(満開間近@山北駅)
今週ではまだ早いかな、来週だと散ってしまうかな。そんなヤキモキ加減になりがちな桜の季節。花びらは足早に、ひと雨とひと風で一枚一枚が過去になってしまうので、気を揉む前に出掛けてみる。鉄道黎明期には東海道本線の箱根越えの基地として、500人以上の鉄道従事者を擁した山北の街。その中心たる山北の駅の、往時を偲ぶ広い構内。駅から始まる25‰の連続勾配の坂道に、今年も枝垂れるように桜が咲きます。
丹那トンネルの開通によって、御殿場回りの急勾配のバイパス線に身を窶す存在となってしまった御殿場線。神奈川県内唯一のJR東海の線区ですから、御多分に漏れず車両は静シスの313系。500両以上が製造されているため、JR東海はどこ行ってもこの顔と行き当たるという車両で、趣味的界隈からは興味を削ぐような意見もあったりします。ただ、走りと居住性はハイスペックなことこの上ない上等な車両。見た目もスマートだし、私は結構好きですね。
山北の駅本屋。鉄道の街も遠い昔の話、神奈川県にあっても首都圏とは言いにくいこの辺り、やはり山村の過疎化は著しいようで、20年前と比べると乗客は半減。今日はさくら祭りという事で賑わいを見せてはいるものの、JR東海は乗客減によって駅業務から撤退。現在は地元NPOが切符の販売を行う簡易委託駅になっています。駅前からは西丹沢方面に行く富士急バスの乗り場があるのですけど、駅前通りは日曜日とは言えあまりにも寂しいシャッター通り。前に来た時はもうちょっとやってる店あったような気がするんだけどなあ…小憎らしいアールの付いたレトロな美容室が目を引きます。
駅から続く桜並木をそぞろ歩く。掘割の幅の広さが、太平洋戦争当時まではこの路線が複線であったことの証。もっと谷峨の方まで歩いていけば、複線時代の廃トンネルなんかが今でもそのまま残っていたりするし、鮎沢(酒匂)川の鉄橋なんか橋脚も複線当時のそのまんま。山北界隈が最も賑わったのは、昭和9年に丹那トンネルが開通して東海道本線が熱海回りになるまでの間だそうですが、「特急燕」等の一部の例外を除き、後補機の連結のために全ての列車は山北停車となっていたようです。
線路に架かる人道橋は花見客でいっぱい。山北の桜はそこそこ老木なので、テングスにやられちゃって樹勢の弱ってる木も多かったのですけど、南側の桜の花の開きは場所によっては満開に近付いていました。いつの間にか東京発の山北行きがなくなっちゃってたり、特急あさぎりが御殿場までに短縮されて減便されてたり、何かと活気のある話は聞こえてこない御殿場線界隈。神奈川県内でここまで見事に桜と鉄道のコラボレーションが撮影できるところもそうはないので、大事にしたい鉄道風景だなあと思いますね。