ戦を強いられる。けれども、力強く雪を跳ね飛ばすその姿を一目見た日から魅了されてしまった津軽の黒き化身。出るか出ないかは天気次第、予報だとちょっと暖気が入ってなかなか雪が降りそうもない週末のようだけど、それならそれでじっくりと冬の津軽と向き合ってくるのも悪くはない話だ。レールの側だけが津軽でもない。そんな思いで、会社帰りにMVを叩いてきた。

去年の夏に行ってからだからそんなに間がないけど、そんなんもたもたしてたら、大鰐線の最後なんてきっとあっという間に来てしまうから。
雪と暮らしとお岩木山と、冬なら津軽、冬こそ津軽である。

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黄金差すホームにて。

2025年01月18日 00時00分00秒 | 野岩鉄道・会津鉄道

(午後の陽射し、雪凍る築堤にて@男鹿高原~会津高原尾瀬口)

午前中に鬼怒川温泉へ下った後は、昼の運用を東武から直通のリバティに任せ、午後遅くなってから会津高原へ戻って来る6050系。昔は日中も浅草からの東武快速が1時間に1本程度は直通してきてくれたものだが、東武側から普通列車の野岩直通が切られた2年前の大減便は大きくこの付近の鉄道での行動範囲を狭めてしまった。東武側の6050系の後継である20400系は未だに野岩線内の運用実績がないように思うのだが、入線試験もしなかったというあたりに何となく察せられるところがある。大減便ダイヤは、もちろんコロナで需要が減退してしまった・・・ということもそうなんだろうけど、東武から乗り入れて貰って走らせることによって発生する東武からの車両賃料を圧縮したいという思惑もあったのではないかと勘繰ってしまう。東武からの直通を整理したことで、運用車両数が充足出来なくなった野岩鉄道が、この2本の6050系の末裔だけで済ませることが出来るくらいの運用数にダイヤを整理してしまったというのは考えが穿ち過ぎか。

雪が凍ったホーム、足元を気にしながら鬼怒川温泉方面へ向かうお客さん。駅までは誰かしらが車に乗せて送って来てもらっているようだ。この滝の原の集落はそう大きな集落ではないが、中山峠を越えて立岩や檜枝岐の村からは一番近い鉄道の駅でもある。本州の中でもこの辺りは相当に海から遠い地域だと思うが、そんな山里の暮らしも鉄道が通ることによって大きく変わったのだろう。冬の間は、浅草から「スノーパル23:45」なんていう臨時電車が会津高原のたかつえスキー場向けに走ったりもしてますよね。冬の週末のみの臨時便ですが、23:45に浅草を出て、車中泊をしてから朝に会津高原尾瀬口の駅からバスでスキー場まで連れってってくれる。このパターンが夏だと沼山峠からの尾瀬トレッキング向けの「尾瀬夜行」になるんですよね。いずれにしても、沿線住民による大幅な利用増が期待できる状況にはない路線。観光振興に一役買うしかないのが宿命でもある。

山里の冬の陽射しは早くも山の端に掛かり始め、茜色を帯びる会津高原尾瀬口のホーム。こういう冬の低い低い光線を反逆光くらいで仕上げるのが好きだ。赤味がかった光が雪に跳ね返って、黄金を帯びて来る。「ここから先のホームには電車が止まりません」なんて掠れて褪せた文字が浮かぶ看板の向こうに、この日は電車が止まっていた。この年末年始はスカイツリートレインを含めて4連の列車が2本も野岩線内に入線していたのだから、それくらい異例のことだ。集客効果や実際の利用動向はどうだったのだろうか。私たちのような一介の鉄道ファンの満足だけでなく、実需のある形での結果が表れていることを期待したいものだが。

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