(鰻の寝床@欅平駅)
縦に長い欅平駅の全景。手前が出発ホームで、奥が降車ホームですが、最大が13両編成となかなか長い黒部峡谷鉄道の編成ですから、乗る場所によっては出口まで結構歩かされます。有効長の長いホームの上にかかる屋根は鉄パイプとプラスチックの波板の簡素な作りですが、たぶん冬季休業中は取り外しておけるようにあえて仮設っぽくしているんだと思われます。中途半端に常設の屋根を作っても、雪でぶっ潰されるのがオチ。
鉄筋コンクリート製の頑丈そうな欅平駅。1Fには乗り場とお土産屋、2Fには食堂と展望台があります。黒部峡谷探索のベースキャンプ的なこの駅から、登山客はさらに黒部の奥を目指して峡谷沿いの道を歩いて行きます。この欅平駅から続く「日電歩道(水平歩道)」という登山道は、黒部峡谷の断崖の中腹に付けられた僅かな幅の道で、足を踏み外せばあっという間に数百メートルの滑落を余儀なくされる超上級者向けの恐ろしい登山道。もとより黒部の奥地を開発するために、当時の日本電力株式会社(関電の旧会社)が切り開いた道ですが、まとめサイトとか見るだけで股間が縮み上がるレベル(笑)。
とてもじゃないがそんな黒部の奥地に向かって分け入る勇気もないので、帰りの電車の時間まで欅平駅の周辺を散策する程度に留めておきます(笑)。駅から階段を降りて、黒部川の河原に出てみました。河原から見上げるのは欅平のシンボル奥鐘(おくかね)橋の赤いアーチ。ネーミングが億のカネみたいで何だか縁起が良さそうだ。
河原には、上流の祖母谷(ばばだに)から引かれた温泉の足湯があってちょうどいいヒマつぶしになります。石鹸水のような白濁した泉質はかなり濃厚な焦げた硫黄臭を放っており、いかにもキキメのありそうな雰囲気。少し足をつけるだけでも結構ポカポカと温まってあっという間に額から汗が滲んでくる。温まったら隣には黒部の清流が待ち構えており、これはこれで真夏にも関わらず身を切るように冷たいのであった。
奥鐘橋からの風景。欅平駅の下にあるのが昭和14年に作られた黒部川第三発電所で、前述のとおりここに仙人谷ダムで取水した水を導水路で引き込んで発電している。奥には戦後に増設された新黒部川第三発電所も見えますね。欅平駅から奥鐘橋を渡ると山の岩壁を穿った「人喰岩」と呼ばれる桟道を通って名剣温泉・祖母谷温泉方面へ道が続いています。こちらは日電歩道ほど危険ではなく、普通に歩いて行ける道です。
小一時間の欅平散策を終え、駅の土産物屋を冷やかしたりしつつ帰りのトロッコ電車。窓付きの特別車のみの編成です。この特別車は、ただ窓が付いているというだけで特別車料金が一人500円かかるという詐欺的な車両。一般客車で味わえる開放感もなく、わざわざトロッコに乗る意味を否定するような車両なので、正直言えば有用なのは雨の日かそもそもトロッコ電車に興味のない人間くらいなもんだろうな。
なのになんで特別車のみの列車を選んでしまったのかと言うと…ちょうどいい時間の列車がなかったからとしか言いようがない(笑)。編成が短いのと、山を降りる列車のせいかカマが重連じゃなかった。まあ特別車編成の人気がないので、乗客の重量がさほどでもないのもあるかもしれないな。さすがに復路の1時間20分は子供も飽きたのか旅の疲れか眠ってしまったのだが、背もたれのない一般客車ではなかなか寝づらかったろうからそれだけは良かったかなw